《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》トルフィンの部 【引きこもりの葛藤】

シュロン學園。

國王シュンが開校し、トルフィンとリュアが在籍する學園。シュロン國においては、多くの人間とモンスターの集まる場所となる。

その學園が、まさに現在、危機狀態に陥っていた。

せっかく丹念を込めて作られた施設の數々が、見るも無慘に倒壊している。観葉植たちは無慈悲にへし折られているか、もしくは燃やし盡くされている。ところどころに黒煙がのぼっており、そのあまりの悪臭に、トルフィンは思わず鼻を腕で塞いだ。

「そんな……こんなの……あんまりだよ……」

リュアが若干うなだれたように片膝をつく。この景は六歳児にとってあまりに殘酷だ。

トルフィンとリュア、そしてレイア先生が放課後に鍛えていたグラウンド。いまはその場所に、無慮百ものが転がっている。天使たちの姿は見當たらないが、どうやら最近までこの近辺にいたのは確かなようだ。

「お父さんはなにしてるの……? 騎士のみんなは……?」

トルフィンとセレスティアは目を見合わせた。

たしかな証拠があるわけではない。だがゴルムを初めとする騎士団はすでに壊滅させられた可能が高い。そうでなければ、シュンが《スキルを授けた三人》のうち、ゴルムがいない理由が説明できない。

「…………」

どう聲をかけたものか迷っていると、ふいに、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

「あぁぁぁぁぁぁぁあ……!」

「みんな逃げて! ここは私が……!」

トルフィンははっとして校舎に目を向けた。

周囲の雑音に阻まれてよく聞き取れないが、かすかに戦闘音が聞こえる。

トルフィンはそっとリュアの肩に手を乗せた。

「いこうぜ。みんなを助けられるのは俺たちだけだ」

「……うん」

こくりと頷き、リュアはひょっこりと立ち上がった。強い娘だ。こんな危機的狀況にあって、両の瞳には決意が宿っている。

「私、許せない。こんなひどいことをしてる神様なんて、絶対許さないんだから」

「ああ、そうだな」

同意の頷きを返しながら、トルフィンの心中には逡巡しゅんじゅんが生まれていた。

父のことをいつ告げようか。それとも、現段階では言わないほうが得策なのか。これまでずっと人を拒んできたトルフィンにはどうすればいいのかわからなかった。

トルフィンたちは全力で走った。

この三人のうち、一番ステータスが優れているのはトルフィンだ。

よって、彼が他の二人と距離をつけてしまう形にはなったが、この際構っていられない。たった一秒でも無駄にできない。

「レイア先生どうしよう、が、かない……」

「……た、助けてよ、先生!」

「ごめんねみんな……。おかしいの……なぜか私も、全然魔法を使えない……」

そうしたトルフィンの気持ちが通じたのかもしれない。

教室。

天使に追いつめられている先生と生徒たちの間に、トルフィンは全速力でり込んだ。

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