魔力が枯渇して気を失いそうだった俺は、誰かの手によって魔力が復活した事によって、気を確かに持つことが出來るようになった。

霞む目をり、重いを無理矢理起こす。次第に視界も晴れ、目の前にいる存在を改めて認識する。

俺からは後ろ姿しか見えない。だがそれでも、その姿は慣れしたんだ、あの達のものであるとすぐに分かった。

六人の。

それは今から約二週間前に、戦わせたくないと俺の勝手な想いで自分から遠ざけた仲間達。

徐々に覚醒していく俺の頭が、混を始める。

幻を見ているのではないかと、初めはそう思った。だが、聲もはっきりと聞こえるし、達と対峙する勇者も達を見據えている。

この事からこの達は俺が見ている幻の存在などではなく、実際に、実を持ってそこに立っている存在だということが分かる。

しかし、それが分かっても混はさらに酷くなる。

何故ここにいるのか。どうしてここに來たのか。なんで戦いに參加するのか。そんな疑問ばかりが頭の中を支配していく。

「どうして――」

堪らず口かられた言葉に、達のうちの一人がしだけ振り向いて、一言俺に返す。

「仲間だからよ」

その一言がどれだけ俺の心に響いたかなど誰にも分かるまい。

己の勝手な都合で仲間を捨てたにも等しい行為をし、更には自分一人だけ死んで楽になろうとしていた俺に、『仲間だから』と言ってくれる事がどれ程を締め付けたか。

この二週間、ずっと罪悪をじていた。でも、一度我儘をしてしまえば、それを通さなければ戻ることなんて出來ないと思った。それは俺のくだらない自尊心が働いたからだ。

だから、意地を張った。自分はちゃんとやっているんだという裁を取りたくて、初めに聖王を救出した。

それを冷靜に見ている自分もいて、自分が嫌いになりそうだった。何様のつもりだと思った。

國王に諭され、帝王に糾弾された。俺のやり方は間違っていると。

言われた通り全て間違っていた。俺のやるべき事は意地を張って我儘を通す事では無かった。

今、そう思えた事も『仲間だから』と言う言葉を彼達から聞いたからだろう。

「後は任せなさい。私達だってずっとやられっぱなしじゃないのだから！」

達は一度殺された、ゼロに限っては二度殺された相手の勇者に悠然と立ち向かう。

一切の迷いも無く、そこには強い想いだけがあった。

「ねぇ、皆が來てくれたよ……。皆があなたの事守ってくれたよ……」

神が俺の隣に歩いて來て、噛み締めるようにそう伝えてきた。

「辛い時に支えてくれる人がいて、誰かの為に戦う事が出來る。……やっぱり皆は仲間なんだよ」

「…………」

俺は答えない。その資格が無いとそうじだからだ。

今だに達は勇者と対峙したままで、いていない。俺達の話を聞いているように思える。

「…………ん……」

そんな時、タクマから短い吐息がれる。さっきまで寢ていたのだが目を覚まし、上を起こそうといている。

「タクマも起きてきたようね」

「マスター、あとはわたし達に任せるのー！」

「主様がいなくなる事に比べたら、勇者と戦う事など些細な事です」

仰々しい言いをするレンだが、そこには一切の噓がない事が読み取れる。

「あたし達強いから」

「もうあるじさまに捨てられないようにするんですっ」

「目が覚めたら皆バラバラなんて悪夢かと思ったしね」

しおどけて言うフェイからも全く噓のじはない。

「どうしてそこまで――」

「どうしてって、マスター分からないの？皆マスターの事好きだからだよ？」

「でも――」

「でももへったくりもないわよ。々言ったけど、全てはゼロの言った一言で片付くのよ。私達はあなたが好きで、死んでしくないからここにいる。本當はそれだけよ」

皆の視線が俺に集まる。俺は見られている事に居心地の悪さをじて肩をすくめた。

しの沈黙が訪れる。それは何秒だったか。若しかすると數分だったかもしれない。何を言えばいいのか分からなかったのだ。

「…………ここは……」

その沈黙を破ったのはタクマの一言だった。

完全に目を覚ましたタクマは、俺の思った通り正気に戻っていた。今までの虛ろな目はしていない。

そんな時、戦場に一本のの柱が顕れる。そのには一切の殺傷能力もなく、ただ人を照らしているだけのように見えた。

「ニーナが始めたようね」

「ニーナが……」

ジュリが言葉にした人になからず驚く。

ニーナとはほんの數十分しか一緒にいなかったが、教皇を止めたいという想いは本だったのを覚えている。その想いが、ニーナを駆り立ててこの戦いに參加しているのだろう。

「私達ももう始めるわ。勇者達ももう待ってくれないようだし。寧ろ今までよく待っててくれたわ」

「もう負けられないもんね」

「フェイの言う通りよ。ここで負けたら何もかもがおしまい。だから皆で勝つわよ」

ジュリの言葉に達が頷く。

何と頼もしいのだろう。後ろ姿しか見えなかったが、彼達の想いが充分に伝わってくる。

俺の頬にふと何かが流れる覚がした。れてみると頬がっていて、その原因となっていたのが俺の目から流れる涙だった。

無様にも泣いているのかとそう思った。あれだけ自分勝手をしておきながら、それでも優しい仲間達を見て嬉しくて泣いているなどと。

そして俺は彼達に願いを込めた頼み事をする。自分でも格好悪いと思う。それでも彼達に向かって願いの言葉が出てしまった。

「皆を助けてやってくれ……」

「任せなさい。言われなくてもやってあげるわ」

そうして達は勇者へと突っ込んで行った。