《進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~》第三十四話 二つに一つの選択です
夕食を食べ終えた俺たちは部屋に戻り、とある人が來るのを待っている。
とある人とはもちろんメリルのことである。
プレートを回収していく際に話があると伝えてある。
諸々の用事が終わればこちらに來てくれるだろう。
ただ待っているのもあれなので、前から考えていたことを検証したいと思う。
突然魔力を放出し始めたことに驚いたのか、先ほどまでごろごろしてたリーナがこちらをじっと見つめている。
そんならしい視線を橫目に、俺は手のひらに魔力を集中させる。
まずは氷の結晶を作るところから。
これを作る場合、一瞬で作ってしまうと脆い氷になってしまうので、ゆっくりと周りの水分を集めながら結晶を作っていく。
五分後、完したのは純度の99%の六角形の氷の結晶だ。
純度100%にしようと試みたのだがかなり難しく、最終的にこの形で留めることにした。
さて、ここからが本番だ。
氷の結晶の中をに、炎を生み出す。
現実世界ではできなかったことを、今ここで実現する。
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氷の結晶の中心點に魔力を集め、再びゆっくりと炎を起こす。
すると、火は氷を解かすことなく徐々に大きくなっていく。
やがて、氷の面積より一回りほど小さい規模まで燃え上がると、そこで火の膨張は止まった。
リーナがキラキラした目でこちらを見てくる。
「ヒカル、これは何!?」
「まあまあ落ち著け。完してからのお楽しみだ」
「まだ完じゃないの?」
「ああ、ここからまだ調整を加える。といっても簡単なものだがな」
俺は氷の中で燃え上がる炎に天魔法をしづつ付與していく。
すると炎が赤から白に変していく。
「炎のが変わった」
「ああ、なにせ周りの酸素をここにぶち込みながら付與してからな」
酸素を取り込む量が増えれば増えるほど赤→青→白といったじにが変し、火力が上昇する。
そこに天魔法取り込み、うまく熱を中心に集めるようにすることによって氷を破壊することなく炎をとどめることができる。
さて、もうひと踏ん張りだ。
俺は作り上げたこの炎氷結晶とも呼ぶべきものを重力魔法によってしずつ小さく圧していく。
手のひらに収まるサイズにめると、あらかじめ用意していた裝飾品にはめ込む。
これでようやく完だ。
「ペンダント」
「ああ、なかなか難しかったが、何とか完だ」
俺はそう言いながらいーなの首にかけてやる。
「…………いいの?」
「ああ、お前にやるために創ったんだからな。一応これはお守りだから、もし一人でいるときに何かあればこれに向かってありったけの魔力をつぎ込め」
「……どうなるの?」
リーナが不思議そうに問いかけてくるので、こう返す。
「さあな。それはやってみた時のお楽しみだ」
そう言いながらおれはもう一つ同じものを用意する。
こっちはメリル用だ。これは一応保険で用意したものだが、はてさて、保険で終わってくれるかなぁ?
*
*
*
*
*
メリルが來たのは、ペンダントを作ってから約1時間たった後だった。
「遅れてすみません。お片付けがなかなか終わらなくて」
「いや、別に構わない。遠慮せずにってきてくれ」
といってもここは宿屋で自分の部屋ではないのだがな。
「失禮します」と、音を立てずに部屋にってきたメリルを見て、俺はしばかり心した。
何故か。それはをかした際に放つ音を完全に遮斷しているからだ。
人間に関わらずというのは、行を起こす際にはどうしても音を出してしまう。
地面を踏みしめる音だったりとか、呼吸音、心臓の鼓などといったどうしても音を止めることのできないものだって存在する。
だが一流の冒険者であれば、自分の心臓の音を外聞発生させないことなど朝飯前である。
つまりメリルはBランクの冒険者でありながら、Aランク冒険者並みの実力を兼ね備えているということになる。
………………想像以上だな。
これなら、俺たちと一緒に行しなくても自分のを守ることができるだろう。
ま、それを決めるのはこれからの渉次第だがな。
「それで、お話というのは?」
「ああ、単刀直に聞こう。徳スキルというスキルを持っているな?」
俺がそう聞いた瞬間、メリルの顔が強張った。
「…………なぜ、そのスキルのことを?」
「もちろん、俺たちもそのスキルを持っているからだ」
ま、俺はちょっと違うんだけどな、そう言ってリーナに目配せする。
リーナは事前に言っておいた通りに、自分のステータスを表示する。當然、そのスキルが表示されているところだけだが。
「こ、これは!」
メリルが之熾天使ガブリエルを見て驚いている。
「私と同じスキルを持っている人がいたなんて――――――」
そこで言葉を區切り、俺に向きなおる。
「さきほど『俺たち』と言いましたが、もしかしてあなたもこれと似たスキルを?」
「ん、俺のスキルはちょっとだけ違う。いうなればお前たちのとは対照的なモノだろう」
そう言って暴食之神ベルゼブブと強之神マモンを見せる。
「確かに天使っぽいスキルじゃないですね」
「さて、これで俺たちのことを使用してもらったということでいいか?」
「ええ、構いません」
「なら本題にはいろう。おそらくだが君のそのスキルを狙って聖都から刺客が來るかもしれない」
「ッ!?」
俺のセリフに、メリルは信じられないというような表を浮かべる。
ま、普通なら信じられないよな。自分がこのスキルを持っているからって狙われていることなんて。
「ど、どうしたらいいんですか? いくらBランク冒険者だとはいえ、基本的には戦闘は苦手なんですよ」
「それについては問題はない。すでに対策案は考えてある」
俺はそう言って指を二本立てる。
「一つは俺たちと一緒に旅にでるか。もう一つはこの宿に殘る代わりにこのネックレスを常に離さずつけておくことだ」
おれとしては後者の方を選んでほしいのだが。
「………今すぐには決めることはできません。明日の夜、今日と同じ時間まで時間ををくれませんか?」
「俺たちは明日には依頼でここから離れる。一週間ほど開けておくから、帰ってきたときに答えを聞かせてくれるか?」
「わかりました」
俺は左手に握っていたペンダントをメリルの首にかけてやる。
「これ………いいんですか?」
「ああ、もともとどちらを選択していようが渡していたからな。こいつはお前が何らかの理由でピンチになったとき必ず助けてくれるお守りみたいなものだ。できるだけ離さず持っていることをお勧めする」
「わかりました…………ありがとうございます」
「禮には及ばん」
そのあとは軽い雑談をしてから解散となった。
明日は例の問題児のパーティーと護衛の仕事。
はてさて、どうなることやら。
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