《「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。》第一章 第二話 転生
第一章開始!
    
気が付くと、いつの間にか俺は真っ暗な空間にいた。
    
   そこには一筋のもなくただ闇が広がるだけであったが、不思議と不安や恐怖というものはない。
   むしろ何からかいものに包まれたかのような安心があった。
    
   しかし実際には何かに包まれるどころか、自分の実があるのかすら定かではなかった。
   手足の覚はもちろん、も頭もあるようにはじない。
   視界は閉ざされているし、聴覚、嗅覚、味覚、覚どれをとっても反応を返してくるものはない。
    
  ――俺は、死んだのだろうか。
    
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   と不意にそんな考えが脳裏をよぎる。
   流石にトラックに撥ねられて生きている自信はない。
   ほぼ確実に死んでいる。
   それは間違いないことだ。
    
   でも、それでも、もしかしたら生きているかもしれないという希が捨てられなかった。
   多分、死ぬのがあまりにも唐突で簡単すぎたことや、この謎空間に意識だけだったとしても殘っているのが原因だろう。
   典型的な失ってみると、ってやつだ。
    
   そして、失って初めて分かったが、「死」というものは予想をはるかに通り越して辛く苦しいことであった。
   それは現世との絶対的な絶縁であり、相互に干渉はおろか、認識することすらできなくなってしまう。
   まさしく全てを失うわけだ。
    
   そう考えると、現世にやり殘したことはいくつもある。
   見たいアニメはたくさんあったし、読みたい漫畫も、ラノベも、まだまだ殘っている。
   もっと味しいものが食べたかったし、人と関わっていたかった。
   を言えば、彼ができたことがないからというものをしてみたかった。
    
   そして、両親と喧嘩をしたまま別れることになってしまったのが最大の心殘りだ。
   俺にとって二人は、なんだかんだ言って大切な家族だったのに、こんな別れ方になるとは思っていなかった。
   いつも説教ばかりの二人だったが、言うことを聞かずに家を飛び出しそのまま死んでしまった俺のことをどう思っているのだろうか。
    
   いつものように親不孝だと怒っているのだろうか。
   それとも俺のために、悲しんだりしてくれているのだろうか。
    
   それからしばらく、俺は思考すること以外はすることがない空間で々なことを考えていた。
   それはひたすら素數を數えるだけであったり、古典の暗唱をしていたり、お気にりの曲を脳再生したりと他のない暇潰しであった。
   だが、度々、あのアニメはこれからどうなるんだろうやら、今日の夕飯は何だったのだろうやら現世のことを考えてしまい、知るもなければ干渉もできない現狀に酷く悲しい気分になったりもした。
    
   そして、俺がこの空間に來てからで半日が過ぎたころ、ついに何もなかった空間に変化が生じた。
    
   真っ暗だった世界にが差し込んできたのだ。
   と同時に、の覚までは戻らないにしろ、音が聞こえ、風がじられるようになる。
      
   は段々と強くなり辺りを照らし、世界の形が見えてくる。
   俺がいる場所は――
    
   ――空だった。
    
   自分がいる場所が雲の上だということ、浮かぶわけでもなく自由落下を始めていることが分かり慌てふためく。
    
 (うぉお!?   なんでそうなるんだよ!   このままじゃあ死んじまうじゃねぇかって俺はもう死んでるんだったか!?)
    
落下をどうにかすることなどできるはずもなく、聲が出せないので代わりに心の中でんだ。
   もう、すぐ目の前に森のようなものが迫っている。
    
 (でも今意識があるってことは死んでない……?   いや、やっぱり死んでる……?   どっちにしろまたすぐ死ん――)
    
――ガサササゴシャッ。
    
   木々にぶつかり思わず目を閉じた俺は、また意識を手放すこととなった。
    
    
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   目が覚めると、そこは真っ暗な空間――ではなく、大きな木の下であった。
   どうせなら見知らぬ天井な展開を期待したものだが、どうやら落ちたままの場所にいるらしい。
   再びの死を迎えることにならなかったのは不幸中の幸いというものだろうか。
    
   さて、森に落ちたのは良いのだが、これからどうしようか。
   森で暮らすにしろ、出て行くにしろ、何かしら行を起こさなければならないのには変わりない。
   しかし殘念なことに、俺は今をかすことができない。
   がないのだから當たり前のことだが、どうにかして移だけでもしたいところである。
      
   そう思ってもがくようなイメージをすると、なんとがいた。
   というか、があった。
    
   視界にる小さな手。
   自由にはほど遠くかしづらい腳。
   支えられずにグラグラと揺れる頭。
    
   そのどれもがしっかりと覚を返してきている。
    
  ――生きて、いるのか?
    
   失ったはずのが、みが絶たれたはずの生が、今は強くじられる。
   覚からして子供の、それも赤子のなのだろうが、それでも生きているというのはそれだけで素晴らしいことだとじた。
    
   気付いたらがんでいた。
   なんてどこぞの探偵君みたいな狀況だ。
    
   と言っても厳には、これは転生ってやつで今俺がかしているこのは元の自分のではないのだろうけれど。
    
   俺は転生とかそういった方面の知識をそれなりに持っている。
   そのおで自分が置かれている狀況が何なのかはすぐに理解できたが、理解できたからこそ揺をじ得ない。
    
   転生したということはどういうことだ?
   ここは異世界なのか?
   なら剣や魔法のファンタジーな世界なのか?
   転生者の俺には特殊なスキルでもあるのか?
    
   転生モノのテンプレを思い浮かべ、あり得る可能を挙げていった。
   それに伴って揺が興に変わるのが自分でも分かる。
   俺は完全に転生という狀況に浮かれていた。
    
   浮かれていて、気付かなかった。
    
   なぜこんなに小さな子供が、森の中に放置されているのかに。
    
    
    お読みいただきありがとうございます。
    
    リアルが忙しい中書いていますので、元々執筆速度が遅いことに拍車がかかっています。更新が遅れることも多々あると思いますが、できる限り週一以上、週末に更新をする予定です。
    
また、この作品は「小説家になろう」でも公開しています。
お好きな方でお読みください。
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