《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》017 ~エルフの里~
數多の枝葉にが遮られ、薄暗くなった森の中。
俺は道とも呼べないほど荒れ果てた林道を、ひたすら駆けていた。
『フィリ! エルフの里まであとどれくらいだ? そろそろ近くまで來てると思うんだが?』
背中にいる、ついさっきばかり夢の世界から戻ってきたエルフのへと問う。
『ん。もうすぐ。それにしてもロウはすごい。寢てる間にもうこんな近くに來てた』
『まあな。 かなり頑張ったぜ(分βが)』
そう、俺はフィリの案(寢ていたが)で現在、エルフの里の目と鼻の先まで來ていた。
早く、つかねーかな。
エルフの里、楽しみで仕方がねぇ。
だが、そう簡単に行かしてはもらえないらしい。
それは、林道に立ち並ぶ木の中で、幹の廻りに印の付いた木の前を通った時だった。
ん? βの反応が消えた?
やられたのか。
これは、ちょっとやばいかもな。
ここまで、魔獣の襲撃なんかは殆どなかった。
そして、あったとしてもその全てがβによって瞬殺されてる。
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つまり、そのβがやられたということは、それだけ強え魔獣が近くにいるということだ。
要警戒だな。
その時。 【危険察知】が反応した。
『フィリ! 摑まれ!!』
『っ!! ん!』
フィリが俺に捕まったと同時に急ブレーキをかけ、後方へ大きくジャンプ。
ズーーーーン!!
著地して振り返ると、さっきまで俺達がいたところが、大きく凹へこんでいた。
あ、危ねぇ。
【危険察知】がなかったら今頃ぺしゃんこだ。
「ちっ、避けやがったか。やるじゃねえか」
ハスキーボイスが聞こえた方────上空へ視線を向けると、
異形が飛んでいた。
蝙蝠こうもりのような一対の翼に、鋭く尖ったクチバシ、大きさは背が低めの大人ぐらいか。 は灰に近い。
そして、俺へと向けられたあの鋭い目、俺には分かる。
あれは強者の目だ。
世の中の酸いも甘いも噛み分けた、そんな目。
柊ひいらぎんとこのババアがあんな目をしてた。(ババアは一応俺の師匠だ)
『お前、強えな。 何者だ?』
「はっ、【念話】持ちか。 俺が何者か? そんなのは戦いの中で教えてやるよ。お前のにな」
やべえ、今のセリフ、ちょっとグッと來た。
かっけー。
男の中の男ってじがする。
相手にとって不足はねぇ。
最初っからギア全開でやってやる。
奴も同じようなことを思ったんだろう。
互いに”ニヤリ”と笑みを浮かべる。
そして、俺は”地”を、奴は”空”を蹴って接近。
そのまま攻撃作にろうとした瞬間……。
「待って、ガーゴ。この魔獣はお客さん」
「『え?』」
俺の背中に摑まっていたフィリのによって強制的に止められたのだった。
◆◆◆◆
「はっはっはっは!! いや、久しぶりに骨のある奴が來たと思ったら、そこのくそガキを、ゴブリン共から助けてくれた恩人ってわけか! そうと知らずに攻撃しちまってすまねえな」
『いや、こちらこそ。悪かった。 あんたがフィリの言ってた変な──いかした魔獣だったんだな』
そう、俺達に襲撃を仕掛けてきたこの魔獣が、フィリの言っていた変な魔獣──ガーゴイルのガーゴだった。
てっきり悪魔だと思ってたんだが、ガーゴイルか。
想像してたガーゴイルより全然かっこいい。
『ロウもガーゴも早とちり、それに軽く戦闘兇』
「『なっ!!』」
お、俺が戦闘兇!? そんな訳あるか!!
確かにゴブリンズを嬉々《きき》として殺したりしたが、それは狼っていう種族的な本能だから仕方ねぇ。
「まあ、あれだ。 元魔王軍幹部の俺の【重圧グラビティ】を避けたんだ。誇っていいぜ」
「また、それ。ウソ、よくない」
「んなっ!! だからホントだって言ってんだろ!?」
はははっ
それなんだがな~。 フィリ……
さっき【鑑定】してみたんだが
*****************************
名前 ガーゴ
種族 ガーゴイル・悪魔型アクマモデル  危険度:B+
LV:80/90
HP:5500/6000
MP:500/800
攻撃力:2100
防力:5000
抵抗力:5000
俊敏:3000
魔法力:2600
運 :50
:ユニークスキル:
【愚者グシャの波★】【重力魔法★】
:パッシブスキル:
【全狀態異常無効】【自再生】【理耐大】
:ノーマルスキル:
【魔力知】【危険察知】【石化★】【化★】【★】【飛翔★】
:稱號:
〖殺戮者〗〖ゴブリンの天敵〗〖共存者〗〖元魔王軍幹部〗 〖心優しき魔〗〖前魔王の右腕〗〖里の守護者〗
*****************************
マジモンだったよ。
マジモンの魔王軍幹部さんだったよ。
どおりで強え訳だ。
こいつ
〖魔〗の稱號があることも、その話を信憑のあるものにしてる。
魔王の配下や元配下は、知を持つ魔の、〈魔〉と呼ばれるらしい。
”心優しき”ってあるから害はなさそうだけどな。
それから、俺達はお互いのことを話しながら、ガーゴの案でエルフの里へ向かった。
ガーゴは気さくな奴で、とても話の合う奴だった。
”男”としても完璧で、尊敬できる魔だった。
そこで、彼のことを親しみを込めて”ガーさん”と呼ぶことにした。
こっちに來て初めてのマブダチだ(エルビスは戦友)
◆◆◆◆
「「ついた(ぞ)」」
フィリとガーさんにつれられ、みえてきたのは、ゲームの世界でよく見る幻想的な都市……ではなく、
寂れた里、と呼ぶのに相応ふさわしい所だった。
『ここが、エルフの里……』
「そうだ、さ、中にるぞ」
がーさんの後ろから、門だったの下を通り、里の中にる。
『んなっ!?』
そこで見た景に俺は絶句した。
元々はログハウスのような家だったのだろう。
それが今は、窓ガラスは割れ、家を構する木は腐り、立て付けられたドアは風に吹かれて開閉を繰り返してる。
今にも崩れ落ちそうだ。
土地は荒れ果て、ひび割れており、畑には穀どころか、雑草
一本さえ生えていない。
そして、道行くエルフ達は皆一様に痩せ細っており、顔はやつれて衰弱しているのがわかる。
まるでこの里の全てが”呪われた”ようだった。
「ひでぇだろ。聞きたいことはあると思うが、もうし待ってくれ。」
『ああ、わかった』
観気分なんて一気にふっとんだ。
第一、フィリ見たいな小さなの子が”木の実”探しなんてしてるんだ。
里の狀態がまともなわけねぇ。
がーさんの案で、里の奧へ進む。
その道中、幾つもの視線をじた。
それも好意的ではない方の……。
最初は、俺に向けられた視線かと思えば違った。
かと言って、がーさんでもない。
視線は俺の背中にいる、”フィリ”に向けられていた。
ここで俺は、周囲を見渡して視線の正に気付く。
里のエルフ達だ。
窓からこちらを見ている者、すれ違いざまに視線を向ける者、あからさまに負のを乗せた視線を寄越す者。
その全ての視線がこう言っていた。
──お前が憎い!!
ゾッとした。
なんでだ? 何故、同じ里の仲間にそんな目を向ける?
『なあ、フィリ? お前──「ロウには関係ない」』
靜かで、それでいて有無を言わさない言葉。
そして、その言葉の後に続いた、か細い聲を俺の【聴覚上昇大】によって強化された耳が拾った。
「知られたくない」と。
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