《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》021 ~大事な話~
俺の聲音が変わった事で重要のある容だと察したようだ。
フィリが寢ぼけ眼にを燈して、こちらを見上げる。
「ん? 大事な話?」
『ああ、大事な話だ』
「ガーゴ。起こす?」
『いや、大丈夫だ』
ガーさんにはあまり聞かれたくない。
深呼吸を2回する。
正直、この話をした後、フィリとの関係がどうなるか予想が全くつかない。
だけど、しなくちゃいけない。
今。
『実は、フィリと里の事を聞いた』
誰に聞いたとは言わなかった。
「っ!?」
途端、をビクッと震わせるフィリ。
一見、無表に見えるが、彼の寶石のように澄んだ目には、普段顔に出さない狼狽の表がうかがえる。
しばらくお互いに見つめあったまま無言の時間が続く。
1秒がとても長くじる。
やがて、フィリが口を開く。
「ど…う……思った?」
必死にから絞り出したような聲だった。
目には怯えのが浮かんでいる。
『同じだと思った』
「同……じ?」
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多分、誰にも言われたことがなかったんだろう。
困のが、たき火の燈りに照らされた顔に出る。
『ああ、同じだ』
答えてから空を見上げる。
丁度、月が雲に隠れる所だった。
隠れた月を目で追いながら、これからのことを脳でシミュレートする。
どうやっても、フィリが泣き顔になる未來しか浮かばねえ。
だけど、これは絶対にフィリには教えないといけない。
やらないと、フィリは救われない。
上げていた顔をフィリの目線に戻す。
『フィリ、聞いてくれ。俺は────転移者だ』
「テン、イシャ?」
聞き慣れない単語に首を傾げるフィリ。
困のが深まる。
『ああ。元々、俺はこの世界とは別の世界の住人だったんだ』
「別の世界? 何のこと?」
『まあ、聞いてくれ。俺は子供の頃───』
俺がフィリにすると決めた話、それは俺の過去のこと。
フィリの理解者になる。
それには、俺だけがフィリの(過去)を知っているだけじゃダメだ。
俺の(過去)をフィリに知って貰う。
それで初めて俺とフィリは対等な関係になれる。
”理解者”はお互いにフェアじゃないとな。
それから俺は、前の世界では人間だったこと。
銀の髪のせいで親に捨てられたこと。
クラスメイトや妹の事。
そして、この世界に來てからのことから、サハラのことまで。
包み隠さず、全てを話した。
「ロウが、人間? 妹? 邪神様? 分からない……ロウの言ってること分からない、分からない分からない分からない───」
壊れたラジオみたいに”分からない”を繰り返し言葉にするフィリ。
まあ、いきなりだし混するだろうな。
『全部本當だ。だから、”お前の気持ちも分かる”』
瞬間、混を口に出していたフィリが時間が止まったかのように直する。
數秒後、フィリの口からでた言葉には僅かに怒気が孕はらんでいた。
「噓……言わないで」
『噓じゃない。”お前の気持ちは分かって───』
「わかって──ない!!!」
突然の怒聲。
始まったか……。
「わかってない!! 分かるはずない!! 姉さんにも、ガーゴにも分からなかった。わかって…くれなかった!!! なのに、出會ったばかりのロウに……わかるわけ無いっ!!」
それは、普段表の変化に乏しいフィリの、溜まりに溜まった心の聲。
の暴走だった。
本來、俺達みたいに疎まれ続けた人間に対して、軽率な”お前の気持ちは分かる”宣言はタブー、句だ。
だが、俺はわざとフィリの心に油《句》を注いだ。
そうでもしないと、フィリの本心は知れないから。
注がれた油によって、発したフィリのは留まることをしらない。
「私は自分のが嫌い!! 存在するだけで人に疎まれる! 気をつかわれる! もうたくさん! 〖忌み子〗って何!? なんで目のが違うだけでそんな風に思われなきゃいけないの!? なんで姉さんは私をあんな目でみるの!? 可哀想な子なんて思われたくない!! 無駄に優しくしないで!! 私は!!──────」
『普通に接してしい────だろ?』
水を打ったように靜かになる。
フィリは驚きで目を見開いて俺を凝視する。
小さな口がき、聲にならない言葉を発する
─────どうして?
と。
『言っただろ、俺はお前と同じだったって。哀れみはいらない、下手な同もいらない、特別ななんていらない。俺達は、フィリは────”自分”を視てしいんだ』
一層開かれるフィリの綺麗な、アメジストを模したような目。
『捨て子や忌み子、かわいそうな子、危険な子、冷たい子──全部他人の評価だ。勝手にられたレッテルなんて取っちまえ』
「あ、う っ」
フィリの綺麗な目にが張られる。
俺の顔を映し出す薄い、水の。
『お前はお前だ。フィリ。綺麗な寶石みたいな目に、流れるような金髪。ちょっと無想で、だけどホントはかな心優しいの子───フィリーネ・エアロだ』
「……ひぐっ」
極まったのか、下を向くフィリ。
落ちた雫は地面に吸い込まれた。
やっぱ泣いちまったか。
まあいいさ、のストッパーを外したのは俺だしな。
「わか……って、くれた。初めて……。初めて、綺麗って、言われた」
顔上げたフィリの表は、たき火の燈りで影っていて分からない。でも泣いているのはわかる。
ああ、やっぱり求めてたのか、理解者を。
だったら!!
やるぞ、友達申請・・・・!!
『ああ、俺はお前をわかってやれる。だから、フィリ!! 俺と友だちに為ってくれ!!』
言葉と同時に右手を差し出す。
「友達。なんて、初めて……言われた」
言いながら、子供らしい小さくふっくらとした両手で、戸いつつも差し出された右手を包む。
『「……あったかい」』
どちらからこぼれた言葉だっただろうか。
雲に隠れていた月が顔をだす。
包んだ手を視ていたフィリが顔を上げて、
「ありがとう」
と言った。
ドキッとした。
月明かりに照らされた彼の顔は、脳シミュレーションにはなかった、とても綺麗な────笑顔だったから。
─────そんな顔も、できるじゃねえか。
お互いに笑い合って、橫になって目蓋を閉じる。
そうして、夜はふけていった。
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