《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》シュンの部 【威圧

「あー! むかつくむかつくむかつく!」

の怒聲が、アグネ地帯に木霊する。

シュンは油斷なく構えながら、熾天使ミュウのきを探っていた。

いくら急激なパワーアップを遂げたとはいえ、ミュウは熾天使。

《天使》でも最上位の階級を相手に、一瞬たりとて気を抜くことは許されない。

アリアンヌはロニンが守ってくれているようだ。こちらはミュウとの戦いに集中しよう。

と。

三対六の翼をはためかせ、熾天使ミュウが空中に姿を現した。その表は憎悪に歪んでいる。およそ天使には似つかわしくない兇悪な顔つきで、上空からシュンを睨んでくる。さすがは熾天使というべきか、たいした威圧だ。

だが、シュンとて長年人々を束ねてきた國王。この程度のプレッシャーなどなんでもない。負けじと睨み返していると、熾天使ミュウはさらに苛立ったのか、

「あーもう、ほんとにムカつく!」

と怒鳴り聲をあげた。すさまじい音圧が発生し、周囲の空間に震が伝わっていく。

「もう限界! シュンもロニンもアリアンヌも、みんなまとめて殺してやる!」

びながら、ひとつの斧を攜え、切っ先をこちらに向けてくる。

――來るか!

咄嗟にシュンも天空からの攻撃に備える。ミュウの一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくを見逃さぬよう、全神経を張り巡らせる。

だが、戦闘は始まらなかった。低い男の聲が、あたり一面に響き渡ったからである。

『ミュウよ。そこまでにしておけ。時間切れだ』

――この聲は……ディスト……!

シュンは慌てて周囲を見渡すも、新たな闖者ちんにゅうしゃの姿はない。どうやら先程と同様、テレパシーで語りかけてきているようだ。

ミュウは空を振り仰ぎ、不満そうに片腕を突き出した。

「やだよ! ここまでコケにされて、引き下がれるわけないじゃんか!」

『……ミュウよ。もう一度言おうか』

瞬間、創造神ディストの聲が、予想だにしないほど禍々しさを帯びた。

『下がれと……言ったはずだ。聞こえなかったかな』

この圧力には、さしものシュンも怯んでしまったことは否めない。いままで様々な強敵と相対してきたが、彼らとは比較にならない、すさまじい迫力だ。

熾天使ミュウもさすがに怖じ気づいたか、翼をしゅんと萎ませ、武をしまった。

「わ、わかったわよ……。ごめん」

『わかればいいのだよ。何もせずとも、いまから私が彼らと遊んでやるところだ』

「――え?」

ミュウが目を丸くした、その瞬間。

突如として、世界が、死んだ。

長年生きながらえてきた大樹の數々が、音もなく枯れていく。地面に生えている花や草までもが、をなくし、散っていく。

それだけではない。

斷続的に地震が発生し、シュンは思わずを竦めた。強烈な震だ。活力を失った木々たちが、重厚な音を立てて倒れていく。

それだけではない。たちも謎の死を遂げたようだ。すでにかなくなっている鳥たちが、木の葉の隙間から垣間見える。

生きとし生きる者すべてが、実に呆気なく、死んでいく。

――世紀末。

ふと、シュンの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。

『その通り』

こちらの思考を読んだのだろうか、創造神の聲が響きわたる。

『たったいま、世界を殺した。世界崩壊まで――あと二時間だ』

「に、二時間だと……!?」

『そう。あと二時間もすれば、世界は跡形もなく消滅する。君たちにできることはない。このまま指をくわえて、世界の崩壊を眺めているがよい。ふふ……はっはっはっは!』

高らかな笑い聲を最後に、創造神の聲は聞こえなくなった。

「そう。そういうこと……だったのね。いいざま」

熾天使ミュウもすっきりとした表でシュンたちを見下ろすと、はるか上空へと飛んでいった。

その後ろ姿を、シュンは口を開けて見送るほかなかった。

世界消滅まで ――2:00――

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