──ガキィイン！！

競り合う、強化されたで振るわれた剣と、氷を纏った前腕。

そのどちらも、力は拮抗している。

「うっ、ま、負けるかぁあああ！」

まあ、僕の骨は悲鳴をあげてるけど、気にしてたら押し負ける。

今ここで押し負けるものなら、僕も後ろの皆も衝撃で無事では済まない。

だから必死だ。

足に、腕に力を込める。

前に前にと重を置く。

と…。

「なっ…！」

突然、銀狼が前腕をスッと退いた。

當然、僕のはバランスを崩して前につんのめる。

そして、

「グォウ！」

「ガッ…！！　ハッ！！」

下から掬い上げるような攻撃、気づけば僕のは宙へ投げ出されていた。

「くっは…！！【天歩】！」

意識が飛びそうになるのを堪えて、空中でも使用可能な歩法【天歩】で態勢を整えつつ、の危険をじてその場を離する。

──ゴウッ！！

思った通り、先程、砦の壁を砕した空気の波がを掠めるように通り過ぎていく。

冷や汗が背筋を伝う。

「どうやら、あちらさんも本気みたいだね」

さっきまでとは明らかにきが違う。

追撃まで行おこなってくる辺り、本気で僕を殺しに來てる。

【天歩】を駆使して、一発でも當たれば死に直結する威力の波を避けていく。

しかも、こちらは折れた肋骨がいつ心臓に刺さるかわかったものじゃない。

機が激しい、心臓が口から出そうだ。

とんだアトラクションもあったものだね。

「はぁああああああ！！！　【天翔波】！！」

重力＋天歩による加速力を加えて、剣の奧義を放つ。

「グァァァオ！！」

金の波に包まれた銀狼。

波が消えた後には、氷の鎧に幾重にもヒビがった銀狼の姿が、たいしたダメージは無いみたいだけど、これならいける！！

「セィヤァアアアアア！！！！！」

「ウォオオオオオオン！！！！！」

力任せに、銀狼の頭へとまっすぐに剣を振り下ろす。

それに対して、相手は頭突きで対抗する。

先程までなら、頭を覆う頑丈な氷で僕の攻撃は全く通らなかっただろう。

だけど

──パキィイン！！

「グァ！?」

【天翔波】によって既に限界だった氷の鎧は、々に砕け散った。

揺する銀狼。

余程防力に自信があったんだろう。

慢心は戦いに置いて致命的だよ。

「これで、終わり！！」

そして、僕の剣が変形・・する。

その形狀は剣から弓へ、これが僕のもう一つのユニークスキル【聖弓乃剣アノマロカリス】剣と弓に変形可能な神を召喚するスキルだ。

まあ、その代わり、剣と弓のスキル練度は二つ合わせて最大なんだけどね。

「邪悪な敵を打ち抜け！【天矢】！！」

そして、ゼロ距離で放たれた

極の矢は、たやすく銀狼の頭を打ち抜いた。

「グォオオオ……」

銀狼は、その場に力無く倒れ込み、やがて影に溶け込むように消えていく。

それと同時に、【限界突破】の効力が切れて、に激痛が走る。

「ハハッ…なんとか…。なったね…」

──ワアアアアアアアアアアアア！！！

砦から聞こえてくる地を揺るがすほどの歓聲を背に、僕は意識を手放した。

◆◆◆◆

「お？」

「どうしたの？　ロウ？」

焚き火を挾んで、対面に座るフィリが首を傾げて問う。

「いや、昨日の夜にマッピングに向かった分の、一の反応が消えたんだ」

因みに、今は前の世界でいう朝の八時位だろうか。

サハラは、まだ寢てる。

どうやったらあんな寢相になるのか、今度聞いてみるか。

「ん？　消えた？　ガーゴの時みたいに？」

「そうそう、多分接敵した相手にやられたんだと思う。ガーさん時みたいに」

何でもないように會話しているが、実は結構深刻な問題だ。

分が消える＝分より強い敵の存在

となる。

分は、例の【虛飾】で創り出したモノで、使用可能なスキルに制限はあるものの、ステータス自にかかる制限は、本の七十％程になってる。

で、その反応が消えたのは、王國へ行くには避けては通れない、うんたらかんたら砦だ。

うーん。

今日向かうのは得策じゃないかもな～。

「フィリ、今日の予定はずらして、明日王國へ向かおうと思うんだけどいいか？」

「ん。私はそれで構わない」

まあ、無理して危険に飛び込む事もないし、妥當な判斷だろう。

サハラには後で聞くことにする。

「今日はフィリのレベル上げでもするか」

「ん。楽しみ♪」

──この選択が、俺を數々の出會いへと導いていくことになる。