銀狼との死闘から、はや五日が経過した。

僕が戦いでけた傷は、肋骨3本の骨折、臓破裂【限界突破】の使用による過剰負荷といった合に、一時は生死を彷徨った程だけど…そこはなんとか異世界クオリティの回復魔法で切り抜けて、今では腕以外の包帯は取れて、歩けるまでに回復した。

僕がベッドからけない間は、凜と白詰さんが冒険者の依頼をけて治療費を稼いでくれた。

その間、霞ヶ浦さんは毎日のようにゴードンさんの酒場に足を運んで、命ミコト達の報を集め続けてくれた。

あの人の命に対する熱量には、流石に親友の僕でも敵わないな。

また、あの戦いで甚大な被害を被った[ドルム砦]では、ようやく復興の兆しが見え始めたらしい。

三日前に、王國から何人もの建築士や魔導師がかり出されたみたいだ。

何でも、魔法障壁を張って、遠距離攻撃にも微だにしない、今まで以上に堅牢な砦へと改良するとか。

これで、王國の堅牢な防は確固たるものになるだろう。

完したら、一度見に行ってみたいな。

しかし楽観視ばかりしてもいられない。

砦の崩落に巻き込まれてたくさんの人が尊い命を落としたし、砦が復興するまでの間、多くの冒険者がその防衛の埋めに回っていて、王國は冒険者不足に陥ってしまっている。

おかげで、王國の警備兵が國の魔を間引くハメになったり、警備兵の不在を狙った強盜や空き巣、強などの犯罪率が急上昇したせいで一時的に治安が悪くなってしまっているのが現狀。

銀狼が殘した爪痕は、良くも悪くもこの國になくない影響を與えたってことだ。

そんな中、僕は現在冒険者の町──〖エイギル〗を離れ、王の住まう都みやこ──〖王都アルデンス〗の城の中、そのとある一室に居た。

きらびやかな裝飾を施された部屋には、僕を含めて4人の人が黃金の円卓を囲んでいた。

僕から反時計回りに、橘たちばな　とおるくん、東雲しののめ猛たけるくん、田中たなか金継かねつぐくん、佐々木ささき澪みおさんの順で座席に座っている。

簡単に説明すると、週に一回。

クラスメイトで集まって、お互いに失蹤者なんかの報換をしているんだけど、今回は丁度その日、僕が王様に呼び出しをけて王都へと謁見しに行き、通された部屋でこの四人と遭遇。

しかも、その四人が丁度それぞれのパーティーのリーダーだったので、中止の流れになっていた報インターナショナル換シェアリング會議ミーティング（略してＩＳＭ）を急遽、城の會議室を借りて行ったわけだ。

もちろん、報共有が目的だったんだけど…話は早くも線し始めちゃってて……。

「ふっ　ざっ　けんじゃねー　ー　ー！！！！」

會議室に突如響く怒號。

「ちょっと待ってよ、金継く─「いいや！　またねぇ！！」ええ…」

そういって椅子から勢いよく立ち上がるＡランク冒険者パーティー『尊き竜の翼』のリーダー”田中金継”くんの怒りの矛先は現在僕に向いている…というのも。

「おい天哉ぁあ！！　お前は…お前という奴はぁああ！！　ただでさえ、ただでさえパーティーでハーレムを形してやがるのに！！　なんだってんだ！？　キモオタ共を一手に引きけ、その特典としてアニオタ外國人留學生をパーティーに引きれてみれば、そいつは既に他の男に夢中で脈は無し！！　そんな殘酷な結果に傷心したオレに溫かい言葉をかけてくれた唯一の癒しであり救いだった…！！

第三王のメルヒナちゃんまで手にかけやがってぇええええ！

おまけに街行くはお前の姿を見て、「勇者様♡」「天哉様！！」などと目をハート型にする始末─────この、ハーーレムチーーレム野郎がぁあああああああ！！！！」

彼の怒りの原因は、三つ。

一つ目は、僕のパーティーの男比が1：4になっていることが、金継くん曰くハーレム狀態になっているということ。

これは事実だけど、僕からしたら完全な不可抗力だ。

凜や白詰さんは、同じ道場仲間、いつも一緒に行するよしみで自然とそうなったし、霞ヶ浦さんに至っては命と一番仲が良かった僕らと一緒にいれば、命が見つかった時に同じパーティーになる可能が高い…という打算でパーティーを希してきたにすぎないしね。

二つ目は、僕を「天哉様！　大好きです！！」と妙に慕ってくれる第三王のメルヒナ・ゼファーちゃんに僕が手をかけたということ。

そも、彼は僕より6歳は年下。

そんな小さな子に手を出すなんて、あり得ないし僕は命・と・違・っ・て・そんな特殊な趣味はもってないから、そういう邪なも浮かび得ない。

あえて言えば、「ありがとう」と言って頭をでてあげたくらいだ。

妹がいたらこんなじかな。

なんてちょっと考えてしまったりもするけど。

三つ目、銀狼を倒した事で僕の顔と名前が王都で広まり、ちょっとした英雄扱いをけてることだ。

金継くん曰くチーレム狀態だとか。

これはあまり嬉しくない。

気軽に外にも出歩けないし、気を抜けば猛獣と化した達に喰われてしまいそうになる。

頼れるパーティーメンバーがいなければ、今頃僕は大切な何かを失っていたかもしれない。

全く、一つ目はともかくあと二つの理由は理不盡じゃないかな。

そもそも──

「金継くん！　僕はハーレムなんて作る気はないし、メルヒナちゃんのことだって誤解だ。そもそも僕には彼が──「ぐがぁああああ！！！　リア充がぁああああああああ！！！！　発しやがれぇええ！！　いや、宇宙の塵と化せぇえええ！！」─もうどうしろっていうのさ！？」

どうやら、更なる油を注いでしまったみたいだ。

何かに取り憑かれたように、床に倒れてのたうちまわってる。

僕は彼の誤解を解くのを諦めて、溜息をついた。

「さて、無駄話は終わったかしら？」

今までの會話の容をバッサリ斬り捨てる、尖った冷気を更に尖らせたような聲が議場に響く。

金継くんのきがピタリと止まる。

僕は苦笑しながら、聲の主──Ｓランク冒険者パーティー『魔道ノ華』のリーダー”佐々木澪”へと口を開く。

「ええ、終わりました。すみません佐々木さん」

「はい、以後は気をつけてください」

顔一つ変えず、氷のような冷たさを持って返答をする彼こそ、我らが２ーＣ不のクラス委員であり、その無駄な労力を嫌い、常に効率的な行を好み、男問わず冷たくあしらう姿勢からクラスでは”王様”、”最強の委員長”、”氷の王”なんて呼ばれてる。

「はっ、”氷の王”が偉ぶりやが─「何か…言いました？」─いえ、何でもないです」

佐々木さんに睨まれて、驚くべき速度で謝りつつ席に座り直す金継くん。

因みに、これらの異名は彼の前で言っていけない。

いわゆる、句というやつだ。

「はあ……クズオタクは放っておきましょうか。　三橋くん、橘くん、東雲さん。何かありますか？」

そう言って僕や、この會議中ずっと口を閉ざしていた二人の人へと視線を向ける佐々木さん。

「生産者組は特にこれといった報告はねえな。強いていうなら、俺の店の二店舗目が──って、悪い悪い…そんな目で見るなって…」

さり気なく店の宣伝を始めた事を佐々木さんに睨まれて口を噤んだのは、生産者組の代表であり、僕らの行きつけで通常時のＩＳＭの開催場所でもある”東雲食堂”のオーナー”東雲猛”くんだ。

顔は悪人面、がっしりとした軀、格は豪快の一言につき、々喧嘩っ早い所もあるが、その実、とても面倒見が良くて気前がいい。

僕達は彼のことを親しみを込めて”おやっさん”、”おじき”なんて呼んでる。

実際に年上だし（二回留年しているらしい）。

因みに、同クラスに”東雲しののめ風ふうという可らしい妹がいる。

東雲兄妹の、顔も格もの大きさも、似ても似つかぬその容姿は一時期、大神兄妹とは違った意味で噂になったりした。

その噂の容は、両兄妹の名譽の為にも口を噤む事にする。

「お、おい橘。お前はなんかねえのか？」

流石のおやっさんも、雪の王の冷たい視線には耐えられなかったようで、左隣で本を読んでいた橘くんへと話を振った。

「ん？　特に話すような事はない……ああ…そうだ──」

そういって、呼んでいた本を片手で”パタン”と閉じ、黒縁の眼鏡を上に押し上げながら僕へと視線を向けて口を開く橘くん。

「三橋、お前が戦って倒したという銀の狼。俺・も・見・た・ぞ・」

「え？」

「は？」

「んなっ！？」

「・・・」

突然の橘くんのカミングアウトによって僕、金継くん、東雲くん、の順に驚愕を顕わにするのだった。