《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第66話 武を試すようです
ウルフがいると言われる山にって數分。俺達は山の頂きを目指し進んでいた。
その山には道という道はなく、木々の合間を歩いていく。山なだけあって登るのは大変で、足場が悪い。
「こんなところでウルフと戦うのか……。ちょっときつそうなんだけど」
「そうかもしれませんね。こういう足場の悪い所で戦うのははじめてですから」
「だよな。何事もなければ良いんだが……」
「あ、あるじさま、怖いこと言わないで下さい……」
「大丈夫!何かあってもマスターが助けてくれるから!」
「最初から助けてもらう前提なのはどうかと思うぞ」
「とか言っても、どうせあなたはそうするつもりなんでしょ?」
「ほっておけないとか言いそう」
「いやまあ、そうなんだけどさ!なんかもっとこうあるだろ!」
「あんまり大聲出さない方がいいと思うのだけれど。魔に見つかってしまうわよ?」
「全くもっておっしゃる通りです。すいません……」
なんか気付いたら俺が悪いみたいになってるんですけど……。
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俺が呆れて溜め息を1つついたその時だった。俺の知が、山の頂上付近に無數の敵対反応が現れたのを捉えた。そして、その全てがこっちに向かっている。
え?これってほんとに俺のせいだったりする?俺が大聲あげたから?分からんがとりあえず皆に謝っておこう。
「皆、先に謝っとくわ。ほんとごめん」
「いきなりなによ。なにか悪いことでもしたの?」
「俺の知に敵対反応か出てきてな……。しかもそれ全部こっちに向かってきてるんだ」
「ちょっとなんでそれを先に言わないのよ!普通、謝るよりもそっちが先でしょ!」
「人間、気が転すると思いがけない行に出てしまうものなのさ。俺が先に謝ったみたいにな」
「こんなところで悟ったこと言ってるんじゃないわよ!早く正気に戻りなさい!」
ジュリは俺の頭を叩いた。結構強めに。確かに正気じゃなかったかもしれないが、そこまで強く叩くことなくね?
だがまあ正常な判斷はできるようになったと思う。次にしないといけないのは指示出しだ。
「皆は武を構えろ!いつ襲われても対処できるようにしておくんだ!」
ここは山の中。さっき話したように足場が悪い。戦いにおいて、足場は重要だ。踏ん張ることが出來なければ十分な威力が発揮出來ないばかりか、逆にやられる可能もある。
しかもだ。足場だけでなく、視界も悪い。木々が邪魔をして先が見えない。果たしてこんな中で十分に戦えるのだろうか。
既に敵対反応はすぐそこまで迫っている。
「もうすぐ來る!危なくなったら知らせろ!俺がそっちに向かう!」
俺の指示に真剣に頷き、武を構えた。
「接まであと3、2、1……。來た!」
そして、現れたのは俺の長と同じくらいの大きさをした狼の群れだった。數は分からない。大きすぎて後ろが確認出來ないのだ。
ウルフは俺達に鋭く尖った牙を向け、涎を垂らしながら様子を見るようにじっと睨みつけてくる。
「ちょっと皆?これ予想してたよりやばくね?」
「うぅ……。あるじさまぁたすけてぇ……」
リンなんてもう戦意喪失してるし。
「こんなに大きいなんて聞いてないわ」
「これウルフじゃなくてフェンリルレベルだろ……」
「強そう。戦ってきていい?」
「おいこらミル。自分勝手はだめだぞ」
「ん」
俺達が話しているとウルフ達が一斉に襲いかかってきた。俺はそこでふとした違和を覚えた。
普通だと魔が一斉にくとしても何匹か出遅れるやつか、早く出るやつがいるはず。だが、こいつらにはそれがなかった。ちゃんと見ていたが、何か合図を出しているわけでもなかった。
という事であるならば、こいつらは……。
俺がその事に気付いた時にはもう戦いは始まっていた。
俺は向かってくるウルフと戦いながら、萬が一がないように皆の方を確認した。
確認した俺の目にってきたのは使い慣れていない武で戦っている皆だった。
レンとリンはスキルに剣、槍があるため比較的よく戦えている。け流し、払い、突き、切り。様々な攻撃で、ウルフに傷を負わせていく。
リンの方はし腰が引けているようだが、見たじ大丈夫そうだった。
しかし、スキル無しで扱っているゼロ、ミル、ジュリはまだ上手く使うことが出來ていない様だ。
短刀を使っているゼロはそのリーチの短さ故に攻撃を仕掛けても躱され、逆に攻撃をけそうになっている。
ジュリは細剣を使っているので突きが基本だ。しかし、どう突けば良いのか分からないようで傷が淺かったり、タイミングが合わずに攻撃が外れてしまったりしている。
ミルもゼロと似ている。リーチの短さが足を引っ張り、攻撃が出來ていない。
3人ともちょっときつそうだ。ウルフの攻撃はギリギリで避けてはいる。だが、避けているだけで攻撃は出來ていない。これだと疲れはじめると攻撃をけ始めるだろう。
俺は念話で3人に助けがいるか聞いてみることにした。
『皆大丈夫か!もしきついならそっちにいくぞ!』
『あたしは大丈夫』
『わたしもー!』
『私もちょっと試したいことがあるし大丈夫よ』
『そうか。だが危なそうになったら俺が獨斷で助けに行くからな』
大丈夫だと言われた俺は念話を切り、向かってくるウルフに対処しながら3人を見守った。
最初に変化があったのはジュリだった。ジュリは自分の細剣を地面に刺すと何かを呟いた。すると、その細剣は宙に浮き、數が増え始めた。最終的な細剣の數は全部で7本。
「あの時戦ったアイカが使っていた技の劣化版でしかないけど……。これでいくわ!」
ジュリはそう言って、何かを呟き始める。すると、6つの細剣が飛んでいく。それぞれが意志を持っているかのようにき、そして、ウルフに深く深く刺さる。
その間のジュリは無防備すぎて、ウルフの格好の的となっていた。しかしそれは手元に殘した細剣からでている結界によって防がれていた。
……なにあれ、強すぎじゃね?どうやったらあんなこと出來るんだ?
俺がそんな事を考えてると、ゼロが何やらんでる聲が聞こえた。
「マスターの真似するんだもん!転移!いっけぇぇぇ!!」
ゼロはウルフの上に転移し、首を切り落とした。
確かこれはドラゴンと戦った時に俺がやったやつじゃないか?何も聲出すところまで真似しなくても……。
それからもゼロは転移してウルフ、足を切り落としたり、首を飛ばしたりしていた。
ジュリとゼロはもう大丈夫だな。ミルの方はどうだ?ミルも何かしているのでは?
そう思い、ミルの方を見てみると案の定やっていた。
ミルは魔力転化で帯びた雷を短剣に流している。それだけならまだいいのだが、なんとミルはそれを投擲したのだ。しかも短剣の形をした雷だけを。
雷というのは目で負えない程の速さを持っている。そんなものが短剣の形をして飛んでいったらどうなるか。そんなものは一目瞭然だ。
ただウルフを貫通して、その先にある木々も貫通する。
強すぎて笑えないぞ、こんなの。
いや確かにミルは暗使い持ってて、武の投擲は得意だろう。だが、雷だけを投げるってどうよ?普通ありえんだろ。
だがまあいいか。なんだかんだ武を使いこなせているようだし。
それから戦い続けて數分。未だにウルフは襲ってくる。さすがに消耗してきた。
「ちょっときついわね……。どうする?」
「ちょっと逃げた方がいいかもしれない」
その時だった。良く見えないが奧の方から純白で巨大な何かが威圧全開で現れたのが分かった。
ウルフ達はその威圧によって逃げていく。それによって巨大な何かの正が分かった。
「ガウガウ!」
鳴き聲からもわかるように虎だ。狼の次は虎かよ……。なにそれ鬼畜じゃね……。
「ニャ!」
「ん?どうしたシロ?」
「ニャンニャン!」
「なるほど。この虎がお母さん……と。……えっ?お母さん!?」
「ガウー?」
「ニャニャ」
まさかこんなところでシロのお母さんに會うなんてなあ。何が起こるか分かったもんじゃないな。
「ニャンニャン!」
「マスター!シロはなんて言ったのー?」
「なんかお母さんに付いていってって言ってる」
「それなら行きましょうか」
「そうだな。行ってみるか」
こうしてウルフ討伐にきた俺達は何故かシロのお母さんに付いていくことになったのだった。
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