《異世界に転生したので楽しく過ごすようです》第187話 過去その一、のようです

俺は墮ちた神となったシオリを見つめていた。

何故こんな事に……。

奇跡とも呼べる再會をしていたというのにどうして……。

元に戻ってくれるならとそう願う。

「シオリ……」

自分はこんなに弱々しい聲を出すのかと思ってしまった。

がまた居なくなった事で、あの後と同じ様な狀態になっているのかもしれない。

酷い喪失にかられていると、墮神が俺を捉えた。

『ここに絶の一方手前のニンゲンがいるではないか。お前を初めとし、この世界に絶を振りまくとしよう』

そう宣言した墮神は、俺に手をかざした。

「シオリッ!」

俺の呼び掛けも虛しく、墮神の手から黒いれる。

『記憶の迷宮メモリーラビリンス』

その呟きで暗黒のが俺に降り注ぐ。

「ああぁ、あああぁぁああぁああ!!!」

極めて深い絶と、抜け出す事の出來そうのない恐怖にび聲をあげた。

が震え、立つことが困難になる。

膝を著くと意識が朦朧とし始め、目が霞む。

そして俺は昏倒し、絶の海へ放り出されたのだった。

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◇◆◇◆◇

「――っ! これはっ!」

「主様の以心伝心と共有!?」

「これは一……? 知らない誰かの景が頭に浮かぶ様だけど……」

「パパ、これはあの人のスキルの効果。自分の考えを相手に伝えるもの」

「彼はそんな事が出來るのか……」

「でもこれは……」

今まで彼の以心伝心と共有のスキルをけていた者達は困した様な顔を見せる。

その様子を見て不思議に思う人達がいた。フェルトとレオンの二人だった。

「ねぇ、お姉ちゃん。どうしたの?」

「私達も含めて皆に見えている景がおかしいの」

「そうなの?」

「今までこのスキルで伝わってくるのは、彼の考えている事とそれに伴うだけだった」

「じゃあこの景は……」

「うん。私達も初めての経験よ」

「お、おい。これなんだよ。なんでこんなに悲しみに溢れてんだよ」

「私達にも分からない」

彼の過去について知っているものは、長く付き添っていた達にも、彼と深い関わりがあった者達にも、誰一人としていなかった。

『な、なんだこれはっ! なぜニンゲン風が我にスキルを使えるんだ!』

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彼の見せる景は墮神にも見えていた。墮神の言う様に、絶を司る墮神にはニンゲンのスキルは通用しない。

しかし、事実として墮神へスキルが通っている。

神の中にシオリの心が殘っているのか、それとも彼のシオリを思う心が神の理をも超えたのか、あるいはその両方。

その奇跡が墮神へ過去を見せる事になっていた。

そして、彼の記憶を見ている者達はその景に見る。深い絶と抜け出せぬ悲しみのその語に。

◇◆◇◆◇

「遊びに行こー!」

「うん! 今日もいつもの公園でいいの?」

「そう! 早く行こー!」

しおりちゃんはそう言って僕に背中を向けて走っていく。

僕よりも足が早いしおりちゃんはどんどん先に行ってしまう。

「待ってよー! しおりちゃーん!」

「もぉー、まもるは遅いなー」

「しおりちゃんが速いの!」

「しょーがないなー。ほらゆっくり行ってあげるから」

しおりちゃんは僕のペースに合わせて走り始める。

僕達が今行こうとしているのは、家から近くの公園。僕達のいつもの遊び場だった。

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小學生になってからはお母さんがいなくても遊びに行ってもいいってなった。

今日も學校が終わってから遊びに行く事になった。この時間は公園に人はあんまりいないから遊び放題だ。

人數が多い時は鬼ごっことか、缶けり、大縄跳びをしてる。家でじっとしてるよりも楽しい。

でも今日はしおりちゃんと二人っきりだから遊べる遊びがなくなる。ちょっと悲しいけど、遊べるのが好きだから、何もじない。

「「著いたー!」」

二人で両手を上にあげて、喜んでいるポーズをした。しおりちゃんと二人の時だけいっつもしてる。

ちょっと恥ずかしかったけど、慣れればなんでもなかった。

「「こんにちはー」」

「……こんにちは」

僕達は最近この公園のベンチに座って新聞を読んでる男の人に挨拶をした。

実は、僕はこの人がきらい。なんでか分からないけど、僕を見る目が時々怖い時がある。

今日、公園にいるのはこの男の人だけみたい。お母さんに何かあったら近くにいる人に助けてもらいなさいって言われてるから、多分大丈夫。

「今日は何するの?」

「んー、かくれんぼ!」

「じゃあジャンケンに負けた方が鬼でいいよね?」

「いいよー!」

僕としおりちゃんでかくれんぼをする事になった。

ジャンケンの結果は僕がグーで、しおりちゃんがパー。結果は僕が負けで、鬼になった。

「ちゃんと百數えてね!」

「分かった!」

僕はしおりちゃんに言われたように數え始めた。

「・・・98、99、100! もーいいかーい!」

ちゃんと100まで數えた僕はしおりちゃんの返事を待つ。

「もーいーよー!」

返事が聞こえてきた僕はしおりちゃんを探すためにき始める。

この公園はちょっと広くて、探すのにつかれる事が多い。

僕はり臺の上とか下、中が空の山とか、木の後ろとか木の上を探していく。

だけど全然見つからなくて、長い時間が経っていく。

「しおりちゃーん! どこー?」

當然返事は聞こえない。

今度はベンチの下とか、今までちゃんと見てこなかった所を探してみた。

「うーんいないなー……。どこだろー?」

「マモル君だよね?」

その時、後から新聞を読んでた男の人が話しかけてきた。

「えっと……はい……そうです」

僕はこの人に話しかけられてし怖くなった。

なんかいつもより目がおかしい様な気がした。でもいつもと変わってない気もする。

それが余計に怖かった。

「もう一人の子なら、向こうにいるよ」

そう言って出口の近くを指差した。

僕は教えてくれただけって事に安心して、ありがとうございますと言って、そっちに行こうとした。

だけど、男の人に手を摑まれちゃっているって言われた所に行けなくなった。

「おじちゃんと一緒に行って脅かしてあげよう」

そう言った時の男の人は、とても怖かった。なんでか分からないけど、嫌ですって言えなかった。

僕が黙っていたら、男の人が僕の手を摑んだまま出口の方に歩き出した。

「ほら早くしないと、バレちゃうよ」

「……い……いや……」

「嫌ってそんな事言われると、おじちゃん傷つくなぁ」

優しい聲なのに目が全然優しくなかった。

怖かった。誰かに助けを呼ばないとって思った。

「だ、誰かぁ!! 誰か助けてぇーー!!」

「クソッ! このガキ!」

男の人の喋り方が突然変わった。

それと同時に僕の手を強く引いて僕を抱っこしようとした。

「嫌だッ! 止めてよッ! 誰か助けてッ!!!」

「うるせぇ! 黙ってろ!」

僕のほっぺたが叩かれた。

痛くて、怖くて、僕は泣きんだ。

「痛いよおぉぉ!!! 誰かあぁぁ!!! 誰かあぁぁ!!」

僕は必死で摑まれてる手を振りほどこうとしてた。

この近くに大人の人は誰もいなかった。

それでも僕は力一杯、男の人から逃げれるように頑張った。

「黙れって言ってんだろうがっ!!」

また、ほっぺたを叩かれた。さっきよりも強く叩かれて、とても痛かった。口の中がの味がしてた。

「嫌だぁぁ!! 誰かあぁぁ!! お願いだからあぁぁ!!」

その時だった。男の人の手から力が無くなって、僕の手が離れた。

「そこのぼく! 早く逃げなさい!」

「ってぇ……何すんだてめぇ!」

「あんたが拐しようとしてたからでしょうが!」

僕の目の前にの人が立って、僕を守ってくれるように男の人と話をしてる。

「そいつを渡せ! 刺すぞ!」

「うっ……嫌よ! 誰があんたなんかに渡すもんですか!」

の人のでどうなってるのか分からなかったけど、しだけの人が怖がったような気がした。

「ほら、早く逃げないと!」

「う、うん! たす、たすけ! 呼んでくるから!」

僕は走り出した。

後ろは振り返らないで公園を出て、近くの家に助けてもらうために駆け込む。

だけど、この時間はまだ人がなかったから、いない家が多かった。

でも、僕は助けてくれたの人を助けたくて、必死で助けを呼び回る。

「そこのぼく! そんなに必死にどうしたんだい!?」

「あ、あの! の人が! 公園で! 危なくて!」

「公園だね? 分かった! すぐに行く!」

偶然會った男の人が、助けてくれるって言ってくれた。

僕は必死だった。早くしないとの人が危ないと思ってた。

「誰でもいい!! 家の中にいる人は全員出てきてくれ!! 今、公園でが危ない目にあっている!! 手を貸してくれ!!」

男の人の聲はとても大きかった。

その聲で、んな家から人が出てきて、十人くらいの大人の人が集まった。

「公園は、ここから一番近くの公園でいいんだよね?」

「は、はい! 早く! 早くしないと!」

「分かった! 皆、一番近くの公園だ!」

大人の人達が一斉に走り出した。

僕も後をついて行った。大人の人達がいれば大丈夫だって安心して、助けてくれたの人にお禮を言いたかったから。

◇◆◇◆◇

はぁ。今日はなんて日なの……。

學校に遅刻して怒られて、宿題忘れて怒られて、家に帰ろうとしたら拐犯を見つけて、攫われそうになってた男の子を助けたらなんとナイフを突き付けられるって言うね。

何? 今日厄日なの?

「お前よくも……。よくもよくもよくもッ!!」

目の前の拐犯はとてもお怒りになっている。

ナイフを持っている手にはありえないほどの力が篭っていて、赤くなっている。

「殺す! 殺してやる!」

「お、落ち著きなさいよ!」

「うるせぇ! お前が! お前さえいなければ!」

「あんたはまだ拐しようとしただけでしょ! 未遂なんだから罪は軽いはずだから!」

私は殺されないように必死で宥める。

だが、激昴してしまった人には逆効果だった様だった。

「下準備をして! マモルのの回りも調べて! ようやくチャンスが來たのにぃぃ!!」

目が飛び出そうなほどに見開き、充した。眼球が顕になる。

「臺無しだ! 全て臺無しだ! お前がいたから! 全部が臺無しになった!!」

「い、いいから落ち著きなさいって!」

「うるせぇ! 殺すッ! ころすッ! コロス――ッッ!!!」

完全に錯していた。何を言っても火に油を注ぐだけだった。

私は後退り、逃げの制にった。

最初は走って逃げる事が出來た。でも、と男じゃ走力が全然違った。

私はすぐに捕まった。肩を摑まれ、振り向かされた。

そして

――スパッ

ナイフが私の首を切り裂いていった。

激痛と吹き出るに何が起きているのか理解が出來なかった。

そしてすぐに視界が暗くなった。

小さな頃から今までの事が思い起こされた。

走馬燈と言うものだった。

そして、走馬燈が過ぎ去った時、私の意識は途切れ、命の鼓も永遠にされることもなくなった。

◇◆◇◆◇

僕が公園に著いた時、そこからはの匂いがしてた。

大勢の大人達が、大きな聲を張り上げて言い合ってるのが見えてた。

その足元には、僕を攫おうとしてた男の人が押さえつけられてた。

そして、もう一人。

赤い水溜まりに橫たわった、僕を助けてくれたの人。

「――ぁっ」

僕は何を言おうとしたのだろう。

ただ、そのの人を見て、今まで知らなかった気持ちが突き刺さって來た。

とても嫌な気持ちだった。

僕の耳に大人の人達の大きな聲がってくる。

怖かった。何かを聞くのが怖かった。

だから耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ。

何も聞きたくない。何も見てない。これは怖いだけの夢。そうやってずっと考えてた。

の震えが止まらなかった。涙が止まらなかった。口の中のの味が夢じゃないって言ってきた。

怖い怖い怖い――。

そんな時だった。僕の手を耳から離して、手を繋いでくれる人が來た――。

◇◆◇◆◇

助けないと!

わたしは隠れながらずっとそう思ってた。

まもるが悪い人に捕まっちゃうって分かってた。

でも、まもるのび聲と男の人の聲を聞いたら、そこから立てなくなってて、助けに行けなかった。

だからわたしはお願いした。

――どうか、まもるを助けてください。

って。

そしたら、の人が助けに來てくれた。

わたしは嬉しかった。神様に願いが通じたんだって思った。

まもるは公園から走って逃げていった。

でもの人は、男の人から逃げられなくなってた。

男の人は包丁みたいなのをの人に向けてた。

わたしはお母さんから聞いて知ってる。包丁を人に向けたらダメだってことを知ってる。

でも、男の人はの人に向けてる。

男の人が何かを大きな聲で言ってた。そしての人が逃げて、それを男の人が追いかけてた。

鬼ごっこと一緒だったけど、全然違かった。

の人が捕まったかと思ったら、男の人が包丁みたいなのをの人の首に刺した。

の人からが一杯出てた。その時わたしは息をする事も忘れて、ただ見ているだけだった。

の人はすぐに倒れた。地面に赤い水溜まりが出來てくる。

その時、たくさんの大人の人が公園にってきて、すぐに男の人を倒した。

でもの人はもうかなかった。誰が何かを言っても、かなくなってた。

これはわたしへの罰だって思った。わたしが神様にお願いをしたから、の人が死んじゃった。

あの時わたしがまもるを助けに行ってたら、の人は死ななかったんじゃないかって思った。だから、これはわたしへの罰。

その時、逃げたはずのまもるが戻ってきた。

でも、一回だけ目を大きく開いたら、泣き始めて耳を手で押えてしゃがみ込んだ。

助けないとって思った。

今度はわたしがの人の代わりにまもるを護ってあげる番だって思った。

だからわたしは立てなかった足を無理矢理立たせて、まもるの所に行った。

そして耳を押さえてた手を握って、まもるが泣き止んでくれるように、まもるに言ってあげた。

「だいじょうぶ。わたしがきみをすくってあげるから。だからあんしんして」

お気にり數500を超えました。ありがとうございます。今後も進致しますのでよろしくお願いします。

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