《神の加護を持つ死神》聖の護衛 9
ーー數時間ほど前のこと
俺たちと聖の間にり護衛たちが壁の役割をした時。
聖は並ならぬ速さで、俺の手元に紙切れを置いた。それも壁の役割を果たしている護衛に全く気付かれず。
まぁ、それをアルとかは気付いていたが。
そもそも、神を欺こうとする方が間違ってはいるのだが。
そして聖、護衛の順番に船に乗り込んでいった。俺たちも後を追いかけていく。
部屋に案され、アルたちがまだ部屋に來ていない時。
俺はベッドの上に座り、半分に折ってある紙切れを開いた。だが、紙切れには何の文字も書いていない。
いわば白紙であった。
し考えたが、何のアイデアも浮かばなかったので、ソラさんに尋ねることにした。……と言っても、本の方ではなく、俺の中にまだ住まれているソラの方だが。
『これが何か分かるか?』
『はい。これは魔法紙と呼ばれるものです。魔道の一種で、魔力を流すと、められた文字が見れるという代です』
『サンキュー』
超優秀ソラさんに聞いて、これが何かが知れた。
……そうか、魔力を流すと文字が見れるんだな。なんか、地球で言うブラックライトを使って見るやつみたいだな。
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俺はあれ使ったことないけど、父さんの仕事関係であれを使っていたのを知っている。なんでも、あれは外國人には知られてないから便利とかなんとか。
だからって、子供が使うような百円ショップのを使うのはどうかと何度も思ったりはしていたが。
父さんの馬鹿話は良いとして、さっそく何が書いてあるか見て行こう。
紙切れに魔力を流すんだよなぁー。
「ふぅーーっ!」
魔力が俺から出て行くのが分かる。紙切れにどんどん魔力が宿って行く。
紙切れには金の線みたいなのがどんどん引かれて行く。やがてそれは、文字に変わっていった。そして數秒後。その現象は止まった。
『夜 私の 部屋に 來て ください』
そう紙切れには金の文字が刻まれていた。何故か文字が途切れ途切れになってはいるが、金の線みたいなのが関係しているのだろうか。
多分、これうみたいなじなのだろう。途中で切れているのは、線の長さが足りなかったから。
……意外とデリケートっぽい魔道だな。
『本のソラに連絡をしましょうか?』
『いや、大丈夫だ。適當な時間に抜け出す事にするわ』
『かしこまりました』
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ソラに連絡したら駄目ってことはないが、なるべくしない方が良い気がした。
もしかしたらアルとかにまで伝えそうだったから。その辺は配慮してくれると思うけど、念のためな。
というか、それでもしアルとヘーニルに伝えられたら厄介だ。
特にアルの方。
絶対にからかってくる。もしくはなんか怒ってくる。
……良く覚えておけ。ってのは理不盡な生きなんだ。
良くわからないが急に怒って來たりするんだぞ。
もっと言えばあの、のじゃロリババアは特にだ。理不盡の塊とさえ言えるだろう。そしてあいつの力は半端じゃない。怒って毆られたら一発でゲームオーバーだと思った方が良い。
『キラリ様のHPであれば一発ではゲームオーバーにはなりませんよ』
『余計なこと言わない!』
『かしこまりました』
こっちのソラさんは昔の堅苦しいままなんだ。
その所為で気遣いとか一切ないんだよ。こういう事も普通に言ってくる。
……まぁ、これはこれで可いし良いんだけど。
するとコンコンという音が扉から聞こえて來た。
「開いてる」
そう言いながら、俺は扉に施錠ロックを掛ける。
扉が開かれようとしたが、一向に開きはしない。もちろん、俺が施錠を解かれる度に掛けているからではある。
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これは言わば、俺とアルの戦いである。
どちらかが手を緩めたら負けである。
ーーと思ったその時
「ふっふっふ。こういう手もあるのじゃぞ」
そんな腹立たしい聲が後ろから聞こえてくる。
……あぁー、結界張るの忘れてたわ。
転移で勝手にられたな。
「そうじゃよ! キラリよ、つめがまだまだ甘かったのじゃな」
「はっ、お前の方が甘いんじゃねぇのか? 下見てみろよ」
「下? ……これって!?」
「ふっ、あばよ」
俺の言葉と同時に、アルの足元に設置していた設置型の魔法陣が起する。
アルが逃げようとしているが無意味だ。
俺の方が速い。
眩いとともにアルの姿は消えた。
今頃、空から海に落下している事だろう。しの間は靜かになったはずだ。
ーーコンコン
また扉から音がする。だがさっきと比べると優しい叩き方だ。
……まぁ、良いだろう。
「今開ける」
そう言いながら、施錠を解く。
「開けたぞ〜」
「りますね」「るぞ、主人」
ソラとヘーニルが扉を開けて、部屋にってくる。
「アル様はどうしたのですか?」
ソラがそこまで不思議ではなさそうに聞いてくる。……分かっているのだろうけど、まあ良いか。
「飛ばした」
うん。噓ではない。
「……まぁ、良いです。アル様であれば何があろうと大丈夫ですしね」
「だな。それにもう戻ってくるようだしな」
「……もうしぐらい遅くても良かったんだがな」
超スピードでこの船、というかこの部屋目掛けで突っ込んでくる何かがいる。
……あんなスピードでぶつかったら確実にこの船が反で沈む。
ったく、そういう事考えて行しろや、あいつ。
「ーー多重結界発」
範囲はこの船。
まぁ、しぐらいはアルのスピードも落ちるだろう。
なんて言ったて、俺の結界が百枚以上は張っているのだからな。
こんなのこの地上の人間だったら誰も破れないレベルだぞ、これ。
……まぁ、アルを止めるなら気休め程度なんだろうけど。
ーーバンッ、バンッ、バンッ
という音が外からえげつない數聞こえてくる。
……気休め程度とは言ったけれども、あんなに簡単に俺の結界が破られて行くと、し悲しくなってくる。
……まぁ、俺は結界張るのが本職じゃないし。そんなに強い結界が出來なくてもおかしくは無いよな。
……なんか、言ってて悲しくなって來た。
「そろそろだぞ」
「分かった」
今は悲しんでいる場合ではない。
「ーー空間転移魔法 発ッ!」
指定はアルのいる場所。転移先はここに。
すると「どふっ」という子とは思えない聲が聞こえた。
自分で転移されると分かったのか、スピードを無くした様だ。おで、部屋の天井あたりからベッド目掛けて落ちて來たけど。
「いたたー……もっと優しくするのじゃ、キラリ」
「転移に優しくってなんだよ……それとあんなスピードで來るお前も悪い」
「外に飛ばしたキラリの方が罪なのじゃ」
「ぐっ……!」
確かにアルの言う通りではあった。
「キラリ様もアル様もおやめください」
「「あっ、はい」」
ソラには俺もアルも敵わなかった。
まぁ、そんなじでゆっくりとした船の旅を俺たちは楽しんだ。
ーーそしてアルたちが部屋から出て行いった
分かりやすい行為だったが、ありがたくけ取っておく。
今から聖の元に行く。
あの紙切れに書いてあった、言葉。
『夜 私の 部屋に 來て ください』
だが、これは本當に伝えたかった文では無いのだろう。
その空白の部分。
ただの魔力を流すだけでは何も浮かばない。
だが、ここに神力。いわゆる神の力。それも神の力を流すと、ある文字が浮かび上がる。
俺の中にいるソラさんが本に連絡しようとしていたのはこの文ではなく、もう一つの隠された言葉であった。
この空白の部分には、
『た す け て』
という言葉が浮かび上がったのだ。
俺は腰に剣、それに銃を裝備する。ケーレス・ローブをに纏う。
……では、聖の部屋にでも行くとしましょうか。
◇◆◇◆◇◆
この船の中で一番豪華な部屋。
そこに聖はいた。
と言っても、普通にいるわけでは無い全く無い。椅子の後ろに手を回され、縄で椅子と括られ、足も縄で固定されている。
口には猿轡がされ、きが取れない上に、喋ることさえ許されていない。
だが、通常の縄であれば、聖の力を持ってすれば簡単に千切ることさえ可能である。
それは、普通の縄であった場合だが。
縄は拘束用の魔道であり、解こうとすれば、どんどん締め付けられて行くという代だ。
聖にはそれが分かっていた。
だから、初めから抵抗などしなかった。
「隊長! こっちにもありませんでした!」
「こちらの部屋にも置いてありません!」
「こちらにもありませんでした!」
ベットの上に、足を組みながら座る隊長と呼ばれる男に、裝備を著込んでいる若い者達が口々にそう言う。
聖が與えられている部屋には十を超える部屋がある。
そう簡単には目當ての代が見つからないと踏んではいたが、いざそうなると隊長と呼ばれる男は苛立ちを隠せなかった。
それが分かり、男に報告をしていた者達の顔はどんどん悪くなっていく。
彼等は知っていたのだ。この男が苛立ちを覚えた時、人に當たると言うことを。
その証拠に、男が一番近くにいた若い男に蹴りを與えた。
それはただの蹴りであった。
しかし、若い男は凄い風を切る音を出しながら、部屋の端まで飛んで行った。蹴られた者の裝備は、蹴られた場所を中心とし、々になっている。
若い者達の顔はどんどん青ざめて行く。それもそうだろう。たった一発の蹴りでこれなのだ。まとまなのを喰らえば、死は間逃れないだろう。
「も、もう一度探して來ますっ!!」
そう若い者達が口々に言うと、ダッシュで部屋へと戻って行った。
「ちっ……」
男は舌打ちをし、橫にあったタンスをおもいっきり蹴ると、どすっという大きな音を立てながら、またベットの上に踏ん反り返った。
そして、何を思ったのか、一人の若い男を呼んだ。
そしてその若い者に命令をくだした。命令通り、若い者は、聖に付けられている猿轡を外した。
「はぁはぁはぁ……一何を…はぁ…探しているのですか……護衛隊長」
彼はそう言った。あの踏ん反り返っている男が護衛隊長だと。そうなると、若い者達が護衛の者達であるとわかる。
だがしかし、何故聖を護衛するはずの者達が聖を襲っているのか。
そんな疑問が多々しれない。
「ふっ。冗談はよしてください、聖様」
「黙れ。貴様に聖などと呼ばれたくないわ」
「ふっ、こんな狀況でも威勢が良いですね。……まぁ、折角ですから最後の・・・お話でもしようじゃないですか」
そう言いながら、他の護衛の者達から、用意されていたグラスにっている真っ赤なワインをけ取る。香りを楽しむように、してから口をつけた。
そして、ベットの橫にあるテーブルに置いた。
「素直に伺います……アレはどこにあるんですか?」
「ーーっ!?」
その言葉に過剰な反応を見せる聖。
その反応も仕方がなかったのだろう。だって、それは護衛の者達にでさえ言っていなかったのだから。
「何故、貴様がそれを知っている!」
「……まぁ、良いでしょう。貴方には言っても。どうせ死にに行く者なのですから」
「さっさと答えろ! アレン!」
「その名で呼ぶのはやめて下さい、聖様。そう呼ばれると……今すぐにでも貴方を殺してしまいそうですから」
ーー狂っている
そう聖は本能的にじた。護衛隊長アレンの言葉にはそうじるしか無かった。
そして、もうひとつ思うことがあった。だが、それは何かが思い出せない。
「失禮しました。それとその名で呼ぶのはやめてくださいね? ……なんで知っているか? でしたよね。そんなの簡単ですよ」
護衛隊長は息をする間なく、答えた。
「魔族と手を組んだからですよ」
「ーーッッ!?」
「驚かれるのも無理は無いです。私だって初めは手を組もうなんて言われて、驚きましたから。聖が持つが世界の運命を左右するだったなんて、ねぇ?」
聖は何も答えない。
いや、答えれなかった。これ以上何かを喋ってしまっては駄目だ、と自分の中の本能的が伝えている。
「それは貴方が持っているには惜しいだ。そしてアレを魔族に渡した暁には、私は!」
「アレはお前が思っているようなではないのだぞ! アレが魔族の手に渡れば、人間族は滅びる! それでも良いと言うのか!」
「えぇ。私には関係ないですからね」
當然のごとく護衛隊長は言った。
その言葉から続けるように言う。
「契約で私たちだけは助ける様になっている。だから! さっさとアレがある場所を教えろ」
ーーもうおふざけは止めた。という様に聖に使っていた敬語を止める。
そして、その覚悟が聖にも伝わった。……だが、
「嫌だ……と答えたら?」
「そんなの私の學に反しますが仕方ない。……無理矢理聞き出すまでです!」
そう言いながら、護衛隊長はいた。
ーー聖のにれようとする
聖は現実を見るのが嫌と思ったのか、目を瞑る。
そして、もうれるという瞬間。
ーーそれは何者かの手によって防がれた
「すまん。し遅れたわ」
「き、キラリ様ーーッッ!?」
キラリは聖と護衛隊長の間にり、護衛隊長の手を摑んでいた。護衛隊長は手をおもいっきりかそうとしていたが、一切その場からかない。
それどころか、キラリの手を摑む力がどんどん強まっていく。「ぁあぁあ"あ"っ!!」という痛さからくる聲にもならない聲が部屋に響く。
その聲で気付いたのか、各部屋から護衛隊長の命令に従っていた者達がぞろぞろと出てきた。
キラリもまたその聲から、自分がまだ手を摑んでいるという事を認識した。
「あっ、悪い。完全に忘れてたわ」
そんな呑気な事を言いながら、キラリは手を離す。
護衛隊長の離された手は人間の手とは思えない手をしていた。手首の辺りは手形の痕が見て分かる程、に手に沿って凹んでいた。
護衛隊長はキラリを睨む。
そんな事を気にしないとばかりに、キラリは後ろを振り向き、聖と顔を合わせる。
「し下がっててくれるか?」
「分かりました」
聖が後ろに何歩か下がる。キラリはそれを確認すると、護衛隊長やら他の者がいる方向に振り返った。そして悠然とした表で言葉を放つ。
「ーーじゃあ俺とやりあおうか……クズども」
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