《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》023 ~激戦の果てに~

湖の真ん中にそびえ立つ、巨大な大木。

そして、湖の中には無數の木のが、さながら手のように蠢いている。

周囲の森からは、大量の蔓植が俺を狙っていることだろう。

───萬事休す……ってか?

一見、俺の行はフィリ達を逃がす為に殿しんがりを努めているように見えるが、まだあきらめたわけじゃ無い。

フィリの避難が完了したら、大博打を仕掛ける。

それまで、奴の攻撃を捌きながら、時間を稼がなければならないが、それはかなり困難を極める。

ガーさんを吹っ飛ばした時や俺の腹に一撃加えた木のの攻撃速度は、視力限界突破の俺でも視認することが困難だった。

それでいて、あの攻撃力。

あと何発か食らえば、俺のHPでも死にかねない。

だが、諦めるわけにはいかない。

ここで俺が死ぬなんてことになれば、フィリがどうなるかわからない。

意地でも生き殘ってやるさ。

姿勢を低くする。

そして、俺は目・を閉じた。

さっきの攻撃は視覚に頼りすぎた結果だ。

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奴の攻撃を避けるには、視覚に頼らず【危険察知】と自分の直を信じるしかねえ!!

暗い視界の中、五を研ぎ澄ませる……。

【危険察知】が反応。

同時に、風のながれが変わり空気を切り裂く音が聞こえる。

───今だ!

を半ずらす。

橫スレスレに攻撃が通りすぎるのをじながら、格納庫からを取り出す。

───喰らっとけ!

口に咥えたを、びきった木の目がけて振り下ろした。

ズパンッ!!

中程から、バッサリと切り飛ばす事に功した……が。

───やっぱ再生すんのか。

切り落とした部位は、僅か數秒で元通りになってしまった。

……一応、想定の範囲だが、ちょっとショックだ。

と、【危険察知】が反応する。

「ガハッ!!」

俺の周りを取り囲むように地面から出現した木ののすくい上げるような攻撃を防ぎ切れずに、またしても上空へ吹き飛ばされる。

やっぱり多の知はあるみてえだ。

そうじゃないと逃げ場を無くしてから、攻撃を仕掛けるなんてことが出來るはずがねえ。

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そして、追撃とばかりに無數の蔓と木のが宙を飛ぶ俺に殺到する。

──っ!! !!

魔力を節約するため、その場から1m程離れた空中へ転移する。

數本の蔓に被弾したが、致命傷ではない。

格納庫から15本程を周りに展開する。

地面に著地すると同時に周囲に迫る蔓達を迎撃する。

そして、

『こちらγ、フィリの避難が完了した』

───來た!!

フィリの安全確保連絡だ。

これから行う行には多大なリスクを伴う事になるが……。

大神命、今生一世一代の大博打!!

參る!!

───【銀零】!!

イメージ的には、南の森を覆う程度に!!

同時に、周囲の気溫が急激に下がるのをじる。

そして……

パッキィィィィィィィィン!!

全てが凍り付いた。

元々、度も高かったし、さぞや凍りやすかったのだろう。

こちらに追撃を加えようと蠢いていた木のや蔓、周囲の木々に湖、そして、巨大樹。

時間が止まったかのように、凍り付いていた。

特に、俺の近くにいた植達は絶対零度の気溫に耐えきれずに々になった。

……上手くいったか?

そこで俺はβとγに念話を送る。

『こちらα。【銀零】を使ったが無事か!?』

ひどく張する。

もし、制に失敗していたら、フィリやガーさんは……。

『こちらβ。問題ない』

『こちらγ。同じく』

ほっ。

良かった~!!

大博打は俺の勝ちだったって事か。

やっぱり【銀零】の威力制にはイメージが大事だった。

エルビスの作った領域での悲劇。

あの時、俺は新しいスキルを使うことで頭がいっぱいだった。

だから効果範囲に際限が無くなり、暴走気味な発になってたみたいだな。

ミシッ!!

湖面に張った氷に蜘蛛の巣狀の日々がる。

やっぱ今のじゃHPは削り切れなかったか。

バリィイイン!!

湖に張った氷を砕き割って、兇悪な形のが出現する。

奴の魔法で植を改造したんだろう。

湖の中にいた部分は無事だったみたいだな。

****************************

狀態 氷結

LV 110/110

HP 3400/10000

MP 700/5000

****************************

だが、なかなかのダメージを負っている。

MPもかなり消費してるみたいだ。

攻撃速度もだいぶ遅くなってる。

ここで勝負を決める。

───【覚醒】!!

に力がみなぎるのをじる。

これで、奴のアドバンテージであったステータスの差はひっくり返る。

更に、新たなスキルを発する。

───【銀鎧ギンガイ】!!

瞬間、側かられ出した冷気がを包み込み、パキパキと鎧の形をかたどっていく。

このスキルは、ついさっき【銀零】を使ったことによって、練度が上昇し、新たに解放されたスキルだ。

ぶっつけ本番で使ってみたが、どうやらエルビスの【帯電】みたいな防系のスキルだったらしい。

頭には氷で出來た1本角が表れる。

表の隅々までが氷に覆われ、刺刺とげとげしく変化していく。

更に、爪が氷に覆われることで攻撃のリーチがびる。

尾に至ってはブレードのように鋭利なになっている。

はたからみれば一角獣に間違えられる姿だ。

だが、奴が俺の変を素直に待つはずもなく、もはや””とは呼べない、”槍”が大量にこちらに向かってくる。

───丁度良い。

俺は防力を確かめる為に、敢えてかない。

そして、幾つもの槍が鎧にれた瞬間……。

凍り付いた……。

ちょ!!

マジか!!

まさかの接ダメージつきのスキルだった!!

しかも、鎧自は全くの無傷だ。

予想して無かったが……。

これならいける!!

地を大きく蹴り、猛然と駆ける。

目指すは巨大樹、アレを潰せばチェックメイトだ!!

行く手を阻むように様々な攻撃が降り注ぐが、その全てが等しく氷塊へと帰す。

無駄無駄無駄ぁ!!!

もはや奴に地の利や、ステータスの差というアドバンテージはない。

対して俺は、〖絶対零度の支配者〗と【覚醒】によってステータスが軒並み倍以上に上昇し、【銀鎧】によって絶対防とカウンターを同時に可能。

唯一の懸念である奴の【自己再生】も、損傷した時點で凍り付くために、再生することができない。

気づけば巨大樹はもう目と鼻の先。

───これで、最後だぁ!!

【銀零】<氷山生>を使用する。

剎那、氷の湖面からせり出した氷山も書くやと言うほど巨大な氷塊が、同じく凍り付いた巨大樹木を中程から真っ二つにへし折った。

ズズゥウウウウン!!

折れた大木は地面に衝突した衝撃で砕け散る。

同時に脳メッセで経験値を取得したことを確認する。

なんとか……勝てたな。

折れた巨大樹の変わり、そこには巨大な氷山がそびえ立っていた。

★數時間後・東の森

「にしても、アレは凄かったな。氷山見るのは何百年ぶりだっけか?」

「やっぱり、ロウは凄い。あの木の化けを一人で倒した」

今、俺達は氷山がそびえ立ち、木々が氷のオブジェと化した南の森を抜け、大急ぎで里へ向けて走っている。

スフィアさんの言っていた期限が迫っているからだ。

『そんなことよりも、二人が無事で良かったぜ』

そして、大怪我だったガーさんだったが俺が敵を倒し終わった頃には、【再生】で元通りになっていた。

フィリにも、逃走の際に木に引っかけたり傷があるだけで、怪我という怪我はなかった。

本當に良かった。

「まあな。あの時咄嗟にを取らなかったらアブなかったかもしれねえ」

「私達のことよりも。ロウ、凍った木を食べても大丈夫? お腹痛くない?」

『ああ、心配すんな。あれは【捕食】っていうスキルだから大丈夫だ』

そう、ディーパー・フォレストを倒した後〈アヴァロンの実〉を回収し忘れたのに気付き、多いに焦った。

〈アヴァロンの実〉は【銀零】の影響をけて砕け散ってしまったからだ。

あんなに頑張ったのに収穫なしとか、最悪だ。

割に合わねえ!!

と、ディーパー・フォレストの殘骸を見ているとあることに気づいた。

───【捕食】でスキル奪えばいいんじゃね?

と、早速試しに、散らばっていた大木の殘骸を捕食すると、狙っていた【アヴァロンの実創造】を見事獲得した。

これにより、俺はMPさえあれば永久的に”実”を作ることができるようになった。

それに伴い、【捕食】の練度もあがったので制限が一部解除された。

「お前、幾つそんなスキル持ってんだよ?」

ガーさんが、じと目を向ける。

その質問を左から右へ流す。

雨が降ってきたな。

もうすぐ著くから大丈夫だろうが……。

「雨なんて、珍しいな」

ガーさんが呟く。

ふーん。 そうなのか。

と、前方に里の門が見えてきた。

相変わらず、閑散としてるな。

ん?

『なあ。靜かすぎね?』

フィリ達に尋ねながら門をくぐる。

「確かに、いつもの視線がない?」

フィリが首を傾げる。

「どういうことだ?これは──」

「ガーゴ様!!」

ガーゴの言葉を妨げるように表れたのはエルフの爺さん。

なんかスゲエ慌てる。

どうしたんだ?

「ジゲルか。何が起きてる?」

ガーゴが険しい表を浮かべ、ジゲルという老人に聲をかける。

と、間髪れずに……。

「里長が!!」

「「っ!?」」

ジゲルの言葉にを固くするフィリとガーさん。

なんだ?スフィアがどうかしたのか?

「悪い、ロウ。お前は後から來てくれ!! いくぞフィリ!!」

「ん!!」

途端、相を変えたガーさんが俺の背中からフィリを摑み取って里の奧へ飛んで行く。

なんなんだ? なにが起きてるんだ?

俺は、ジゲルへと念話を飛ばす。

『なあ、何があったんだ?』

「……」

沈黙、雨足が強くなる。

やがて、ジゲルは顔を伏せ、ポトリと言葉を零こぼした。

「長が……亡くなられたのだ……」

……は?

だんだん酷くなる雨音に混じって、遠くから慟哭が響いた気がした。

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