《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》048 ~五日間の滯在~

「柊流剣一の型!!」

「うわっ!!……と」

鬼畜教師セドリックの教えをけ始めて、今日で五日目の朝を迎えた。

「ははっ、スゴいね! 大樹が真っ二つだ。 魔力はじられなかった所からしてスキルじゃない、元々持ってた技かい? お、その技はスキルだね。魔力れてるよ」

「クソっ、まだ魔力がれてんのか…っと!」

現在、俺とセドリックは俗に言う”朝稽古”なるものをやっている。

「いやいや、最初に比べたらだいぶマシさ。

息苦しい程の魔力圧はすっかり消えてるし、包する魔力量もだいぶ誤魔化せてる。もう、君を魔獣、ましてや神獣なんて呼ぶ人は居ないと思うよ。…ん? ロウ君、魔力圧が無かったら可憐なの子にしか見えないね」

「そりゃどうもっ…って!! 俺は男だっ!!」

この四日間、セドリックによって魔力制のなんたるかを教えられ続けた結果、俺が無意識に周囲に放っていた膨大な魔力圧は、人間が微弱に放っている程度にまで抑えられるようになった。

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セドリックが言うには、どれだけ巧妙な人化が出來るようになっても基本的に人間が放てない魔力圧を大量に放ってる次點で”私は魔です”と自己申告しているものだとか。

うん。心當たりスゲーある。

ピアを捕獲していたあの悪黨達が俺を”化け”呼ばわりしたのも、そのせいだろうな。

魔力圧が強い魔=戦闘力強い、超危険って認識らしいから。

すまんな。

悪黨共、無意識とはいえビビらせちまって。

いい歳してちょいれしてないことを祈る。

おわっ…! アブねっ!!

急に槍を投げるな!

「この糸目!! これでも喰らいやがれ!」

「うぐっ、ちょっ…急にソレは…。うっぷ…!」

また、俺のような強力な魔力圧は周囲の生命へ様々な影響を與える。

通稱”魔力酔い”と呼ばれるこの現象は、強すぎる魔力を浴び続けた際、酒に酔ったような狀態になる事を差す。

もちろん、癥狀の程度には個人差があり、酩酊狀態に陥る者や気絶する者、セドリックのように吐き気を催す程度ですむ者もいる。

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因みに、フィリやサハラが時たまトリップ狀態に陥っていた理由もこの魔力圧が原因だったりする。この真相を知ってから、より一層魔力作に対する意が向上したのは言うまでもないな。

あの狀態のフィリとサハラは可かったが、それ以上に何をしでかすかわからない危うさがあった。

あんなのを何回もやられたら、俺の獣としての本能が何をしでかすか…。

まあ、これからはしっかり魔力の制を意識していく事にしよう。

反省はこれくらいにして…。

「隙ありぃい!!」

「ヘブシッ!? ちょ…! ごふぅうッ!!」

足を止めたセドリック、防に隙が生まれた所に俺の渾の右ストレートがクリーンヒット。

そして、の一・部・分・(足と手)の人・化・を・解・い・て・、無防備になった腹へ容赦の無い追撃を加える。

「ふふッ、魔力…作での…威力調…整に、ビビア…の、部分的…人化解除……完璧だ…よ…も、う教え殘すことは……ない…。…ガクッ」

「オにーチャン! オツかれサマ~!」

「おお、ピア、ありがとな」

「エへヘッ♪」

稽古の見をしていたピアが、芝居がかった口調での言を最後に気を失った父親セドリックを無視してビビアさん特製のクゼン茶を持ってきてくれた。

俺はお禮を言って先日とは違う、氷が浮かんだクゼン茶を一気に飲み干す。

「ンぐっ、ンぐっ、ぷはっ! くぅぅぅううううううううう!!」

後の火照ったにこの冷たさが隅々まで染み渡る~!

ビビアさんの煎れる茶はホント最高だな。

「ふう。そうだピア、見してどうだった? しっかりスキルコントロール出來てたか?」

「ン? スきるこンとローる? 私、そーイウのヨくワカんなイ。デもかっコよかッタ!」

…まったく。

無邪気なもんだ。

フィリやサハラとはまた違った魅力がこの子にはあるな。

そう思いながらピアの緋の髪をでていると、セドリックがむくりとを起こし、言った。

「そーだね~。若干卑怯だったけど…素直に負けは認めざるを得ないや。魔力制と魔力作の練度は既に極める一歩手前、スキルコントロールもあと數ヶ月もすれば僕を越えちゃうね。正直ロウ君のスキルの習得速度には舌を巻くばかりだよ。はっきり言えば異常だ。最初はあんなに手こずってたのに…」

「まあ、魔力とスキルの関連とかを理解するのには時間がかかったけどな。”スキルに頼りすぎている”だったか? ソレ言われてからやっとで理解したじだ」

俺が転生當初から當たり前のように使っていたスキル。

俺はこれ自が攻撃手段、もしくは自分の能力を発揮する道ツールだと考えていたが、セドリックはスキルの事を魔力を使って技を発するためにあらかじめ式と魔力を自調節して威力、範囲調整をしてくれる──謂わば補・助・裝・置・、ガイドラインのようなモノだと言った。

端的に言うと、どれだけ魔力の扱いが下手な奴でもスキルの補助さえければ能力は発するって事だ。

しかし、そうとは知らずにスキルという補助裝置に依存し、魔力の扱い方を疎かにしていた俺をセドリックは「頼りすぎだ」と一喝したのだ。

「はは、やっぱり稽古形式にしたのが功を奏したかな。習うより慣れろって、こういうことか」

”スキルは補助”。

俺自、これを意識しながらスキルを極力使わないように能力スキルを発するのは骨が折れたが、何とかモノにする事が出來た。

スキルを介さずに能力の調節を自分で行ったり、逆にスキルを介した後に調節をしたり…。

セドリック仕込みのこののことを”スキルコントロール”と言う。

これにより、同じ技でもスキルコントロールのさじ加減で、全く別の技になる。

戦闘中のパフォーマンスがかなり増えたわけだ。

セドリックを沈めた、一部分人化解除もその一つだったりする。

教えをけた五日の間で、俺はセドリックから魔力とこの世界に関する詳しい知識は勿論のこと、魔力圧と魔力作、スキルコントロールという技を習得したのだった。

俺の脳裏にセドリックのスパルタ教育がフラッシュバックしそうになった時、玄関のドアが開いてフィリが顔を出した。

「ロウ。ごはん出來た」

「おうフィリ、お手伝いごくろうさん」

「もうそんな時間か~」

「ごっはン! ゴッはん!」

フィリは、俺がセドリックから魔力関連の教えをけている間、自・分・か・ら・ビビアさんに弟子りし料理を習っていた。

なんでも、俺に味しい料理を出して胃袋を摑みたいとかなんとか…。

めんこい子やのぉ。

サハラ?

あいつは喰うか寢るか俺を冷やかしにくる以外なんもしてねえよ。

今日も稽古見るために頑張って早起きしたピアと違ってまだ寢てるしな。

サハラのことはこの際放っておく。

で、フィリの目的を聞いたときの俺を見るビビアさんの表は生暖かいモノだったりしたが、ノーコメントを貫いた。

目的云々は些細なコトとして、フィリが料理出來るようになるのは非常にありがたい。

森の中でフィリに出逢うまでは殺した魔を生で食ってたし、里では生の野菜を丸かじりしただけ、ピアを助けるまでの食事も、生を焼いただけの簡素なモノだったしな。

あれ?

俺達、ビビアさんに出逢うまで祿なモンくってねえ…。俺自、捨て子時代の経験からジビエ料理擬きは作れるけど…。エルフフィリにばっか喰わして大丈夫かわからねえし…。栄養偏りすぎじゃないかと思うし…。

ま、まあこういった側面からフィリが料理を習得してくれることは、俺達の飯事を大きく改善する一手になるわけだ。

決して、フード付きローブの上から子供用エプロンを著用したフィリがマジ天使で心のオアシスで目の保養になるとかは全く関係ない、無いったらない。

「ん。どうしたのロウ?」

「…! いや、何でもねえよ。さ、飯だ飯」

そう言って家にろうとしたときだった。

──ガサッ

「─!! セドリック…」

「うん。わかってる」

突然、近くの茂みが揺れた。

魔力知では、その茂みの辺りに二つの魔力反応がある。心配そうな表な顔をしたピアとフィリにはその場で待っているように言って、セドリックと恐る恐る茂みへ近づく。

そして──

──ガサッ!

「……い…え?」

「た…すか…った──」

「おい! だいょうぶか!?」

現れたのは二人の男。

一人はだらけで、丸刈りの男に肩を支えられている。

男達は家を視認するなり安心したのか地面に倒れ伏した。

慌てて俺は、その男達へと近づく。

「ひでえ…」

どうやら気絶しているみたいだ。

丸刈りの男はの傷はないが、左腕から先がない。応急処置的に包まれた服の切れ端が赤黒く染まっているから、何者かに切り落とされたのは明白だ。

もう片方の男は、中に斬劇痕がありそのどれもが深い、唯でさえ真っ黒な服にが滲みそこの部分だけ変を起こしている。

加えて二人とも目の下にはクマがあり、長い間睡眠を取らずに森を徘徊していたのが見て取れた。

「こんな場所に人間が迷い込むなんて…それに酷い怪我だ。取り敢えず、家の中へ運ぶかい?」

「いいのか? 人間だぞ?」

セドリック自は人間(?)だが、ビビアさんやピアは魔だ。

人間─特に王國の人間は魔=悪、即、斬みたいな思考だ。

そう思って聞いたが、帰ってきた返答は「襲いかかってきたらその場でぶち殺す」と言うモノだった。

治療しといて殺すのか、と心の中でツッコミをれながら、俺は人化を解いて口で男達の襟首を加える。

…男臭がスゲエが我慢だ我慢。

そして、玄関まで戻ってきたときだった。

「オにーちャン…ソレ…」

ピアが口に咥えた男達に指を指す。

心無しか、ピアの顔は青い。

口が塞がっているので、俺は念話で男達を家で治療する事を伝えたのだが…。

「そージャなイ! ソレ、ワタしをツかまエタにんゲん!」

「っ!!」

特徴的なモヒカン男や金髪の青年が居なかったから気が付かなかった。

俺が治療しようとしていたのは、あろうことかピアを捕まえ、鎖でぐるぐる巻きにしていた悪黨達の一味だったのだ。

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