《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第178話 達の二週間、その二のようです
達は勇者と剣をえる。その心に彼への想いを攜えて。
勇者はそんな達をどう思っているのか。虛ろな目、変わらない表では何も分からない。
「待ってなさい。今私達が助けるから」
達は虛ろな目を信念の篭った目で見つめ返して、そう宣言した――。
◇◆◇◆◇
ーside:ジュリー
私はリンとニーナの所についてすぐ、話し合いを始めた。
私以外の二人もこの狀況に混していた。特にニーナは実の父に殺された事で、最初は口を聞けないほどだった。
それでもあの戦いで最後まで殘っていた私は、二人に何があったのか、目覚めてから何をしたのかを丁寧に話した。無論、彼からの手紙も彼達に見せた。
リンは悲痛な表でその目から涙を流し、ニーナはどうしたらいいのか分からないようだった。
「あ、あるじさま……! 置いて……置いていかないでくださいっ……」
リンは純粋な子だ。一人だけ先に行った彼への想いが人一倍強かったことも知っている。だからこそ、彼が目の前からいなくなってしまったショックが大きいのだと思う。
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「こんな狀態で悪いと思うけど話をさせて貰うわね。私はなんでこんな事になってるか分からないし分かりたくもないわ。だから、私はいつも通り彼の所にいようと思う」
「「え……?」」
リンとニーナは私が言っている意味がすぐには分からなかった。だから、私は続けて話をする。
「私は彼の元に向かうわ。そしてなんでこんな事を一人で決めたのか、なんで一人でやろうとするのか問い詰めてやるわ」
「「――っ」」
「二人はどうするの?」
二人に質問を投げかける。私はどんな答えが返ってきても、その答えを尊重するつもりだ。
「わたしは、あるじさまに、逢いたい!」
泣いていた事もあって、つっかえながらだった。でもリンは彼に逢いたいという想いで、く事を決めた。
「ニーナはどう?」
「私は……」
ニーナは俯いてしまいその先の言葉は聞けなかった。
それから暫く沈黙が続いた。ニーナは何かを言おうと懸命に言葉を探している事が分かっていたから。
「……私はお父さんがやってる事を止めさせたい」
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ニーナが重く閉ざしていた口を開いた。その口かられた言葉は、家族を憂う優しいものだった。
「お父さんがやってる事は悪い事だって分かるし、関係ない人を巻き込んじゃってるのも知ってる。あの人が言ってた見たいにもう私の言葉は屆かないのかもしれない」
自分自分かっているのだろう。教皇にとってニーナは『娘』ではなく『敵』になっている事が。
それでも彼はたった一人の家族だから、の繋がった父だからと言って諦めないでいる。
だから私は彼の背中をしだけ押して上げる事にした。
「彼の元に行けば、お父さんに會えるはずよ。最後のチャンスになると思うわ。あなたの心からの言葉をそこでかけてみたらどう?」
「お父さんに會える……」
ニーナは一瞬の逡巡のうち、心を決めたようだった。
「私も行く。行ってお父さんを説得する」
皆が彼の元に行くことを決めた。言い方は悪いが、予定通りだ。
私はさっきこの部屋に侵してきた蝙蝠に聲をかけた。
「話し合いは終わったわ。何か用なのでしょう?」
「全く、君達には適わないよ」
蝙蝠の変を解いて、悪びれる様子もなくそう言う魔王。私は思考解読で蝙蝠が魔王だということは分かっていた。そしてこの魔王が本でないことも。
「実はミルに迎えに行けって言われてね。分を蝙蝠に変させて飛ばしたんだ。斯く言う私が分だがね」
「ミルの考えている事も大分かるわ。私も同じ事を考えていると思うし」
「じゃあ君達はどうするんだい?」
「私達を魔王城に連れて行って。そしてミル達と合流させてくれないかしら?」
「大想像していた通りだね。ミルがあんなだったから想像に易かったよ。じゃあ捕まってくれるかな?」
「ちょっと待って。旅に出ますって置き手紙して置くわ」
近くにあった紙と羽ペンで『行ってきます』と置き手紙を書いて、部屋の外から分かるように、ドアにった。
そして、私とリン、ニーナは魔王の分に捕まって、魔王城に転移した。
◇◆◇◆◇
ーside:フェイー
「レン!」
「フェイ様ですか。ご無事で何よりです」
「うん。レンも無事で良かった」
私は束の間の再開を喜んで、レンのそばに駆け寄る。
「フェイ様はこの狀況がどういう事なのか分かりますか?」
「ううん、分からない。でもこれあの人からの手紙」
私はレンに彼の手紙を手渡した。
その手紙を読んだレンはしの間悲しそうな顔をした。やはり、レンでも置いていかれたという事実は堪えるのだろう。
「大の事は察しました。主様は私達を置いて先に行ってしまわれたのですね」
「私もよく分からないけど、そうみたいで……。だから私、レンにどうすればいいか聞こうと思ってここにきたの」
「そうですか……」
レンもどうすれはまいいのか混中なのだろう。複雑そうな顔をしている。
「フェイ様はどうしたいとお考えなのですか?」
「それはやっぱり皆に會いたいよ。お別れの言葉もなしに離れ離れになるなんて、そんなの嫌だよ」
私はあの人の手紙を読んで強くそう思った。
仲間と呼べる人達と、今まで過ごしてきた日々は私の人生で一番の寶と呼べるくらいにはなっていたから。
そんな寶をくれた仲間達と言葉無しに別れるなんて嫌だった。考えられなかった。
レンは私のそんな気持ちを知っていたのだろうか。
「私は、主様と離れるなど考えられません。出來る事なら今すぐにでも主様の元へ行きたいと思っています。ですが、この狀況が主様がどこにいるのか分かりませんし、フェイ様と二人で行するにしても出來ることがないと思われます」
「そうよね……」
だけど、レンは私達だけではやりたい事も出來ないと言う。
じゃあどうすればいいのか。その答えは簡単に出てくる。
「この手紙には皆の場所が書かれてあります。私の考えでは、もうそろそろ誰かが行を起こすはずなのですが――」
その時、一匹の蝙蝠がこの部屋の中にってきた。
れる隙間もないのにどうやってってきたのか疑問にじる。
「――來ましたね」
「え?」
「レンちゃん、流石だね。すぐに分かるなんて」
蝙蝠はそう言って、変した。そこには何度か見た魔王様がいた。
という事は変したのではなく、変を解いたと言った方がいいのかもしれない。
「ミルに言われれて迎えに來たんだ」
「迎えに?」
「うん。私と一緒に來るかは、君達次第だけどね」
「私は魔王様に同行させて貰います。主様に會えるかもしれませんし、何より皆に會えると思いますから」
「分かった。フェイちゃんはどうするんだい?」
レンは即決だった。元々、こうするつもりだったのかもしれない。
レンの言った通り、魔王様に著いていけば皆にまた會えるはず。離れ離れになる事があっても、お別れの言葉くらいはわせるようになると思う。
だったら私の答えは一つだけ――
「私も行きます」
「分かった。じゃあ私に捕まって」
私は一応、紙に『し外に出ます』と書いてから魔王様にれた。そして、私とレンは魔王城へと旅立った。
◇◆◇◆◇
ーside:ミルー
「ミル、皆來ると思うー?」
「間違いなく來る」
「なんで分かるのー?」
「皆仲間と一緒にいたいから」
「おぉー」
あたしはパパからの連絡を待っている間、ゼロと二人で話をしていた。
ゼロとは今まで何回も二人で話す機會があったから、別に珍しくもない。彼はそれを知っていて、この振り分けをしたのだと思っている。
「もうすぐ初めの返事が返ってくる頃だと思う」
あたしがそこまで言ったら、この部屋にパパがってきた。
「言われた通りに返事貰ってきたよ」
「どうだった?」
「ほら、これが返事だ」
どれが返事なのか検討もつかなかったけど、パパはそう言った。
するとパパの背後から誰かがこの部屋にってきた。
「ミル、遅くなったわ」
「た、ただいま到著しましたっ」
「お世話になります……」
「おぉ!ミルの言った通り皆來たのー!」
ここに來たのはジュリ、リン、ニーナの王國にいた三人だった。
三人とも來てくれたようで良かった。心でほっとしていた。
「まだいるよ」
「皆様お揃いですね。遅れて申し訳ございません」
「み、皆ー!會いたかったよ!」
「レンとフェイも來た」
これで全員集合だ。予想通りとは言っても、現実になるととても嬉しくなる。
仲間がいるって言うのは重要なんだと改めて思う。皆と一緒にいると心強さが全然違うのだ。現にさっきまでの心細さはもう無くなっている。
「どうだいミル?いい返事貰えたかい?」
「うん。最高の返事」
確かに最高の返事に違いない。本當にそう思っている。でも、皆の顔は浮かない。
何が原因なのかなんてすぐに分かる。この場に彼がいない事だ。
今まで彼の提案からやる事なす事をしてきた。その彼の存在はやっぱりあたし達の中で大きなものになっていた。
「皆に聞きたい。あの人の所に行きたい?」
あたしは一人一人の目を見た。頷いたり、ただ何もせず目で語ったり、反応はそれぞれだったけど、答えは皆一緒だった。
「じゃあまずは皆の分かっている事と、パパの知っている事を合わせて今の狀況の整理から始めよ」
「そうね。彼がどこにいるのかも分からない今ではそれが最善ね」
「では、私達の方から報告させていただきます」
こうして、皆をえての話し合いが始まった。
あたし達の分かっている事は大一緒だった。彼からの手紙からの推測と、各王様から聞いた話という手がかりだけだった。
そうして皆の認識を一致させたところで、パパからの話を聞くことになった。
彼が一人で行を始めたのは三日程前。それには神とシロが同行しているが、神はただ付き従っているだけらしかった。
そして一番重要な事が語られた。
彼は勇者を助けた上で教皇を殺そうとしていると。
あたし達は息を呑んだ。あの勇者をたった一人で相手して救う。そして教皇まで殺そうなんて、到底無理だと思ったからだ。
けれど、それでも彼はやると言っている。そして行を起こした。
その事を知ったあたし達の間には暫く、沈黙が続いたのだった。
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