《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》勇者の覚悟

天空城。

見渡す限り金屬質な平面が広がっている。

障害の類はいっさいない。

そして真正面には、いつか見た、巨大な神殿。

以前に目にしたそれは紺碧一に染まっていたが、いまシュンたちの眼前に屹立する神殿は、純白に彩られていた。

ところどころに金の紋様が描かれており、荘厳な雰囲気がじられる。

そして。

その神殿の前に立ちふさがるは、見るも大勢の天使たち。各個、おどろおどろしい武を攜え、シュンたちを通すまいと厳しい視線を向けてくる。

――多いな。

シュンは心中で舌打ちした。

一般の天使くらいなら相手にならないと思う。苦戦することもなく倒せるはずだ。

問題は制限時間である。

こうして足踏みしている間にも、世界消滅までのカウントダウンは刻一刻と進んでいる。さらに言えば、この先にいるはずのトルフィンのも心配だ。 

どうにかして切り抜けられないか……!

シュンが考え込んでいると、

「――ここは俺が引きけよう」

勇者アルスが一歩前に進み出た。剣を引き抜き、無限にも思える天使の大群と対峙する。その瞳には微塵の迷いもじられない。   

「おまえ……大丈夫なのか。あの數だぞ」

心配をじ得ないシュン。

無論アルスの強さはわかっている。だが、アルスもさっきまで激闘を重ねてきたはずだ。さぞ疲労が溜まっているだろう。

「気にするな。俺に任せてくれ」

アルスはそう斷言する。

「ここで時間を取られたら、どの道世界の終わりだ。俺のことは気にしなくていい。先にいけ」

「だ、だが……」

「何度も言わせるな。俺は勇者。人類の希なんだぞ?」

冗談めかして言う勇者だが、その表は真剣そのものだった。

「…………」

シュンは考える。この場を彼ひとりに託すのは心苦しいが、しかしアルスの言い分も最もだ。

「……わかった。ここは任せたぜ。勇者」

「ああ。そっちも頑張ってくれよ――國王様」

シュンは頷くと、ロニンとともに神殿へ向けて突っ込んでいった。當然のように天使たちが攻撃を仕向けてくるが――

「おおおおおっ!」

勇者アルスが、まさに神速のごときスピードでそれらの天使を斬りつけていく。もちろん天使たちも強い。この一撃では沈まないが、しかしシュンたちを通すには充分な《隙》を生み出すことはできる。

――あとは頼んだぞ、シュン、そしてロニン――

中でそう願いながら、アルスはさらに剣を振るい続けた。

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