《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》子にして殘なる天使

「えっ? この力って……」

疾駆しながら、ロニンが背後を振り向いた。アルスが大勢の天使と激闘を繰り広げている方向である。

シュンは疾走を止めないまま苦笑した。

「すげぇな。どうやらあいつも、新たな境地に達したらしい」

「す、すごいね……」

ロニンも嬉しそうに頬を緩める。

正直さっきは心配だったが、これなら問題なさそうだ。あの力があれば、なくとも殘り一時間弱、苦難を乗り越えることができるはずだ。

――あとは俺たちが頑張る番だな……

そう心に決め、シュンたちは疾駆を続ける。アリアンヌのおかげで、道に迷うことはない。

やがて大広間に出た。

シュンたちは足を止め、周囲を見渡す。

天井には巨大なシャンデリアが吊るされている。

床面は白銀の大理石で構されており、歩くたびに足音が反響する。壁面には等間隔で風景畫が掛けられていて、このような差し迫った狀況でなければ、思わず見ってしまいそうだった。

「…………」

部屋の奧には先へと続く大扉がある。それでもシュンたちが立ち止まったのは、ここに異質な気配をじたからだった。

「出てこい! いるんだろ! 熾天使ミュウ!」

「……へえ、やるじゃない」

――直後。

シュンたちの頭上に、三対六の翼を持つ天使が姿を現した。

外見そのものはさきほどの天使たちより明らかにい。だが、彼からはいわく言い難い威圧じる。

熾天使ミュウは優雅な仕草で著地すると、にこりと笑ってみせた。

「バレちゃしょうがないね。本當はこのまま首ごと斬り落とすつもりだったんだけど」

い顔でこの発言。

シュンも驚嘆をじえない。

「……邪魔するつもりか。俺たちを」

「まーね。あ、でも國王さん。あんたは通していいってディストが言ってたよ」

「……なんだと?」

思わず聞き返してしまう。

「世界が消滅する前にあんたと遊びたいんだってさ。とんだわがままだよね。――で」

ミュウはどこからともなく斧を出現させると、切っ先をロニンに向ける。

「魔王さん。あんたが私の遊び相手よ」

「……ふん、なにが遊びだよ。狂人どもが」

言いながら、シュンは妻を見下ろす。

ロニンは悟ったようにシュンと視線を合わせると、靜かに頷く。相手側の言いなりになるのは癪しゃくだが、しかしここで時間を浪費するわけにはいかない。この場はロニンに任せるのが最善の策といえる。

「ここは私に任せて。シュンさんは……ディストをお願い」

「……わかった。頼んだぜ」

妻の頭にぽんと頭をのせると、シュンは部屋の奧に視線を據えた。

そのままミュウを警戒しつつ、次の扉を開け放った。

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