《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》シュン&アリアンヌの部 【最強の力を】

――2:04――

「アリアンヌが死ぬだって……どうすりゃいいんだ!」

冷酷すぎる現実に、シュンは必死に喚いた。

できることなら、いますぐにでもアグネ地帯に帰りたい。そしてアリアンヌに加勢し、最強の力で熾天使ミュウを打ち落としたい。

だが、それは葉わぬ願だ。

いまのシュンたちでは、きっと束になっても熾天使や創造神には勝てない。このまま指をくわえて、みなが殺されるのを待つしかないのか……

「お答え……します。方法は……あ……ります。ひとつだ……け」

途切れ途切れになりながらも、球は話してくれた。

いわく。

この球とは、アリアンヌの《分魂ぶんこんの法》によって編み出された存在。

言うなれば、アリアンヌの分ともいえる存在であること。

そしてみさえすれば、《神の》を手にれたシュンとロニンに、同化することも可能であること。同化すれば、相乗的そうじょうてきに力が高まっていくこと。

しかしながら、球だけを同化させても、恐らく熾天使たちには適わない。

だからアリアンヌの本も、シュンたちに同化させる必要があることを、球は語った。

「同化……それって……どういう……」

最後まで話を聞き終えたロニンが、かすれた聲で呟く。それに対する球の答えは、あまりにも簡潔、そして殘酷なものだった。

「死にます」

シュンとロニンに、沈鬱な重圧がのしかかった。

――結局同じなのか。

シュンたちがこうして頑張っても、アリアンヌは死ぬしかないのか。

たしかに、彼はかつて言っていた。

貴方たちが私の正を理解したとき、私はすでにこの世を去っているでしょう――と。

そんな二人の心境を見かしたかのように、アリアンヌの分は答えた。

「重く……考えないでく……ださい。これは……遙か昔より計畫されていたこと……なのです。逆に言えば……これ以外に……創造神に勝てる方法はあり……ません」

「で、でも、私……」

「失禮。悩んでいる時間は……ないのです。アリアンヌの本が死んだら……、同化さえもできなくなります。お願いします。許して、くだ、さい」

から力が抜けていく。

のステータスが《同化》していくのが、覚でわかる。

どうやら、ギリギリのところで間に合ったらしい。どうにか私が死ぬ前に同化させることができた……

アリアンヌはひざまずいた姿勢のまま、薄い笑みを浮かべた。

「は……なにこれ、どうなってんの……?」

この変化に気づいたらしい。熾天使ミュウが、高々と斧を振りかぶったところで、ぴたりときを止めた。

「《同化》です。世界の命運は……彼らに託しました……」

「ふうん。そう。そういうことだったのね」

熾天使ミュウは、やれやれと言ったふうに肩を竦めた。

「で、あんたはどうすんの? このまま死ぬ気?」

「…………」

アリアンヌはわずかな力を振り絞り、自のステータスを確認した。

《HP 1/1

MP 1/1

理攻撃力 1

理防力 1

魔法攻撃力 1

魔法防力 1

俊敏 1 》

同化は完了したようだ。これまで地道に溜めてきた力は、いま、シュンとロニンに蓄えられていることだろう。

――終わった。

アリアンヌは大きく息をついた。

これで私の役目は終わり。

寂しい生き方だったけれど、後の世界はきっと、シュンたちが導いてくれるはずだ。

「…………」

なにも言わないアリアンヌに、熾天使ミュウはすべてを察したらしい。はあーっとあからさまなため息をつくと、改めて斧を高く掲げた。

「そういうことなら、さっさと死にな。元熾天使にしては、つまんない最期ね」

なんとでも言うがいい。

とうに生きることは諦めた。

世界を守るため、創造神ディストを倒すため、私は自分を捨てた。

そうでもしないと、他の悪魔たちと同様、自我を失い、みずから命を絶ってしまいそうだったから。

私だけはそうなるわけにはいかなかった。

なぜなら、私は元熾天使。世界を守るのが、私の使命――

ミュウはもう一度大げさなため息をつくと、ゆっくりと斧を下ろしてきた。そのまま、兇悪な切っ先が、アリアンヌの背中を――

「おっと。諦めるにゃまだ早いぜ?」

一陣の風が舞うのと同時、聞き覚えのある聲がアリアンヌの耳朶を刺激した。

「言っただろ。この世から去るなんて許さねえ。みんなでディストを倒すんだ」

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