《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第53話 戦闘が開始するようです
勇者達との戦いが今始まろうとしている。
俺達と勇者達は睨み合いが続いており、互いの向を探っている狀態だ。
『まずは俺とタクマで1対1で戦うために、タクマと他3人に分斷する必要がある。その役目をミルに任せたい。いけるか?』
『ん。まかせて』
『よし、じゃあミルに任せる。ミルの分斷が功したら、さっきも言ったように殘り3人の対処を任せる』
『『『『『分かりました』』』』』
『シロも皆の方について行ってくれ。いざとなったら逃げても構わんからな』
『ニャッ!』
よし、今はこれで十分だろう。後は実際に戦わなければ分からない。
『それじゃミル。やってくれ』
『ん』
俺の合図と共にミルはしゃがみ込み、地面に両手をついた。
その瞬間、地面から生えるように出て來る氷が、凄いスピードで勇者達の方に向かっていく。
「各自散開!」
タクマがそう言うと勇者達は二手に別れた。狙い通り、タクマ1人と他3人で分かれることが出來たようだ。
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ミルの放ったその氷は蛇行しており、勇者達のところに著く時に上手く導することが出來たようだった。
そして、地面から生えるように出來た氷は2、3メートル程あり、ほとんど壁と化していた。
『ナイスだミル。皆、後は任せた』
『マスターもがんばってね!』
『主様。無事に戻ってきて下さい』
『ん。勝ってくる。心配無用』
『私達も全力で戦ってくるわ。なのに貴方が気を抜いたりしたら承知しないわよ』
『ああ、分かってる。こっちは任せろ』
俺はそう言って念話を切り、タクマが散開した方に向かった。
「クソッ!やられた…!早く皆の所に…!」
俺が向かった時、タクマは分かれた他の3人の方へ行こうとしているところだった。
「おっと。お前をこの先に行かせる訳にはいかないんでね。俺の相手をしてもらうぞ」
そう言って俺はタクマの目の前に立つ。
タクマの強い殺意が俺に突き刺さる。さっきまでの殺意とは比べにならない。
「これが貴様等の狙いか!ならばみ通りやってやる!」
今にも斬りかかってきそうな雰囲気で俺に剣を向けてくる。
だが俺はタクマとは違い、戦闘をする雰囲気を出さなかった。
タクマそれが気に食わなかったのだろう。その顔に怒りの表を浮かべた。
「貴様!俺を馬鹿にしているのか!ふざけるな!」
「まて、そんなに大聲を出すな」
「だまれ!」
えぇー…。あまりにも理不盡すぎるんですけど……。
「なぜ戦おうとしない!貴様は一何がしたいんだ!」
「……いいだろう、質問に答えてやる。……今、俺はお前達が一何を焦っているのか知りたい。それを知るまでは戦いという戦いはしない。もしその焦りがくだらないものであれば俺は全力でお前を潰す」
「……ッ!そんなもの貴様に教える義理はない!」
タクマは怒りに任せて、俺に斬り込んできた。その怒りに任せたきは速く、目に終えるものではなかった。
気付いた時には、俺の左腕が宙を舞っていた。
遅れるようにして左腕に激痛が走り、切り口からはが流れ出る。
「ぐわあぁぁ!」
痛い痛い痛い痛い痛い!左腕が焼けるようだ!
《痛覚遮斷を獲得しました》
痛覚遮斷か…!今はそれに頼るしかない…!
俺は今獲得した痛覚遮斷を使い、痛みをじないようにした。そして、切り口は自己再生が発してが止まり、新しく左腕が再生していた。
「……貴様一何者だ?人間の姿をした化けか?」
「……いや、違うと思うが……。どうなのだろうな……。お前から見たら俺は化けか?」
「當然だろう。腕が再生する人間なんて聞いたことがない」
「ですよねー。……だがな、俺から見たらお前達の方がよっぽど化けに近いぞ?」
「なんだと…?」
「お前は今どんな速さで俺に斬ってきた?お前の様な速さは既に人の域をこえていると思うぞ」
ドラゴン討伐の時のエルシャさんも速かった。だが、エルシャさんの速さは辛うじて目で終えた。
だが、タクマの速さは違った。目で追うとかそういう次元を超えていた。あれを対処するのは俺では厳しいだろう。
そのタクマは俺が言った事が、実際その通りだとじたのだろう。さっきまでの殺意がなくなっていた。
「俺は一いつからこんなになってしまったんだ……。いや俺だけじゃない…。あいつらも……」
「ちょっとは落ち著いたようだな。今のお前ならんな事が見えるんじゃないのか?」
「貴様に言われなくても!……いや、違うな……。貴様に言われたからだ。不本意だがな」
「最後の一言は余計だ!素直に謝出來んのか!」
「……ふん」
「いけ好かない奴め…。まぁいい。それで、俺の質問に答えてくれるか?」
「……いいだろう。と言っても自分では、何に焦っているのかなんて分からないんだがな」
「分からないならそれでいい。だが、その代わりにお前達が何を目標にこの世界を生き抜いて來たのか教えてくれ」
これは俺の聞きたかった事でもある。勇者達が何を目標にしてきたのか。それが分かればタクマ達の焦りの原因も分かるんじゃないのだろうか。
まぁそこのところは俺の推理になるんだがな。
「目標か……。俺達の目標は唯一つ。それは元の世界に戻る事。戻りたい理由はそれぞれだが、元の世界に戻るという気持ちだけは同じだ」
そうだったのか。元の世界に戻るために……。俺に分からないわけだ。俺は元の世界では既に死んでいるからな。
第一、俺はあんな世界に戻りたくもないというのがある。それでこの世界に來たんだからな。
「元の世界と言ったな。それは地球の日本じゃないのか?」
「……何故それを貴様が知っている?」
「俺の容姿を見たら分かるだろ?」
「……そうだったのか」
「まぁ俺は死んでこの世界に転生したんだがな。…そんな事は今はどうでもいいな。それで?元の世界に戻るために魔王を倒すのか?」
「あぁそうだ。魔王を倒せば元の世界に戻れる」
こいつ、魔王を倒すと元の世界に戻れるって確信している…?
「何故言い切る?」
「ヨハン――教皇がそう言っていたからだ」
ここで教皇か……。
「お前、教皇を信じているのか?」
「いや、俺は教皇を信じている訳では無い」
「ならどうして元の世界に戻れると言い切った?お前の言は矛盾しているぞ」
「……ッ!……俺は最初、帰れるかもしれない位にしか思って無かったはずだ……。いつからだ?いつから帰れると思うようになった?」
「お前達がそれだけ切羽詰まってたという事だろうな。だから言っておく」
「……何だ?」
「魔王を倒しても元の世界に戻る事は出來ない」
タクマはそれを聞いて俯いてしまった。おそらく、さっきまで疑うこともせずに信じていた事が、がらりと崩れ去った為だろう。
「それでもお前は魔王を倒すのか?」
「俺は……。俺はそれでも魔王を倒す。その為に今まで死に狂いで戦ってきたんだ。それを無駄にする事は出來そうにない」
「それがお前の答えか。……俺はお前を魔王の所には行かせない。そう約束してるからな」
そう言って俺は刀を構える。タクマも同じく剣を構えた。
この戦いはお互いの信念のぶつかり合いだ。負ける訳にはいかない。
「ここは絶対に通さない!この命にかえても!」
「今日までやってきた事が無駄では無かったと証明する!」
そして、刀と剣がわり、音を立てた。
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