《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》シュン&アリアンヌの部 【魔神の

――人は変われる。

――変わることができる。

その言葉を、シュンはにしかとけ止めた。

年がら年中ねんじゅう引きこもり、親には泣かれ、知人には軽蔑されてきた。

酷い過去だった。

けれど、そうして引きこもっいた時期があるからこそ、シュンは最強の力を手にれ、世界の命運を託されるに至った。

そう思えば、引きこもっていたことも捨てたものではない。結果、親には孝行できないまま他界されてしまったが、それでも出來ることはあるはずだ。

シュンは數秒間だけ目を閉じ、いまは亡き両親に思いを馳せてから、ゆっくりと目を開いた。

「アリアンヌは《ここで修業しろ》と言っていた。教えてくれ。俺たちはここでどうしたらいい」

「お答えします。……私がいまからあなたたちに…………。…………」

ふいに球の聲がざらつき始めた。さっきまで機械的なほどクリアな聲を発していたのに、急にノイズが混ざりだしている。 

「なんだ? どうした?」

「どうや……ら。時間が。ないようです。アリアンヌが……死にかけて……います」

「な、なんだと?」

シュンは思わず大きな聲を発した。

が重い。

走ることさえままならない。

視界の縁はすでに赤く縁取られている。殘りHPはもう一割を切った。

――あと一、二撃でも貰えば……私は死ぬ。

魔神アリアンヌは顎あごに滴したたるを拭いながら、真正面に構える敵を見據えた。

――まさか、これほどの強さとは……

「あーあ。つまんないの」

斧を指先でくるくる回しながら、熾天使ミュウは言った。

「まったく相手になんないじゃない。ちょっとはやってくれると思ったのに。……ま、仕方ないか。いまのあんたはステータス半減なんだっけ?」

「……そんなことまで知っていましたか」

「當ったり前。あたしは熾天使。わからないことなんて、ディストの歳くらいのもんだわ」

「…………」

そう。

數千年前――アリアンヌ率いる元天使たちが、天界を追放されたとき。

神を裏切った代償として、天使の多くは醜い《悪魔》の姿に変えられてしまった。

もちろん、それはアリアンヌとて例外ではない。他の天使たちと同様、悪魔へと墮とされる……はずだった。

しかしそうならなかったのは、ディストに呪いをかけられる直前に、《分魂ぶんこんの法》を使用したことによる。

分魂ぶんこんの法。

その名の通り、自の魂をから離させる斷の。使用者はステータスをまるごと半分失う代わりに、まったく別のに転移することもできる。

うまく利用できれば、自のみを分離させ、もうひとりの自分を生することも可能だ。そしていま、そのにシュンたちを任せてある。

しかし。

そうして生み出した個は、本たるアリアンヌが消滅した途端、同時に消えてしまう。そうなってしまえば、シュンたちに最期の力を託すことができなくなる。 

負けるわけにはいかない。

せめてあと數分だけでも……

アリアンヌは限界まで力を振り絞り、堂々と熾天使ミュウに相対した。

「こんなところで死ぬわけにはいきません。最後の戦いはこれからです!」

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