《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》040 ~俺、人間に出會います~
俺達の目の前に現れた五人組の男達。
とりえあえず、彼等に見つからないように息を潛めて、様子を覗う。
どうやら男達は、コボルトの死を見つけたようだ。
「リーダー、このコボルトじゃねえのか?」
丸刈り頭の男が死を蹴って仰向けにする。
「ケビンさん。その魔は、數十分前に事切れてるっす。背中にある傷口から察するに、刃かなんかで刺されたんじゃないすかね」
軽い口調の金髪青年が、ケビンという丸刈り頭の男が蹴ったコボルトの死を調べて述べる。
軽い口調の割には頭が良さそうだな、あいつ。
意見を否定された丸刈り頭は、眉間に皺をよせて當した表になる。
「あ? つまり……どういうだ?」
あっちは見た目通りバカみたいだな。
金髪青年が説明しようと口を開きかけた時、一際ひときわ軀のデカイ男が口を開いた。
「つまりこの近くに、そいつを殺った野郎がいるってこった。ワイド、索敵は出來たか?」
「我の糸がビンビン張っている。近くに強い魔力反応を持った個がいるのは確実だと思われる」
「ヒャッハーー!!」
……あの大男、さっきリーダーって呼ばれてたな。
隣にいる口元を黒布で覆ったひょろい男、あいつは索敵スキル持ちか……。
後ろのモヒカン男は……北斗の⚫の雑魚的Bか?
まあ、それよりもあっちに索敵スキルを使える奴がいるなら、隠れてても無駄っぽいな。
ここは潔く姿を現して、コンタクトを取るとするか。
「フィリ、サハラお前らはここで待機…って……どうした?」
「ああ、私、おにーさんに包まれてる…ハアハア」
「ハアハア、ロウ、晝間から大膽」
抱き寄せていた二人の様子がおかしくなっている。
サハラはなんかトリップしてるし、フィリは顔を真っ赤に染めてもじもじとを寄せている。
え? どういう狀況だ? これ。
昨夜のフィリと同じ狀態じゃねえか!?
なんでこの狀況でトリップしてんだ!!
フィリも落ち著けよ!!
くそっ、今はゆっくり対処してる暇はねえ!!
取り合えず、いつも以上にを著させてくる二人を強引にひっぺはがし、著ていたコートをいでぐるぐる巻きにする。
「あふ、ぐるぐるに包まれてる~」
「ロウ~♪ ロウ~♪」
ふぅ、取り合えずこの狀態で置いとくか。
全狀態になっちまったが、背に腹はかえられねえ。
と、とにかくあいつらとコンタクトを取らねば……あれ、でもよく考えたらこれって人間と初めてのエンカウントイベントじゃね!?
やべぇ!
なんか張してきた!!
お、落ち著け、今までエンカウントイベントは幾つもあったじゃねえか!
まずは挨拶して、それからそれから……「今日は良い日ですね」か?
いや、それよりも場を和ませるために気の利いた挨拶を……って、やべえ、混して考えがまとまんねえ!
そうこうしているに、黒布マスクの男が俺達の隠れている茂みを指差した。
「ロータ殿、あそこだ」
「おう」
大きな軀の男が、不適な笑みを浮かべてこちらを振り向く。
奴の両手に、バチバチと電撃が迸る。
ちょっ! あいつ、攻撃する気満々じゃねえか!?
くそっ! こうなりゃイチかバチかだ! なるようになりやがれ!!
ろくに、考えも纏まらないまま、俺は茂みから飛びだした。
「待て待て!! コッチに戦う意思はねえ、落ち著いて話を──」
両手をバンザイの狀態にあげて、話す意思を示そうとした瞬間……
「なんだ!? このを刺す魔力圧は!!」
「ひぃ!! 化け!!」
「悪霊退散!!」
「え、おいちょっと──」
「ヒャアアアアアアハァアアアアアアア!!」
「っ!! ジェフが逃げた! ブッチ、そいつは置いてけ! 全員ずらかるぞ!!」
「「「了解!!」」」
凄まじい勢いで初めに逃げ去っていったモヒカン男を追って、他のメンツも背中を見せて走りだす。
あっという間にその姿は見えなくなり、【魔力知】の索敵範囲からも外れた。
「えーっと……」
後に殘されたのは、突然過ぎる展開について行けずにバンザイの姿勢のまま固まる俺と、彼らが置いていった大きな袋のみ。
……化け呼ばわりされたのは、かなりショックなんだが。
かくして、俺の初人間遭遇イベントは、一言も會話をする事なく終了した。
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