《進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~》第二十五話 もう我慢の限界だ

グリンデル皇國。謁見の間。

そこには、皇國の王や幹部、そして勇者代表として靜香・幸希・南海が集まっていた。

「さて皆の者よ。わかっているとは思うが、今回集まってもらったのはほかでもない。先日の調査によって発覚した帝國の侵略についてだ」

皇王がそう切り出すと、場の空気が一瞬で引き締まった。

「今回の件に関して、帝王は一切かかわっておらず、帝國の帰屬による獨斷とのことだ」

「つまり帝國の総意ではないと?」

靜香が皇王に聞く。

「帝國とは裏にですが貿易を行っている國です。皇王と帝王の仲も良く、戦爭する理由は見當たらないのです」

靜香の問いに皇王ではなく文が答えた。

皇國と帝國の仲が良いという話は有名であり、長年に渡る皇國と帝國の戦爭もなくなるのではないかと思われていた。

しかし、結果としてはこのような様である。

「おそらく今回いた貴族は『過激派』と呼ばれる、いわゆる今の狀態を良く思っていない貴族でしょう」

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帝國には過激派と穏健派という二つの勢力に分かれている。

穏健派は現在の狀態を好ましく思っており、皇國を含めたほかの國との対立をまない派閥である。

過激派は現在の狀態に不満を持っており、皇國を含めたほかの國に戦爭を仕掛け、覇権を握ろうとする派閥である。

ちなみに帝王は穏健派であり、過激派を牛耳っているのは帝國の宰相という噂が立っている。

「過激派のトップは帝王も認めている宰相だ。かなりの切れ者だとも聞いている」

「わが國だけの防衛だけではし不安ですな。ここは冒険者ギルドの助けを借りた方が良いのではないですかな?」

この発言に、皇王を含めた全員が黙り込む。

冒険者ギルドとは、魔の討伐や薬草等の採取と言った雑用などを行う、いわゆる冒険者主でできた組合である。

ギルドマスターと呼ばれるギルドの長である自分が仕切っており、國の干渉をけず獨立して活している組織でもあるため、國の王だとしても命令することはできない。

幸い、皇王とこの國のギルドマスターは知り合いであり、ギルドからの救援自は可能ではあるのだが、それをける冒険者がいるかどうかという問題がある。

やがて、沈黙を守っていた勇者組代表である南海が口を開いた。

「なら、私たち勇者たちも參加するっていうのはどうだ?」

この発言に幸希はギョッとして隣に座る南海を凝視する。

驚いているのは幸希だけではないようで、南海と靜香を除いた全員が唖然としている。

それも仕方がないであろう。

なにせ、勇者たちがこの戦爭に參加するということは、幹部たちの話し合いの末に決定したことであるからだ。

最初から決まっていたことではあるが、本人から直接言われると、しばかり罪悪が現れる。

「おい、南海!? どういうことだよ!? なんで俺たちが戦爭に參加しなきゃならないんだ!?」

幸希が慌てた様子で南海に詰め寄る。

南海は靜かな聲音で、答えた。

「どうもこうもない。私たちを含めて勇者たちは最近驕り過ぎだ。自分の力に酔い過ぎている」

まさに南の言う通りだった。

晃がダンジョンで行方不明になってから、幸希をはじめとする真面目な生徒は自分たちでこれからどうするかを決め、自分たちのできることを一杯にして自分の力を磨いている。

だが、一部の生徒たちは自分こそが強者だと思い込み、毎日だらだらと過ごしている。

このままではただの國のお荷である。

いつか想をつかされ、城を、下手をすれば國から追放される可能だってある。

それは流石にクラスメイトとして見過ごせない。そう思ってクラス院長や先生を中心として注意喚起をしているのだが―――――

「流石に我慢の限界だ。自分で手にれた力でもないのにああやって威張られるのが、私は大嫌いなんだ」

南海は実家がヤクザの元締めということから誤解されがちだが、親からは力の使い方というのを教わっている。

力ある者がどういう立ち位置でいるべきか、彼はよく理解している。

だからこそ、彼は嫌う。力を持ちし怠惰たる者を。

「私らを含めてもう一度再確認するべきだ。私たちが、いったいどれだけ無害で、平和な時代にり浸っていたのかを」

南海の目の奧に、深い闇を幸希は見たような気がした。

「この五年間お世話になりました」

「…………お世話になりました」

現在、俺たちは転生神ミルティスさんと、リーナを封印したという生命神アルフィリーナさんたちと一緒にいる。

修行の期限である五年目になったので、俺たちは下界に戻ることになる。

「こちらこそ、久しぶりに楽しかったですよ」

「私もよ。神なんて仕事だらけでつまらないからね。いい暇つぶしになったわ」

このアルフィリーナさん、リーナを封印したということで、リーナとの仲が悪いのかと思っていたのだが、全くそんなことはなかった。それどころか隨分と仲良さげである。

「また時間があれば遊びに來ますよ」

「ええ、ぜひいらしてください。楽しみに待っていますよ」

そう言ってにっこり微笑むミルティスさん。

こうして、俺たちはミルティスさんと別れを告げ、五年ぶり(実際には一ヶ月ぶりなのだが)の下界戻ったのだった。

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