《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》シュンの部 【アリアンヌのこと】

「ちゃん……お兄ちゃん!」

懸命なロニンの呼びかけに、シュンはぼんやりと意識を取り戻した。腹部に鈍い痛みがある。顔をしかめながら、シュンは上を起こした。

「う……」

見渡せば、一面、見たことのない世界が広がっていた。建築、そして空気までが紺碧に彩られた世界。ロニンだけが周囲のに染まっていない。

「どこだ……ここは?」

起き上がりながらロニンに問いかけるが、しかし小柄な魔王は首をぶんぶん振るばかりである。

「わかんない……。私もさっき起きたばかりで」

「そうか……」

シュンたちは現在、広場のような場所にいた。紺碧の床があたりに広がっており、それ以外にはなにもない。

唯一あるものといえば、巨大な宮殿ひとつのみ。さまざまな紋様が描かれており、紺碧一に染まっているにも関わらず、荘厳たる雰囲気を醸し出している。

――神殿。

宮殿を眺めていると、ふとそんな言葉がシュンの脳裏をよぎった。

そう、まさに神殿。

長い間、神が暮らしていてもおかしくないような――そんな威厳がじられる。

「なんで……俺たちはここに……」

シュンはぽつりと呟く。

熾天使してんしミュウの魔手から逃れるべく、なかば逃げる形で、この場所に転送させられた。アリアンヌは修業しろと言っていたが……いったいなにをどうすればいいのか。

「ねえ、お兄ちゃん……」

ロニンが昔の呼び方そのままに、シュンの服の裾を引っ張ってくる。

「トルフィンたち、大丈夫かな……。あのミュウって子、たぶんトルフィンたちのステータスを《1》にするって言ってたような……」

「…………」

たしかに気がかりではあった。アリアンヌに《ステータス作無効スキル》を授けてもらったとはいえ、相手は熾天使してんしだ。強制解除させられたとも限らない。シュンも心殘りではあった。

だが。

「信じようぜ。あいつが簡単にくたばるわけねえ。それに……勇者アルスも側にいるはずだからな」

「そう……なんだけど……」

いまだ納得しかねているロニンの頭に、シュンはぽんと手を乗せた。

「う……」

「いまは気にしたって仕方ねえって。いまは俺たちが強くなることが先決だ」

「う、うん。そうだね」 

涙が出かけていた両目をこすりながら、ロニンはやや明るい聲で返事をした。

すると。

「お待ちしておりました」

ふいにの聲が響き、シュンは背中を震わせた。慌てて周囲を見渡すが、誰もいない。いったいどこから……

「ここです。あなたの橫です」

言われて視線を向けると、そこに拳大ほどの《》が浮かんでいた。こちらも周囲のに染まっておらず、白銀のしい輝きを放っている。

だが、シュンが気になったのはそこではなかった。

「その聲……アリアンヌか?」

「ええ。ここに人が現れたら案するよう、《本》の私からプログラムされております」

「プ、プログラム……」

訳がわからない。

そういえば、アリアンヌのこともついに聞き出せなかった。元神族であることしか知らない。

「ついてきてください。お見せしたいものがございます」

そう言っていずこかへと去っていく球に、

「お、おい、待てよ!」

シュンたちは慌ててついていった。

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