《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第181話 達の二週間、その五のようです
勇者は殘すところ、あとミユキだけとなった。
達はそれでも尚、彼を侮ること無く攻め続ける。
ミユキは魔法の使い手なだけあり、迫り來る達をいなす様に魔法を放っていく。時には土魔法で、時には風魔法で、対処していく。
そして達が恐れていた事がとうとう起こってしまう。
「を守る為に……」
ミユキが、ユニークスキルを発させる。
「絶対に止まらないで!」
達は縦橫無盡に駆け回り、ミユキへ距離を詰めていく。
そして、ミユキは自分のを無數の風邪の刃で傷付ける。――否、傷付けたように見えた。
傷付けたはずのには何の異常もなく、達の背後の芝が舞い上げられ、達の背を追うようにして流れていく。
「そのままミユキに突撃よ!」
達は最後の力を振り絞りミユキへと突撃を開始する。
ミユキのユニークスキルにやられないよう不規則なジグザグで走り、間合いを詰める。
ミユキは達を捉えることが出來ない。懐への侵を許してしまう。
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ミユキの懐へと忍び込んだのは隠が使えるミルであった。そのミルは至近距離から、暗を使い頸脈を掻っ切った。
シャワーを浴びるかの如く、酷く返りをけるミル。
ミルの目の端からは赤の涙が流れているようにみえる。
「終わった……」
今この時、三度にわたって勇者と戦った達は、初めての勝利を摑んだのだった――。
◇◆◇◆◇
ーside:ジュリー
ニーナは巫という特殊な存在である事が分かった。
調べてみると、巫というのは神の力を代行して使えるようだ。神と比べるとし劣化するが、悪魔を浄化するのにこれ以上のものは無いと思う。
そしてその神の力を代行して使うというスキルが神力だった。
神力は、神の力を魔法のように発させるというスキル。これにより、神力を自在にれるようになるという訳だ。
「ニーナ、あなた凄いわ」
「え?」
「あなたにも戦爭に參加してしいくらいよ」
「なら……」
「でもいい?戦爭に參加するって事は自分の命が危険に曬されるってことよ。それでもやるの?」
「それは怖いですけど、お父さんを止める事ができる可能があるならいきます!」
「分かったわ。でも、自分のは自分で守って貰うわ。多分私達もあまり余裕が無いと思うから」
「はい」
そして私はニーナに、巫と神力、そしてこれらが、戦爭に使われる悪魔に有効である事を伝えた。
ニーナは初めは自分の力に戸っていたけど、すぐに納得したようだった。教皇を助ける事が出來るならと、そう思っていたようだ。
「やあ、遅くなって済まなかったね。取り敢えず報を持ってきたよ」
一段落ついたところで、タイミングを見計らったかのように現れた魔王。
「パパ、早く教えて」
「分かっているよ。じゃあまずは、戦闘なる場所から。これは恐らく大陸の中心だね」
「中心?」
「そうだね。各國の軍がそこに向かって移を開始したんだよ。どうやって敵の出撃報を手したのかわ分からないけどね」
出撃報を手したのは彼のおだと思う。彼なら何でも出來るような気がするし。
「次に戦いの時間だけど、これは全く分からない。済まないね」
「いえ、魔王の力があれば戦いになってすぐにそこに送って貰えば殆ど差はないはずだから、気にしなくていいわ」
「そうかい?ならそうするよ。それでお詫びと言っては何だけど、彼が何してるか分かったからそれも報告するよ」
彼の報も手出來たみたいだ。報を手する事に長けてるなと思う。
「彼、ここ何日か各國を回って準備とか手伝ってたよ。そのおかげもあって、もうすぐ戦爭への準備が完全に終了するみたい。いやー。彼ってすごいね」
「そんなの當然」
「何でミルが威張っているのか分からないけど、それだけじゃないよ。彼は夜寢泊まりしているところが聖國の王城なんだけど、どうやらそこのシャール王が彼の事を気にったみたいなんだよね。偶然僕の使い魔が、『私、あの方をお慕いしております』って聖王に言っているのを聞いたん……だ……?え、な、なに?怖い顔してるよ……?」
「あの人は!また懲りも無く甘い言葉でも掛けたわね!」
「私も同じ経験をした事ある!王で自分のにコンプレックスがあって引きこもってたのに、そのコンプレックスを馬鹿にするどころか、可いって!そんなの初めて言われたし!なんかがドキドキした!あの人ほんと質が悪い!」
「マスターってタチが悪いのー?」
「ゼロ様の思っている様なタチではないと思いますよ?」
「そーなのー?タチってマスターのおち……」
「それ以上はダメよ、ゼロ」
「んー?わかったー!」
ゼロの天然にはヒヤヒヤさせられるわね。
「それにしても、主様はどこにいても甘い言葉を囁くんですね。顔も良くて、王なんて言う人付き合いに苦労している方にとってみれば、お伽噺の王子様に見えるんでしょうか?」
「そうでしょうね。あれは天然たらしってやつよ。まぁ、それに釣られる私達も大概なものよ」
「あたしからすれば、あの人くらいじゃ無いとつり合わない」
「わ、わたしも、あるじさまじゃないとダメですっ」
「何を張り合ってるのかしらね……。彼のあれはもう治らないと思うわ。どうせ無意識に無自覚でやっているだろうし」
「そうですね。主様としては普通に想を言っているだけですからね。あれが行き過ぎると、タキシード仮面になる訳です」
「懐かしいわね。つい最近の事なのに凄く昔に思えるわ」
彼と過ごした日々が濃かったからだと思う。楽しかったし、もっと一緒にいたいと思えた。
「いい皆、私達は意地でも彼の元に戻るわよ。そしてシャール王の事問い詰めるのよ」
「「「了解!」」」
「彼も大変そうだね……」
私達は彼への想いを力に変えて、戦爭が始まるまで自分達の力を蓄えた。
ニーナには神力を使う事に慣れてもらう訓練を、私達はさらに連攜を上手く取れるように訓練をした。
そして數日たったある日、魔王から戦爭が始まったとの報告がる。
私達は魔王に戦場に送ってもらった。
そこは悪魔と人間が戦う、悪夢のような場所だった。
「ニーナ、分かっているわね?」
「はい。何が何でも止めて見せます。皆さんも頑張って……!」
ニーナは走って、大規模な戦闘が行われている所へ向かう。
私達は知で彼を見つけ、ユニークスキルを発してから、そこに転移をする。
私達が転移した時にはタクマが既に彼の手によって助けられていた。でも、彼は満創痍なで尚もアイカに向かっていく。
既にアイカは彼の心臓を捉えている。このままでは彼が死んでしまう。
「ゼロ!あの人を転移で逃がして!!」
「うん!」
私は咄嗟にゼロへ助けるように頼んでいた。ゼロも元々そのつもりだったようで、迅速な対応だった。
ゼロが連れて來た彼は、気を失う寸前だった。それでも勇者に向かっていく凄さや覚悟は私達では推し量れないだろう。
「魔力が足りてないわね。レンかリンどっちかが、復活魔法で魔力を復活させて」
「では、私が」
「任せたわ」
私はレンが彼の魔力を回復させるのを待った。レンが立ち上がった時には彼の魔力はほぼ全快。これで一安心だろう。
私は皆に喝をれる。
「皆、やるわよ。あの人は文字通り、全全霊を賭けて戦ったわ。今度は私達の番よ」
「「「了解!」」」
そうして私達は三度目になる勇者と対峙した。
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