心地よい鳥のさえずり、周りを取り囲む深緑の木々、所々に木れ日が落ちる薄暗い森。

────あ～、こういう森を求めてたんだよ

今、俺はガーさんとフィリと供に、〈アヴァロンの実〉を求めてこの森の主の住処”南の森”を目指している。

「ロウ、なんか気持ちよさそう」

「だな。まあ確かに、西の森から來たんだ。あっちの森は生い茂った木でほとんどが屆かねえからな。そう思うのもしかたねえ」

そう、実はエルフの里には二カ所の出り口があり、1つは俺が里にるときに使った西門、もう一つは今朝俺たちが里から出るのに使った東門だ。

そして、ここ〈サハラの大森林〉はエルフの里を中心に東西南北に森が區分されており、俺たちが今いる東の森は、西の森と違って木々が茂り過ぎておらず、しっかりと空が拝めるのだ。

で、ここで気になる事が1つ。

『なんで、フィリは西の森に居たんだ？』

俺の背中に搭乗しているフィリのが”ビクッ”となる。

通常、主ぬしがいる南の森は、東門から出て、東の森経由でないと行けないらしい。

それが、フィリは西の森でゴブリンズに襲われてた。

と、考えられるのは……。

「出る門……間違えた」

蚊の泣くような聲をポトリとこぼし、俯うつむくフィリ。

まあ、俺には聞こえるんだけどな。

「いいじゃねえか。フィリ、お前が門を間違えなかったらロウと會えなかったかもしれないぞ？」

俺に並行して木々の間をくぐるように飛んでいるガーさんが的確なフォローをれる。

さすがだ。　ガーさん!

『そうだぜ、フィリ。俺もお前に會えなかったら今頃、あの鬱蒼とした西の森を延々と彷徨さまよってたはずだ。ありがとな。フィリは俺を助けてくれたんだな』

「……ん。私、偉い」

俯うつむいてた顔を上げてドヤ顔をするフィリ。

ふっ、チョロいな。

所詮、子供。おだててやれば、途端に元気になる。

そんなやり取りをし、森を進みがてら、俺は昨日のスフィアとの會話を思い出す。

────〖忌み子〗、か。

森で、フィリのステータスを見たとき。

その稱號を目にしたときから、予はしていた。

ただ、それがどういう予なのかはわからなかった。

でも、それが昨日の話でそれが確信に変わった。

────俺たち兄妹とフィリは同類だった。

生まれつき、髪のが違う。

目のが違う。

それだけで、周りから拒絶される存在。

だから、フィリに同した。

してしまった。

それが、その同がなによりもつらいことを、同類の俺が誰よりもわかっていた筈なのに。

スフィアの話を聞いたとき、自分に同の芽が出たとき自分に酷く腹が立った。

あの時の殺意は、里の連中だけに対するものじゃない、俺自への自己嫌悪も含まれていた。

”同”ほどたちの悪いはないと思う。

嫌悪や忌避、畏怖等は、こちらにマイナスな悪しか抱いていないため、突っぱねる、無視する、といった行が取れる。

だが、同は違う、半ばこちらのことをを考えてから抱くため、そこには純粋な悪はなく、哀れみ、悲哀、期待、勵ましなんかのがそんなかには好意さえ混ざり合う。

だから、こちらも気を使う。好意を無下にする事は出來ない。

そうして、同されることが辛つらくなっていく

違う、そうじゃない。

同なんていらない。

俺達は一人の、普通の人としてみられたいんだ。

俺には、ババアや天哉、柊、菜といった理解者がいた。

だから救われた。

でも、フィリにはいない。

あのガーさんやスフィアでさえ、フィリを”かわいそうな子”としてみている。

里の連中は論外。

だから、俺がなる。

フィリの、唯一の理解者に。

そして、フィリを救う。

そのためには……。

「ロウ、元気ない?」

俺がしばらく黙ったままだったからか、心配したフィリが俺の顔をのぞき込んできた。

『うおっ!　いや、大丈夫だ！　よし、スピードあげるから摑まれ!!』

「ん──キャッ!?」

そうして、時々出て來る魔獣どもを、分βやガーさんが滅しながら、南の森を目指して駆けた。

◆◆◆◆

日が暮れて、辺りが暗くなったころ、俺達は南の森のり口にたどり著いた。

「よし、なんとか日沒には間に合ったか。夜の森は危険だ。今日はここらで野宿するぞ」

「ん、わかった」

『おう！』

ガーさんの提案をけ、俺達は野宿を開始する。

周りの木へ、退魔屬を付與した短剣を數本、【空間魔法】で取り出して、突き刺す。

これで、魔獣はここによってこれない。

安全なキャンプ場の完だ。

一瞬、ガーさんが大丈夫か気になったが、視ても平気そうだったので大丈夫何だろう。(し退魔の効果を疑う)

続けて、格納庫から今朝、里でスフィアからもらった干しを取り出す。

と、早速フィリがかぶりついた。

余程、腹が減ってたみたいだ。

「にしても、【空間魔法】って便利だな。攻撃にも持ち運びにも使えるなんてよ。反則だろ」

木の上から周囲を警戒していたガーさんが降りてきて言う。

道中にガーさんとフィリと1部のスキル容は換しあった。

連攜が大事になるかもしれねえしな。

『まあな、でもそれをいったら、ガーさんの【重力魔法】も大概だと思うぜ？』

ユニークスキル【重力魔法】は、指定場所の重力を自由に弄る事が出來る。

重力を大きくする【重圧グラビティ】と重力の塊そのものを打ち出す【重力球グラビティボール】等が使える。

特に、【重圧】は強弱や範囲設定が自由で、相手の周りの重力を小さくして、行の阻害をしたり、広範囲を押しつぶす事も出來る。

「まあ、伊達に魔王軍幹部なんてやってなかったからな。腕っぷしも強くねえとなめられちまう」

ガーさんは【】も強かった。を部分的に【石化】【化】させて、近づいてきた魔獣を片っ端から一発KOしていた。

「ロウ、私も頑張った。譽めて」

そこで、食事を食べ終わったフィアが、トレードマークのアホをフリフリしながらり寄ってくる。

表に出にくいがアホに表れているようで、ちょっと面白ろいな。

『おう、フィリも凄かったぞ?ドカーンってな』

言いながら、頭を球付の前足でででしてやる。

フィリのユニークスキル【風炎魔法】も凄かった。威力が大きすぎて、細かな攻撃はしにくいみたいだが、空中の蜂の魔獣の群れを、〈風〉という、風の発で一網打盡にしていた。また、〈風刃ウインドカッター〉という風の刃を飛ばす技や、〈竜巻ストーム〉という広範囲技で森ごとなぎ払ってた。(恐ろしい子)

──パチパチッ

火のがはじける音と共に、周囲がし明るくなる。

「やっとついたぜ。久しぶりだったから手間どっちまった」

どうやらガーさんが火をおこしてくれたらしい。

ガーさん特製のたき火を取り囲むようにして、俺達は地面に座る。

「さて、明日も早いし、しっかり寢ろよー」

と言って、ガーさんはいびきを立て始める。

寢るのハヤッ!?

そのうちガーさんも稱號に〖眠り姫〗ってつかねーだろな!?

そんなガーさん俺は認めん。

だが、ガーさんが早く寢てくれたのは俺にとって好都合だ。

俺は、道中に考えていた事を実行するべく、フィリへ聲をかける。

『なあ、フィリ。大事な話がある』