《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》最後の顔向けを

アルスに連れて行かれた先は、シュンが想像もしていないところであった。

「ここは……」

ぽつりと呟きながら、あたりを見渡す。

一面、なにもない平原が広がっていた。

かつて大きな村があったはずのこの場所は、人も建造もなにもない、まっさらな土地となっていた。唯一あるものと言えば、以前シュンたちが作り上げた、村民たちの墓のみ。

そう。

シュンが半生を過ごした故郷であり、そしてアルスが滅ぼした村の跡地である。

――なぜ今更こんなところに。

それを目線で問うと、アルスは気まずそうに頬を掻きながら答えた。

「まあ……ここに神殿への経路が繋がっているのさ」

「なんで……こんなとこに……」

がくりと肩を落とすシュンに、アルスも苦笑しながら頷いた。

「おまえも鑑賞対象だったからな。村人に姿を変えて、創造神がちょくちょく見にきたこともあるらしい」

「はあ……」

気味の悪い話だ。なんとなく察してはいたが、創造神ディストはかなりの変態といえよう。ロニンもやや引き気味に表を固めている。

「まあ、それはいいだろう。――いまから神殿への道を開く。準備はいいか?」

アルスの問いかけに、シュンとロニンは同時に頷いた。

アルスも首肯を返すと、片腕をさっと空に向けて突き出す。

瞬間。

無數のの粒子が、アルスの腕を包み込み始めた。目に見えない力の胎たいどうをじる。いまならシュンにもわかる。神の霊気を、空へ向けて放っているのだと。

――あと二時間で、すべてが終わる……

押し寄せる慨を噛みしめながら、シュンは改めて、かつての故郷を見回した。

勇者に滅ぼされ、跡形もなくなってしまった廃村。

ここにはたしかにシュンの軌跡がある。あの優しい両親がいたからこそ、いまの引きこもりLv.999のシュンがいる。

もう二度と親孝行はできない。

けれど。

シュンはもう一度、自が建てた墓に目を向け――親指を立ててみせた。

「じゃあ、いってくる」

呟くように発したその聲は、ロニンにもアルスにも聞こえていない。

でも、たしかにシュンは聞いた。

――頑張ってこい――

記憶に深く刻まれた、両親の妙なる聲を。

――ああ、ケリつけてくるよ――

「おい、できたぞ」

アルスに呼びかけられ、はっとする。

シュンは意識を切り替え、背後を振り向いた。

「これは……」

思わず目を見開いてしまう。

地上から見果てぬ空へ向けて、緩やかに虹の道がびているのだ。おそるおそる一歩を踏み出すと、たしかなが返ってくる。これを辿って神殿へ向かうということか。

「行こうぜ。神をぶっ倒しにな」

「う、うん!」

やや遠慮がちに、ロニンも虹の道に足を踏みれる。その際、弱々しく手を差しべてきたのはいつものことだろう。シュンは苦笑しつつも、妻の手を握った。

続いてアルスも、神殿への道のりに進み出る。

すると。

ゴゴゴゴゴゴ……!

神からの拒否反応か、一層激しい地震が発生し、シュンは思わずいた。橫凪ぎの暴風も吹き荒れ、油斷していると落とされてしまいそうだ。

だが、ここで引くシュンたちではない。

創造神の待ちかまえる神殿へ向けて、一歩、また一歩と、力強い進行を続けていった。

世界消滅まで ――1:42――

    人が読んでいる<引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください