《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》043 ~一進一退~

と武がお互いを削りあう、そんな金屬質な音を辺りに響かせながら、俺は突如として攻撃を仕掛けてきた線の細い男と一進一退の攻防劇を繰り広げていた。

そう、一進一退・・・・だ。

明らかに、俺にアドバンテージがあるのに、奴はそれを技と立ち回り方で埋めていやがる。

つか、そんな細えの何処に、こんな強烈な突きを放つ盡力があんだよ!?

まともにけたら堪ったもんじゃねえ!

短剣でけ流しつつ、対応するのでやっとだ。

更に、厄介なのは右手の槍を、短く持つことで短槍と長槍に分別して取り扱い、俺が懐に潛り込んで攻撃しようとすれば、短い槍で捌き、逆に俺が距離を取ろうとすると、長槍で突くと見せかけて、短槍を投げて牽制してくる。

「しっ!!」

「うおっ!」

また、振るいきった長槍の影から投げられた短槍をを捻って回避する。

い、今のは危なかった…。

「ははは、さっきまでの威勢はどうしたんだい? 魔クン」

「うるせえ! こっからだ──よ!!」

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負けじと、格納庫から大量に短剣を出するが……。

カキキキキキキキキイィイン!!

その全てを、男は左手に殘った長槍だけで、防ぎきった。

「っ!! …化けめ!」

「君がそれを言うのか」

男は依然として和な笑みを浮かべながら、どこからともなく右手に短槍が出現させる。

どうやら、奴も俺と同じように、何らかの武を作するスキルを所持しているらしい。

……ホント、敵が使うと結構嫌らしいスキルだな。

というか、ホントにこいつは強すぎる。

強者だとは思ってたが、ここまで強いとは思ってなかった。

地力の差を、類い稀な槍と、の使い方だけで補ってるじだ。

これ、ひょっとして神獣化してないエルビスくらいには強いんじゃねえか?

「……!! くっ!」

突きの回避に、數秒の遅れが生じる。

突き出された槍の先端が、頬を掠めた。

あぶねっ!

「はははっ、お疲れみたいだね? そろそろ…諦めてくれないかい?」

「ちっ!!」

木の枝に転移して、追撃から逃れる。

けねえ話だが、ピアに散々歩き回された事や、この激しい戦闘によって、まだ完全に馴染みきっていない俺のにはかなりの負擔が掛かっている。

そのため、さっきから徐々にが思った通りにかなくなってきてしまった。

丁度、長距離を走っている時に思ったように足が上がらなくなる。

そんなじだ。

善意で文句を言わずに歩いたことや、短期決戦を狙って選んだ接近戦が、見事に自分の首を絞めてるってわけだ。

狼の姿に戻れば、確実に勝てる…が、そんな余裕はねえ。

スキルを解除すれば最期、奴の槍に変化中の無防備なをグサッといかれて終わりだろうな。

……まあ、心配はねえ。

既に奴を倒す算段はついた。

その為の布石も打った。

──次で、決めてやる。

再び、飛んできた短槍を跳躍して避ける。

そして、奴の真後ろに転移すると同時に短剣を一斉掃する。

「蕓がないね。そんな攻撃ばかりかい?」

案の定、その全てを弾かれる。

その景を目にして、俺は──口元に笑みを浮かべた。

「──俺の勝ちだ!!」

「何を……!?」

直後、弾いた短剣が全て発・・した。

「──やったか?」

男がこの攻撃に対処できるのは、最初の方の攻撃で理解した。

だったら、その攻撃をもう一度すると見せかけて違う攻撃。

つまり、を放つのではなく、を大量に放てば良いわけだ。

煙の向こうは沈黙している。

あのエルビスでさえも重傷を負ったこの攻撃を、至近距離でけて無事なハズがねえ。

完全に気が抜けていた俺は、盛大にフラグを立てたことにも気付かずに、構えを解いてしまう。

その瞬間だった──

「っ!! ─ガッ!?」

煙を晴らすような風圧と共に、所々服が破れた男が飛び出して來た。

そして、祿に防の姿勢をとれなかった俺は、腹部に強烈な蹴りを喰らって、大きく吹き飛ばされる。

「グハッ!……!! しまっ…!」

飛ばされた先で、大木にぶつかり、そこへ男が追撃するとばかりに放った短槍によって服を幹にい付けられる。

くっそ! けねえ!!

男は、苦痛に顔を歪めながら(全に火傷を負ったようだ)近づいてくる。

「今のは効いたよ……でも──終わりだ」

そして、宙へ飛び上がった男が俺目がけて雙槍を振り下ろす。

……ちっ! ここで死ぬわけには…!!

そう、自分の”死”をなからず案じた時だった。

何かの羽ばたく音・が聞こえる。

なんだ?

顔を上げた剎那──

ドゴッン!!

「ぶっ!!!!」

「おわっ!?」

上空から落ちてきた何かが、空中にいた男に直撃。

そのまま地面へと男諸共、激突し、辺りに土煙が舞う。

目と鼻の先で起きた出來事に頭が追いつかねえ。

何が起きたんだ?

『主人がご迷をお掛けしました。お怪我はありませんか?』

そして、その顔についた口がく代わりに、頭に響く聲──念話が響いた。

やがて、土煙が晴れていくとわになったのは、緋の羽を包んだ怪鳥──いや、首から上はさらりと長い長髪を攜えたの顔だ──が、その巨大な鉤爪で、先程にクレーターの出來た地面に押しつけている景だった。

うん? どういうこと?

こうして、思わぬ者による、思わぬ展開により、男との生死を賭けた戦いは幕を閉じたのだった。

──因みに、男はピクリともかなかった。

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