《進化上等~最強になってクラスの奴らを見返してやります!~》第三十七話 ついに始まっちゃったね
――――バルティス帝國side―――――
「グリンデル皇國の包囲、完了しました! いつでも攻撃できます!」
グリンデル皇國から約5キロほど離れた、『メルクリオ平原』。
そこには約20萬の帝國兵たちが戦の準備をしていた。
帝國のある貴族に雇われた8萬の冒険者と、貴族が保持している7萬の兵士たちで作れられた混合隊。
冒険者たちは依頼達での報酬の為に。
兵士たちは自分たちの功績のため、出世の為に。
彼らはそれぞれの夢の為にこの戦に參加しているのだ。
「うむ。全員配置につけ!! これよりグリンデル皇國の侵略を開始する!! 魔法用意!」
軍師らしき人が石盤に向かってんでいる。
軍師が持っている石盤は超高能遠距離魔法通信機―――――通稱、魔信機と呼ばれている魔法である。
過去の賢者たちが生涯をかけて作り上げた、魔力を持つものならどこでも使用することができる魔法は、その圧倒的なコスパの良さと、簡略化された魔法式が人気を誇り、刃部たちで改良して使うものも多い。
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軍で使用される魔信機は、遠距離通信は當然のこと、うまくやれば相手の通信容を盜み聞くことができる。
軍師は後ろにいる兵士たちに聲をかける
「準備はできたな!? われらには向かう卑劣な者たちに正義の鉄槌を下せぇぇぇぇぇ!!!!」
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
冒険者と兵士たちの怒號に軍師は満足したのか、再びグリンデル皇國を見據える。
戦爭のときは、すぐそこまで來ていた―――――
*
*
*
*
*
―――――グリンデル皇國―side――――
「「「!!?」」」
バルティス帝國がグリンデル皇國を包囲しているとき、南海・幸希・靜香の三人には突如として椅子を鳴らしながら立ち上がった。
「ど、どうしたのだ勇者殿?」
アルトニーの言葉には返事を返さず、彼らはしっかりと耳を澄ます。
―――――皇國―――――侵――――始する――――備
かすかに聞こえたこの聲に、彼らは相を変えて皇王にぶ。
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「市民に避難命令を出せ! この國は既に囲まれてる! 幸希! 全力で防魔法を展開しろ! この國の壁を最外にしてドーム型に魔力障壁を作れ! 絶対に誰も殺させるなよ!」
「わかってるよ!」
幸希は全力で防壁を作り上げる。
皇國すべてを覆いつくすほどの障壁を作り上げるなど前代未聞である。
もちろん幸希だってこんな荒業はこの世界に來て初めてである。
「だからって、簡単に諦めるわけにはいかんのよ……ッ!」
幸希のから魔力がごっそりと抜け落ちる。
魔力を皇國の地下に流し込み、皇國の下に眠る魔力溜まりを経由して地下に巨大な魔法式を展開しようとしているのだ。
 魔力溜まりとは、人や魔が発した魔法の殘骸―――――通稱、塵魔力とよばれるものや、生が無意識に放出している魔力が地面に染み込み、自然界に還る量よりもオーバーしてしまった魔力が溜まりに溜まったもののことを指す。
基本的には害はないのだが、魔力溜まりに強い刺激を與えると逃げ場を失った魔力が暴走して大発を起こすという危険でもある。
幸希は自由時間に調べて知ったこの魔力溜まりに目を付けた。
自分の【魔力作】レベルなら、もしかしたらこの魔力溜まりをうまう使うことができるかもしれない、と。
幸希のこの考え方は間違ってはいない。いままで數多の魔法師たちがこの魔力溜まりの処理を考え抜き、思いついた最善の策と同じなのだから。
だが、たとえ同じとはいっても、今まで功した者はいない。
當然である。
今更ではあるが、【魔力作】は基本的にだれもが習得するスキルではあるが、実際にはそこまでレベルは高くはない。
なぜか。それは今まで【魔力作】というスキルが重要視されていなかったからである。
この世界で【魔力作】というのは、魔法を使うための最初の起剤という意味しかみられていなかった。
もちろんこれは魔力溜まりを研究していた者たちにも當てはまる。
研究者が【魔力作】の重要に気付いたときにはもうすでに遅かった。
【魔力作】などの基本中の基本であるスキルは、若いときほどスキルレベルが上がりやすい。
逆に言えば、年をとればとるほど単純なスキルはレベルが上がりにくいということである。
その點、召喚者の一人である幸希はクラスの中でも【魔力作】・【魔力開放】・【魔力吸収】はトップクラスだったのである。
え? 海崎晃は? あいつは例外である。あれはもう人間ではない。
まあ、それはさておくとしても、幸希ほどの実力であれば、魔力溜まりを利用することは可能かもしれない。
だが、それにも限度というものがある。
今回幸希が利用しようとしているのは、発すればおそらく帝都にまで被害が及ぶほどの魔力量である。
失敗すれば何萬もの人が被害に遭う。
功と失敗のバランスが違い過ぎるのである。
まあ、だからといって――――
「失敗するつもりは微塵ないがなァァァ!!」
幸希はどこか恐怖心を持っている心を叱咤しながら、【魔力作】を全力で使用して魔法式を完させる。
やがて帝國の魔法が飛んくると誰もが諦めかけたその時、皇國を覆う明な壁が出現した。
「はぁはぁ……。俺が編み出した盾壁、壊せるもんなら壊してみやがれ」
幸希は肩で息をしながら、自分が作り上げた盾が上手く作していることに満足している。
南海は今にも倒れそうな幸希に労った。
「よくやったな幸希。流石は私の未來の旦那様だ」
「そう思うならもうし俺に優しくしてもいいと思うんだよね」
「殘念ながらそれは無理だ。お前を甘やかすとすぐに調子に乗るからな」
「むぅ……」
今更ではあるがこの二人、実は婚約者であったりする。
南海の家はもう既にご存知の通りであり、幸希の家は日本の中でもかなり有名な資産家である。
刎と海城との仲の良さは有名なものであり、學校でも結構噂が立っているのである。
「さて、とりあえず帝國の連中の攻撃は抑えられたけど、このままじゃジリ貧だな」
「そうだな。一歩でも外に出たら蜂の巣、遠距離攻撃じゃ大した攻撃はできない……あっ」
「どうした?」
「いるじゃねぇか一人だけ! 弓道部で全國優勝までしてて遠距離攻撃に関してピカ一の奴がさ!」
「ああ、もしかして咲のこと言ってのんか?」
幸希と南海が話す先という人について紹介しよう。
音坂 咲。
晃や幸希と同じクラスメイトで、活発なである。
弓道部に所屬しており、その腕は全國優勝するレベル。
ルックスが良いことと、そのさっぱりとした格から男子子共に高い人気を得ている人である。
「確かにあいつならこの狀況を打破できる可能はあるな」
だが、と南海は続ける。
「あいつは見た目以上に相當參ってるはずだ。いくら元気で活発な子だといっても本質はただの子高生だ。私が住んでいた人種とは違う」
幸希には南海が何を言いたいのかがわかっているようだ。
「ようは人を殺す覚悟が出來てないって言いたいんだろ?」
幸希の問いに南海は靜かに頷く。
「あいつは自分ならできると自分自に言い聞かせてる。そんなやり方じゃいつか本當に壊れちまうよ」
南海の、妙に実の籠った言葉に、幸希は口を噤んでしまう。
「まあ、とりあえずダメ元で頼んでみるとするかな」
重たくなった空気を払拭するような南海の様子に、幸希は何も言い返さなかった。
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