慌てて走り去るマルティナを見送った後、トリスは再び目的地へと向かう。

｢はぁ、何かどっと疲れた〜。…いやいや。これから本番だ。気を取り直さないとな。｣

トリスは呟きつつも路地裏にり、魔道マジックアイテムを再起させてから屋に飛び上る。

｢さて、グレゴールちゃんの位置はどこかな〜？｣

先程の男達の言葉遣いを馬鹿にできないようなことを言いながら、屋から屋へと飛び移っていく。

因みにその男達はトリスがのした後、全員を縄で手を繋いでそれぞれに『強魔』という紙をっておいたので、今頃は騎士団のお世話になっている頃だろう。

｢ふむふむ。マップからするとカレンベルク商會の事務所に居るらしいな…。｣

好都合とばかりにニヤリとしながら言うと、更に速度を上げて走る。すぐに『カレンベルク商會』と大きく看板の出た二階建ての建を発見した。街並みは一階建てが多いため、かなり目立っている。それにプラスして敷地面積も400メートルトラックの半分程はありそうなので、より拍車がかかっている。

｢マップで見ていて分かってたけど、大分大きな商會なんだな。これは大分期待が出來そうだ。｣

トリスは商會事務所の2階の窓から中へとり込む。部は木張りの6畳ほどの部屋になっていて、今まで住んでいたのは石造りの城であったため、どこか日本に帰ったかのような気分になり安心が湧いた。

だが今の目的はグレゴールを探し出すことなので、急ぎ足で扉を開けて廊下に出る。勿論、近くに人が居ないかスキルの武神に含まれている気配探知で確認しつつだが。

廊下に出てまっすぐに進む。しばらく廊下を進むと突き當りになっていた。そして扉があり、その中にグレゴールの位置がマーカーで表示されていた。

しかしトリス自で扉を開ければ當然何か居るとバレるため、どうしようかとトリスは頭を悩ませる。

-誰かお茶でも運びに事務所の人が來るだろうし、10分位は待ってみるか。待ってみて誰も來なければ、普通にればいいしな…。-

と、トリスは考えるが待つ必要は無かったようで、すぐに廊下の先に書類を抱えた人間族のの姿が見えた。

『コンコン』

｢失禮します。書類をお持ちしました。｣

中からグレゴールが返事をする。

『ってくれ。』

その返事を待ってからはドアノブに手を出すかける。そのは書類を抱えているためか、大きく扉を開けたので『チャンス！』とトリスは心の中でびながら隙間から突する。

｢？｣

するとは部屋にる寸前で首を傾げる。

｢どうした？｣

その様子を不思議に思ったグレゴールがに問う。

｢いえ、なんでもありません。私のすぐ橫を何かが通り過ぎたような風が吹いたので。｣

その言葉にトリスは冷や汗をかく。

-くっ！この裝備にもまだ改良の余地はあるな！まぁ気配はじ取れないだろうから大丈夫だろうけどな。-

その後は特に何の問題も無くとグレゴールはやり取りをし、は部屋をあとにする。

その間話をしている間、トリスは部屋の隅に潛んでいたが、の位置報が部屋から遠ざかって行くのを確認してから魔道の機能を全て切る。

そして機に向かって何やら書類仕事をしているグレゴールに聲をかける。

｢どうも、こんにちは。｣

數秒間を置いた後、グレゴールは驚きでぶ。

｢…は!?だ、誰だ!?｣

｢ちょっと靜かにしてください。『防音結界サイレント・フィールド』。｣

防音結界サイレント・フィールドとは、風屬の初級魔法であり、者から一定距離の空間で発生した音を、その効果の範囲外には聞こえないようにできる魔法である。

｢魔法!?き、君の目的はなんだね!?…あれ？子供？｣

慌てていたが、すぐに目の前に居るのが子供であると分かり、々落ち著きを取り戻したようだ。

だが次の言葉で余計に混してしまう。

｢まぁ、子供かどうかは置いておいて、それよりも商談をしません？儲け話があるんですけど。｣

こうしてトリスは夢の第一歩を踏み出すこととなったのだ。