《銀狼転生記~助けたと異世界放浪~》051 ~久々の確認・影囚~
「プギィイッ!?」
『あっ……!』
右の茂みから姿を現した食料はこちらを視認した途端、逃走スキルを使用したかの如く走り去って行った。
…くそッ、今度は逃がさん!
俺は、狼の軀をしなやかに使い、木々の間を駆ける。
次第に距離がまってきた。
よし、前方に確認…!!
この距離なら屆く。
銀喰投擲ぃ!!
「プギッ──!!」
放たれた太刀は周囲の木を切り飛ばしながら見事、豬を袈裟懸けに仕留めた。
「ふぃぃ。取り敢えずビビアさんに頼まれた食材は確保完了だな」
獨りごちりながら、息絶えた豬を収納する。
こいつの他にも、巨大魚や兎數匹も仕留めた。
これで今日の晩ご飯は大丈夫だろう。
昨日、ケビンがピアに謝罪をしたことで取り敢えずは和解をしたようだった。
洗脳が解けていないワイドも、ケビンが頭を下げたことで何かをじたのか、渋々謝罪をした。
その事でセドリックは若干不満げだったが、ビビアさんはどうにか彼等をけれることにした。
彼等親子で話し合った結果、完全に傷が癒えるまではあの家に置いておくことにしたらしい。
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なんだかんだで一見落著。
ケビンは話してみると案外気さくな奴で、直ぐにセドリックとも打ち解けていた。
あいつの魔講義に話を合わせることが出來たワイドも中々好印象だったんじゃないだろうか。
で、機嫌を良くしたセドリックが今日の晩飯を豪華にするとか言い出したせいで、俺が狩猟おつかいに來ているわけだ。
まぁ、今終わったけどな。
サハラとフィリはお手伝いに殘してきた。
サハラは働くかどうか怪しいけどフィリならしっかりと働いてくれる筈。
・・・。
「……時間余ったし、久しぶりに確認するか」
久しぶりに一人になった時間。
ちょっと寂しさをじながら頭の中でステータスと念じる。
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名前 ロウ(ミコト)
種族 古幻狼:銀 (神格種) 危険度:測定不能
裝備 幸福のイヤリング
銀熊の外套 new
呪刀・紫吹
LV:43/200 up 
HP:23378/23378 up
MP:8016/8016 up
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攻撃力:21311(1000)up
防力:7800 up
抵抗力:5634 up
俊敏:33054 up
魔法力:10050 up
運 :0 up
:ユニークスキル:
【空間魔法★】【武創造★】【神々の系譜Ⅲ】
【次元魔法Ⅲ】up【スキル創造】【魂の咆哮】
【銀零Ⅱ】【眷屬作】【アヴァロンの実創造】【虛飾Ⅱ】
:パッシブスキル:
【魔力知】【危険察知】【翻訳】【神汚染無効】【邪神の籠】【攻撃力up中】【防力up中】【ゴブリンキラー】【氷結無効】【自己再生】【寒さ無効】【暑さ無効】【嗅覚上昇大】【聴覚上昇大】【魔力調整】new
:ノーマルスキル:
【突撃】【鑑定Ⅵ】【逃げる】【投擲Ⅷ】【捕食Ⅲ】【ハウリング★】【電石火★】【短剣技Ⅷ】up【遠吠え★】【念話★】【覚醒】【人化Ⅷ】up 【我慢】new
:稱號:
〖転移者〗〖転生者〗〖寂しがり屋〗〖捕食者〗
〖短剣使い〗〖殺戮者〗〖ゴブリンの天敵〗
〖探索者〗〖幻獣〗〖神獣〗〖古狼〗〖絶対零度の支配者〗〖森林の支配者〗〖金狼の加護〗〖試練を越えし者〗〖魔を極めし者〗〖創を極めし者〗〖加護を與えし者〗〖大罪者〗〖子連れ狼〗〖師を持つ者〗new〖我慢を覚えた狼〗new〖邪神の籠をけし者〗
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「しっかし…ステータス見るの、ホント久しぶりだよなぁ」
思えば湖の畔で進化した時に見たのが最期か…。
自分のステータスぐらいしっかり確認しとけよ。と思うかも知れないが、これが結構疲れるんだ。
最初の頃は頭に浮かぶ報量もなかったから楽だったけど、今じゃスキルだけで三〇以上稱號も合わせれば五〇以上の報にレベルや裝備とかそういう個人報が一斉に頭に流れ込む。
めっちゃがんがんするんだよ。
お、次元魔法がレベルアップしてる。
そりゃあんなにバンバン転移使ったらなぁ。
〈門ゲート〉は使ったことねえのに…。
まあ、今はいいや。
さて、何が増えたのかなっと。
〈転送〉消費MP10× 指定した位置に自分以外のを移させる事が出來る。ただし移させるの質量と移させる距離に応じて消費MP上昇。
ふむふむ…。
転移が俺一人、門が多人數だとするとこれは資や他人を移させるスキルってことか…。
資なら丁度いい、さっきの豬のも全部送ってしまおう。
頭の中でセドリックの家に座標を指定。
〈転送〉っと……お、格納庫の食材が消えた。
見たところ消費したMPもそんなに多くないし使い勝手がいいな。
さて他に変わったのは……人化の練度がかなり上がったことか…。
ビビアさんの訓練のおかげで、殆ど瞬間的に人と狼の互にとれるようになったし、この前のように部分的に人化を解けるようにもなった。
で、最大の問題だった食衝だがそれもビビアさんの助言で克服出來た。
ひたすら人化狀態のビビアさんの前に座り、衝を我慢し続けたのだ。
その結果覚えたのが【我慢】。
これのおかげで求の制に功した訳だ。
我慢すればこの通り、狼の姿でも正気を失わずに行できるようになる。
ほんと、セドリックはともかくビビアさんには謝してもしたりねえな。
自ら進んで人を食べるとか、まっぴら免だからなぁ。
あと変わった事と言えば、武創造で付與可能な屬が毒と睡眠が増えたことか。
どちらもこの森に群生していたキノコを拾って得た。
鑑定するの忘れて、危うく食べかけたのは遠い昔の話だ…。
そういえば、セドリックに毒キノコの採取も依頼されてたっけ?
何に使うのかわかんねえけど、取って帰らねえと面倒だ。戦闘になるのは面倒くさいけど今のセドリックと戦っても、狼の力を解放可能になった俺の敵じゃねえ。
…余裕だな。
よし!
今日はこのまま帰る──ッ!!!
──スドッ!
「……避けられたみたいね」
危ねぇ…。
咄嗟に飛び退いたが……ギリギリだった。
俺が居た場所には黒の短刀が突き刺さっている。
どういうことだ?
危険察知が反応しなかったぞ?
俺は聲のした方へ顔を向ける。
そこには、黒裝束にを包んだがいた。
顔は黒子みたいに布で隠していてわからない。だけど、聲やその佇まいからだろう。
「まったく、この周辺強力な魔獣が多すぎよ。しかも全部同じ個…どうなってんの? 流石に疲れたわよ」
は獨り言をぶつぶつと呟きながら懐からもう一つ短刀を取り出す。
まあ聴覚が人外染みてるから聞こえてるんだけどな。
って、まてよ…?
こいつ、もしかして…!
……ああッ!! 周囲に探索に出してた分達をヤりやがった!!
丁度、ステータスの確認中だから気配が消えたのに気が付かなかったのか……。
というか、あの分達は腐っても俺の分だ。スキルに制限がかかってるとはいえ、それでもステータスは大差ないはず…。
それを全部処理ってどんだけ強えんだよ。
「まあ、いいわ。あなたもさっさと散りなさい」
…ッ。
來る!
が視界から消える。
俺は慌てて目で追うような事はせず、魔力反応を確認。
の魔力反応は枝を伝って俺の背後に、そこか…!
(技! 投擲返し!)
──キィンッ!
「んなっ…!?」
が放った短刀と、俺が格納庫から出した小烏丸が空中で衝突。
どちらの刃もあらぬ方向へと飛んでいった。
それを見ていたは驚き、次にんだ。
因みに表は見えない。
「あ、あんたッ! 何で私が見えてんのよッ!?」
え…?
何でって言われても…。
魔力ダダれだし…。
セドリックから魔力の何たるかを教え込まれた俺は、自分の魔力を抑える事だけでなく他者の魔力を知する事も可能になった。
つまり、擬似的な探知能力だ。
目の前の黒裝束は、スキルに頼っているのか視覚的には見えなくなっても、魔力を見ればその位置は丸わかりだった。
お、また攻撃するつもりか?
させねえ!
「この、次で──ヒッ!? あっ…イタッ!?」
懐から短刀を取り出そうとしたは、驚いた聲を上げ枝から足を踏み外して落下した。
何のことはない。
俺が抑えていた魔力をし解放しただけだ。
「ひっ…あ、ああ……化け…!」
うおぉ。
ちょっとやり過ぎたか…。
まだこの辺ちぃっと加減が……。
仕方ない。
ここは聲をかけて落ち著かせよう。
『おい』
「何っ!? 頭の中に聲が…!?」
『ああ、俺だよ。目の前にいる狼だ』
「オオ…カミ…? ッ! ぁあ、あんた…! 喋れたの…!?」
ああ、こっちじゃあんまり狼は有名じゃねえんだった。まあ、俺が話しかけてるのは理解してくれたっぽい。
「くっ…! そう…あんたがオリジナルってわけ…。他の奴は全部分だったってことね。こんな魔獣がいるなんて聞いてないわよ? …はやく狂姫達に知らせないと…」
『狂姫達…? 他にも仲間がいんのか?』
「ッ!! どれだけ耳がいいのよッ!!」
が後半、ボソリと呟いた言葉を言い當てられて憤慨する。
すまんな。聴覚がいいもんで、不可抗力って奴だ。
それはそれとして……。
『殘念だが、お前をこのまま見逃すわけにはいかない。……森を荒らしたからな』
俺の見立てでは、多分こいつらがケビン達王國側の調査隊を襲った集団だ。
黒裝束でわかりにくいが見た目、俺達と同じ高校生でしかもの子。
しかし、こんな奇襲に特化したような実力者、それも暗殺者っぽい見た目の実力者がそうそうこんな所にいるはずねえ。
ケビン達の事を悟られないよう、なるべくそれっぽい理由でに柄の拘束を要求する。
「…はあ、抵抗するにしても実力に差がありすぎるわね。それこそ軽くあしらわれて終わり。ほんと、周囲散策に出てこんなのと出くわすなんて…今回の任務はついてない。私ってホントに不幸だわ」
『お、おお…なんか…悪い』
徐々にネガティブなオーラを周囲に漂わせるに同して、なんとなく謝ってしまった。
「あんたが謝る事じゃないわ…それに──」
──ッ!!?
が布の向こうで不適に笑った…気がした。
そう気づいた時にはもう遅かった。
が…!!?
「仲間で接したのが私っていうのは──不幸中の幸いって奴だしね♪」
いつの間にかに纏わり付いていた黒の帯、それが幾重にも絡まって俺のきを封じていた。
『ちっ…影か…』
「へぇ、魔獣の癖にそこまでわかるのね。そう、私は影を扱う魔法を得意とするの。私の國では影姫って呼ばれてるわ」
くそっ。ただの斥候だと思って油斷した。
こいつ、観念した芝居をしてその実、バレないように魔力を練ってやがった。
「まあ、だからってこの程度の拘束であんたを縛り続けることは無理でしょうね。もって一〇分ってとこかしら──〈影牢〉」
「うおっ…!」
空中に形された黒の檻が、俺のを封じ込めた。「これで二〇分」と影姫が呟く。
「だから、あんたを殺すこともしない。殘念だけど私じゃ火力不足。この貴重な時間はあんたからの逃走と任務の遂行にあてさせて貰うわ──〈影ノ城〉」
闇と間違えるほどの影が、俺を覆う。
『クソっ、待てッ!!』
「これで四〇分…!! じゃあね! 白銀のオオカミ!!!」
影姫はそういって、自らの影に沈む。
急速に離れていく魔力反応。
まっ…!そっちは……!!
魔力反応が向かう方角に何があるのか──誰がいるのかを理解し、絶句する。
──そっちにはフィリ達が…!!
そうして、きのとれない俺を嘲笑うかのように、視界が闇に閉ざされたのだった。
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