神の加護を持つ死神》の護衛 3

朝早くに出たこともあり、予定では晝前に港に著くらしい。

……今から港に行くのも理由がある。分かる奴には分かるかもしれないが、地球で言うオーストラリア大陸が妖族が住む場所である。

そして今俺たちがいるのは、地球で言うところのユーラシア大陸辺りだ。分かると思うが、もちろん間には海が挾んでいる。

つまりは、ここから妖族が住む場所まで行くには、海を渡らないといけないのだ。

また、船乗るのかよとも思うが、費用は全て向こう持ちであるので、良い事には良いのだろう。しは我慢しないとな。

「と言いましても、船に乗るのは前よりも短いですけどね」

「そう言うこと言うなって。まぁ、長くてもそれはそれで飽きそうだし、良いんじゃね?」

「そうですね。アル様とかは、もう飽きたとか言われて自分だけで飛んで行かれそうですしね」

「地味にありえそうで、怖いわ。そんで迷子になったとか言ってるんだろ」

念話で「助けてなのじゃぁー」とか泣きつかれそうな気がするな。まぁ、助けはしないけど。……本當にヤバそうだったら、助けに行ってやるが。

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アルに限ってのヤバそうな事ってどんな事だろうな?

もう、それこそこの世界が終わるとかそう言うレベルなのだろう。

……そんな事が起きないと言う事を願わなければ。

「今、どれぐらい進んだ?」

なんとなく、ソラに聞いてみた。行っても出発してからはまぁまぁな時間が経ってはいるはずだ。アルとヘーニルが部屋に戻ってからで考えても、十分な時間が過ぎている。

……なので、ある程度は進んでいるだろう。

出來れば、もう港とかそいうのだったら良いんだけど。

「なわけないですよ。まだまだ先ですよ、港は」

「マジか……」

「はい。お暇でしたらキラリ様も寢てらっしゃても構いませんよ?」

「……そう言いながら、膝をポンポンしているのは何故なのか聞いてもよろしいでしょうか?」

椅子の上なのに無駄に綺麗な正座をされているソラさん。そして膝の上を、まるでここに頭を載せろとか言っているかのように、ポンポンとしている。

……まさかだよな?

「そのまさかですよ」

「いや……流石にそれは……」

なんというか……膝枕は流石に恥ずかしいぃ。

「人の姿見て興されている方がこれぐらいで弱るのですか?」

「その誤解を生むような言い方はやめてください。……いや、マジで」

「早くしてください、キラリ様」

「いや、だから俺はしないって……」

「早くしてください。それとも……私では……だ、ダメですか?」

「よろしくお願いいたしますっ!!」

「ふふふ。良ろしいです」

うーん。これは、完全にやられたな。

あそこまで、可くお願いされて飛びつかない男などいないだろう。そいついたら、ちょっと俺の前まで出てこい。俺が矯正してやる。

「正常な狀態に戻すのを矯正というのですよ? どちらかと言えばキラリ様が矯正されるべきですよ?」

「うっ……!?」

「まぁ、キラリ様はこのままでも大丈夫ですよ」

「え?」

なんか、いつもとは違う優しい聲で……いや、いつも優しい聲をしているのだけれども、いつもよりも優しい聲でソラは俺に言う。

……やべぇー。俺今めちゃくちゃドキドキしてる気がする。

「私がしっかりと責任を持って矯正しますから」

前言撤回ッ!! 優しい聲でもなんでもなかった! ただ単に仕向けられたのだ!

ドキドキとかある意味、今まさにめっちゃしてるよ!!

怖過ぎて、心臓破裂するかって言うぐらいドキドキしてるよ!?

「ふふふ。冗談ですよ」

「冗談でも怖過ぎるわ!!」

「そこまで驚かれるとは思ってもいませんでしたから」

「そうか……って、絶対に分かってただろ! 人の心毎回読んでるじゃねぇか!」

「バレました?」

「バレるわ!!」

……今度からはソラの言葉はもっと慎重に聞いたり返したりしよう。……って言ってもまた同じ様な展開になりそうだけど。

気を付けておけばなんとかはなるだろう。

……ならなくても気を付けておくことは大切だ!

「それがずっと続いていたら良いですね」

「すぐ終わる様な言い方やめてくれるかな!」

「キラリ様ですし……三日坊主ならぬ一時間坊主になりそうな気がして」

「なんだよ一時間坊主って……。流石に一時間はねぇわ」

俺でも一時間で忘れると言うことは流石にない。……ないよな。

それに、前にソラかアルか……もう誰も良いが、俺は鍛錬を毎日するって言った時に絶対に続かないと誰かが言った時があった。しかし、今現在も、毎日鍛錬は続けている。

忙しい時であっても、その間に出來る様な鍛錬を続け、そして今日までそれをずっと続けて來た。

ふっ、俺はやれば出來る子【YDK】なのだよ!

「YDK……そう言う意味ですか。これを考えた人はし馬鹿だと思いますよ?」

「そう、真顔で言わないでくれるかな……。そりゃソラから見たら誰でも馬鹿だろうけれども……」

「いえ、そう言うことではないです」

「じゃあ、どいうこと?」

ソラが賢いから、この【YDK】を作った奴は馬鹿だと言いたいんじゃないのか?

それとも、こんな事考えるぐらいなら、初めからやれよとかそう言う意味なのだろうか?

やれば出來る子だしな。じゃあ初めからやっとけっていう話だ。

「それもございますが……」

「いや、あんのかよ。てか、これ以外って?」

「【YDK】というのがキラリ様を表す文字であるなら、やれば出來る子ではなく……やる気がない、デリカシーの欠片もない、きしょい、とかではないですか?」

「俺の悪口じゃん!? それ!! きしょいとか思ってたのかよ!」

「思ってませんって。……やっても出來ない子? とかも良いですね」

「だから、それも悪口だっつっての!!

「あっ、分かりました!」

ソラはいつもでは考えられない様な、とびっきりの笑顔を上から俺に見せてくる。

この膝枕の狀態だと、良く顔が見える。……若干しだけだが、ナニかに隠されてるけど。

……ここから見てもわかるが、形綺麗だなぁー。

「…………」

ソラの顔が笑っているのに、一瞬怖くじた。

いらないことは言わないでおこう。

あっ、戻った。

まぁ、良い。というか……これがソラの悪いことを思いついた時の顔なのか……。

……可過ぎて注意できないだろうが!

仕方ない! 聞きたくもないが聞いてやるよ!

「それで、何を思いついたんだよ?」

「やばい だるい キラリ様!」

「もう、お前黙ってろよ!」

誰か、この子を止めたあげてくれ……。

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