《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》引きこもりであるためか

シュンは極限にまで神経を張り詰めた。

無差別に襲いかかってくる、悪魔の槍群やりぐん。

これを突破するしか、神へ至ることもできない。

――ここが正念場だ。いくぞ!

シュンは雙剣を構え、意識のすべてを魔の槍に集中させた。トルフィンも同様に剣を構える。互いに言葉を発していないにも関わらず、親子は同じタイミングで駆けだした。

制限時間は殘り十分とない。魔の槍を弾き、あるいは避けながら、全力へディストへ近寄れ!

矢継ぎ早に襲ってくる槍の群を、シュンたちは瞬間的反応だけで捌さばいていく。一撃でも喰らえば終わりだ。看過できぬダメージが通るだろう。繊細に、そして大膽に、シュンたちは槍を斬り落としていく。

親子であるためか、同じ元引きこもりであるためか、あるいは、その両方のためか――シュンとトルフィンの息はぴったりだった。対処に間に合わなかった接近中の槍を、互いに助け合う形で斬り伏せる。二人揃ったからこそ可能な、強行的な戦法だ。

――その槍は俺が対処する! おまえは前に進め!――

――ああ、頼むぞ父上!――

いつしか二人には會話さえ不要になっていた。目線だけで互いの意思を疎通し、一歩、また一歩と神に近づいていく。

殘り時間 ――0:04――

無限にも思える撃ち合いの果て、シュンはとうとう神の目前へと辿り著いた。ディストがいくら無限大に槍を飛ばせるとはいえ、零距離にまで迫られてはどうしようもあるまい。

「くっ、人間ごときが生意気な!」

ディストは杖を掲げると、再びエメラルドグリーンの壁を出現させる。先程シュンたちはこれにより、呆気なく弾き返された。

「ふふ……。前述のようにこれは絶対障壁。いかなる者であろうとも、破ることは不可能だ!」

その言葉はシュンの心に屆いていなかった。絶を引きながら、全力で雙剣を振り下ろす。ロニン、セレスティア、トルフィン、自分の國民たち……守るべき者の姿を思い返し、無我夢中で力を解放する。

ガキン! という金屬音とともに、シュンの剣は見えざる壁に阻まれる。

「おおおおおおッ!」

先程のように衝撃波が襲ってくるが、シュンは気合いとだけで剣を押し続ける。

殘り時間 ――0:03――

「加勢するぞ、父上!」

すこし遅れて到達したトルフィンも、シュンの隣で絶対障壁に斬りかかった。

直後。

だにしないはずの明な壁に、違和が訪れる。パキン、パキンとけない音を立てながら、ヒビ割れが発生していく。

「ば、馬鹿な……。絶対障壁が……絶対に破られないはずのシステムが……」

ディストが驚愕に目を見開く。

「てめぇみたいなクズ野郎に人を統治する資格はねぇ! 恨むなら過去の自分を恨むんだな!」

「なんだと……貴様ァ!」

ディストがび聲をあげた、その瞬間。

徐徐じょじょにヒビを広げていった絶対障壁が、爽快な音を立てて完全に打ち砕かれた。

神を守り、突破が不可能とされた《壁》は、たったいま二人の引きこもりによって無に帰した。

「おおおおおおッ!」

好機とばかりに、親子は次から次へと剣撃を浴びせていく。さしものディストも隙を突かれては反撃のしようもなく、されるがままに攻撃をけていく。最強の引きこもりを相手に、ディストは著実に生命力を切らしていく。

しかし。

「おのれ、貴様らァァァァァァア!」

ふいにディストが狂気のび聲を発した。すさまじい音圧に、親子は思わず距離を取る。

「いいだろう! ここまで侮辱されたからには、私も最後の手段を使わせてもらう!」

殘り時間 ――0:02――

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