《進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~》第三話 まったく現実というものは理不盡である。
僕のステータスが最弱ということが皆にばれて、既に一週間たった。
この一週間、地獄だったというべきだろう。
なにせ、皆よりもステータスが低いから、訓練の相手をしてくれている騎士団の団長さんや副団長さんが本気で僕を特訓させるんだもの。
もともと力がない僕にとって、長時間をかすのは非常につらい。
だがそんな環境が一週間も続けば、それなりに適応するというものだ。一週間前よりはだいぶ楽になっている。
そしてそんな中、僕は今非常に困った問題を抱えている。
なにかというと、クラスメイトのことである。
僕が最弱と分かった途端、クラスの中でも非常に嫌われている四人組からいじめをけていた(前回のときにクラスの仲は良いという風に言ったが、そう思っていたのは僕だけのようだ)。
それも、靜香や幸希、刎さんたちの見えないところで。
一日目はそこまでひどくなかったのだが、日を追うごとにだんだんとエスカレートしていった。
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二日目は訓練の休憩中に置の裏側に連れ込まれて暴力を振るわれ。
三日目には魔法の練習と稱して気を失うまで魔法を放たれ続けた。
四日目からは魔法と理的なダメージを負わされる。
そんな地獄の訓練といじめをけながら一週間たった。
今日は団長さんから重大な発表があるらしい。
「これからお前たちには、この國にあるダンジョンに潛ってもらう」
団長さんの突然の発言に、ざわめくクラスメイト。
「まあ落ち著け。別に一人で潛ってこいって言ってるわけじゃない。確かここには四十人いたはずだな。なら八人で一組のチームを作って潛ってもらう。目標としては第五層にあるボスモンスターを討伐すればクリアだ。功できたチームにはご褒がある。出來なかった奴らには今よりももっときつい訓練を施す予定だ」
団長さんの発言に、興と不安の表を示すクラスメイト達。
「では、いまから八人組を作ってくれ。できたところから行ってもらう」
その発言で、生徒たちは我先にと言わんばかりに八人パーティを作り、いそいそとダンジョンへ向かっていった。
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「さて、殘っているのは俺たちと……げぇ、あいつらかよ」
「あいつらと一緒は嫌だねー」
「もう、そういうことは言わない! 臨時のパーティを組むだけなんだから我慢して」
幸希と靜香、刎さんが愚癡っている。
僕? なんでもいいやってじです。
「おーい、殘っているのはお前らだけか。暇だから俺が付き添いでついてってやる」
ニヤリとわらう団長さん。毆りたい。この笑顔。というかこの人だって騎士団長としての本來の仕事があるだろうに、こんなところで油を売っていてもいいのだろうか?
僕はそんなことを気にかけながら、団長さんの後を追いかけた。
王宮を出て歩くこと三十分。僕たちはダンジョンのり口前にいた。
「これが……ダンジョン………………」
幸希が張した顔で言う。
いや、幸希だけじゃない。僕や靜香、刎さんや四人組のいじめ集団でさえ、この存在に飲まれている。
団長さんは僕たちの姿に満足したのか、笑みを浮かべる。
「さあ、呆けてないでさっさとるぞ」
こうして僕たちは初のダンジョンに足を踏みれた。
*
*
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*
*
ダンジョンにって約四時間、僕たちは第四層まで來ていた。
一層から四層までは二時間程度で突破できたのだが、四層に來てから一向に次のエリアに行く階段が見つからないのだ。
「あーもう! いつになったら出てくんだよ!」
幸希が我慢ならないという風にぶ。
「おい、そんな大きな聲を出したら魔が寄ってくるだろうが!」
刎さんは跳び蹴りしてきたウサギ型の魔を裏拳一撃で砕した。
刎さんは普段はのんびりとした口調でとても番長ヤンキ―には見えないのだが、爭い事となると格が豹変する。今みたいなじに。
というか刎さん、一撃で魔を殺すって、強すぎじゃない?
「お、おい! こっちに空があるぞ!」
四人組のうちのリーダー君がこちらを手招きして呼んでいる。
そちらに向かってみると、本當に空があった。
奧には下の階層に降りる階段が存在し、ここから階段まではボロボロに朽ちている橋がかかっている。
「こ、ここを通るの?」
靜香が怯えたように言う。そういえば靜香は高所恐怖癥だったっけ。
「僕が行くよ」
僕の立候補に、幸希が驚いた顔で問う。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫」
僕はそう返しながら、橋に近づいていく。
今ここで幸希たちに何かがあっては大変だ。
なら最弱である僕が危ない橋を渡った方がいいだろう。
本當は怖いんだけどね。
慎重に、慎重に進んでいく。
やがて中間まで進んだ。
その時、なぜか僕は何気なしに後ろを振り向いた。
そこで見たのは。
狂気に染まった笑みを浮かべながら剣を橋の元に當てている四人。
まだ靜香たちは気づいていない。
「な――――」
助けをぼうとするけれど、し遅かった。
――――プツンッ。
「あ――――――――」
僕はび聲を開けながら奈落へ真っ逆さま。
「晃ッ!!」
幸希のび聲が聞こえるけれど、もう遅い。
僕は為すもないまま、真下に落ちていった。
*
*
*
*
*
(幸希side)
これはいったい何の冗談だ……?
俺は晃が落ちていくのを何もできずに見つめていた。
なぜだ? なぜこんなことが起こった?
俺はこの現況を作った奴らを見る。
あいつらは――――笑っていた。晃が落ちているのを見て、笑っていたッ!!
「てめぇら! いったいなにしたかわかって「死ね」――――――え?」
俺の言葉を遮ったのは、久先だった。
久先は晃が落ちたを見つめたままいていない。
だが今発言したのは間違いなく久先だ。
やがて久先が立ち上がり、あいつらのほうにを向けた瞬間――――――
二人の頭が宙を舞った。
「――――え?」
あいつらはいったい何が起こったのかわかっていないのか、間抜けな聲を出している。
つうか今の剣速は普通に団長さんより速いんじゃねぇか?
「……あと二人…………」
久先はそう呟いて一人のを掻っ捌いて、もう一人の左腕を切り飛ばした。
「ウギャアアアアァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!」
絶が迸る。
しかしそんなことを気にも留めず、久先は剣を一閃。
ボトリ、と首が落ちる。
たった三十秒足らずで、久先は四人を文字通り、祭りにあげた。
久先はその場で崩れ落ちた。
「靜香!!」
駆け寄ったのは南海。南海も俺と同じように呆けた様子で久先を見ていた。
「南海! 久先は大丈夫なのか!?」
「ああ、気を失ってるだけだ」
そのことを聞いて俺は安心する。
「とりあえず、ここから出ないとな。まだ団長さんは帰ってこないのか!」
団長さんは今、俺たち以外のメンバーがダンジョンを攻略できたということで、そっちの方に出向いている。
「ここは私らでくしかない」
南海が靜かな聲で言う。
「だが、ここはダンジョンだ。何かあってからじゃ遅いんだぞ」
俺のセリフに、南海は鼻で笑う。
「てめぇのユニークスキルはなんだ? 守るスキルだろうが。それを今使わないでいつ使うんだよ」
南海の言葉に、俺はうつむいてしまう。
南海の言う通りだ。
俺のユニークスキルは【絶壁】。守るべきものを守るためのスキル。
「……わかった。久先は俺が背負う。さっさと王宮に戻って晃を助ける準備をしねぇとな」
俺の言葉に同意するように南海は頷き、久先をこちらに預ける。
待ってろよ、晃。すぐに助けに行くからな。
*
*
*
*
*
(晃side)
僕は現在落下真っ最中だ。
かなり長い。おそらくだけど、これ最下層まで続いているんじゃないかな。
というかこの速度で落ちたら僕生きてないよね。
死ぬのかぁ……嫌だなぁ……まだやりたいことってたくさんあったのに。
僕の脳裏にこれまでのことが走馬燈のように流れていく。
視界の端に、地面らしきものが見えた。
――――せめて死ぬときは一瞬がいいなぁ
そう思っている間にもどんどん地面との距離は近くなり――――
途中で木に服が引っ掛かり、減速して、地面に落ちた。
「………………………助かったのか」
そう思うと、自然と涙がこぼれる。僕ってこんなに涙脆かったかな。
だけど、ここで生き殘ったのだから、何としてでも地上に帰らねば。
そう思って後ろを振り返ると。
すぐそこに、超巨大な熊がいた。
熊はジッとこちらを見つめている。
「……………痛くない方でお願いします…………」
「グルギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
熊の咆哮が轟く。
まったく、助かったと思ったらどう見ても敵うわけがない強さの魔と出會うなんて、現実というのは理不盡なものだと、こんな狀況なのに僕は暢気に考えていた。
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