｢では、明日の正午過ぎから試験を始めますので、出來れば朝からギルドに顔を出しておいて下さい。｣

どこか呆れたように言うニーナ。どうやらトリスのことを、完全にアホな人だと認識したようだ。しかしトリスは一向に構う様子もなく、質問する。

｢この辺りで良い宿屋はありますか？｣

｢この辺りでしたら、々値は張りますが宿屋『平和の礎』がお薦めですね。ここから道なりに真っ直ぐ王城の方へと進めば、看板が出ているのですぐに分かると思います。あそこは料理も味しく、防犯にも気を使っていますので、お金に余裕のある冒険者は結構利用されていますよ。｣

｢なるほど。分かりました。じゃあ今日はそこに行ってみます。｣

トリスは軽く會釈してからギルドをあとにする。一応地図で宿屋を検索しつつ歩き出すと、ギルドから4つの赤いマークの點が出てくるのが地図に表示された。

｢何だこれ？｣

通常では知り合いは青、他人はオレンジで表示されるのを確認している。しかし赤は見た事が無いのだ。大は予想外がつくが、念の為路地裏にり気配を消して様子を見ることにした。

『おいっ！彼奴はどこ行きやがったんだ!?』

『知るか！一本道の筈なのに、もう見えねぇじゃねぇかよ！』

『落ち著け！俺にはあっちの路地裏にって行った様に見えたぞ。』

『よし、追うか！』

そんな聲が聞こえてきた。予想通り、敵対者は赤表示になるようだ。そしてトリスが脇に居るとも知らずに、路地裏へと駆け込んで行く。そしてし大通りから離れた場所まで來たところで、トリスは後から聲をかける。

｢よ！お前達！目當ての人は見つかったのか？｣

｢な!?｣

｢いつの間に後に!?｣

｢しかしこれは丁度いいぞ！まさかノコノコ自ら姿を現すだなんてな。｣

｢そうだな！｣

男達は頭の悪い會話をしている。そんな様子に、トリスは嘲笑を浮かべながら問う。

｢で、俺を探して何の用だ？ま、お前らみたいなアホの考えることなんて、誰でも分かるけどな。｣

｢うるせぇ！分かってんならさっさと金出しやがれ！｣

｢このDランクパーティ白狼の爪が、ありがたく使ってやるからよ！｣

男達は口々に勝手なことを言ってくる。しかしその隙に弓使いと思しき男は、しトリスから距離を取っている。流石にただのゴロツキとはレベルが違うようだ。しかし所詮はDランク。トリスの煽りに見事に乗ってしまう。

｢なに？白狼の爪？プッ！思いっ切り名前負けしてるじゃん！｣

｢てめぇ！立場分かってんのか!?死ね!!｣

先走った前衛職の男が剣を抜いて斬りかかってくる。弓使いが完全に配置につく前にだ。そうなれば當然連攜は取れなくなる。

數分後、路地裏には仲良くおねんねしている4人の男の姿があったそうな。