《三人の霊と俺の契約事最前線

「魔導部隊、一斉撃準備ーー」

橫一列に魔道士がずらりと並んび魔力を練る。

「放てえええーー!!」

その號令と共に魔道士たちは一斉に魔法を放つーー。

その先にはーー、

何百、何千・・・いや、何萬のもの數え切れないほどの魔がウジャウジャとこちらに向かって行進している。

ここは、世界最北端のバルティカ共和國の國境線。このラインを超えた向こう側は、竜魔族の領域であり決して人間が足を踏みれてはならない世界。

かつてこの地一帯は、竜魔族が治めていた。しかし、繁栄し過ぎた竜魔族は土地を求め人間の領域にまで侵略を始めた。

人々を襲い土地を奪う。

困り果てた末、勇騎士サーガに竜魔族討伐を依頼する。サーガは最終的に邪竜アポカリプスを封印し竜魔族との爭いに終止符を討った。奪われた土地を取り戻した人間はそこに新たな國を作った、それがバルティカ共和國だった。

しかし、爭いが収まったのは一時的なものだった。

サーガが邪竜アポカリプスを封印してから數十年後再び、竜魔族は土地を奪い返そうとき出した。

サーガの封印が破れかけているのだ。

サーガは邪悪アポカリプスを倒したのではなくあくまでも封印しただけなのだ。

サーガの力を持ってしても倒せなかった。

溢れ出した邪悪な魔力は竜魔族の活力なった。

今尚続く百年戦爭、竜魔族と人間は土地をめぐり爭っているのだ。

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このバルティカ共和國の國境での戦爭を人々は、『バルティカ戦線』と呼ぶーー。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

「魔が來るぞ!次部隊準備、準備」

観測手が空中に浮いて雙眼鏡で狀況を確認し狀況を通達する。

「第七、八部隊準備完了、いつでもオッケーだよ」

小柄な年が腕につけているブレスレットに小さな水晶が付いているに話しかける。

「セントラルコントロールより第七、八部隊へ、出せよ!」

「了解!第七、八部隊出します」

その合図と共に國境に設置されていた高さ數十メートルはある門が開かれる。

「ご武運を祈る」

『バルティカの壁』と呼ばれる超巨大な國境線の壁の要塞、巨人族でも乗り越えることは出來ない程である。その真ん中に開閉式の門がある。

バルティカの討伐部隊は、大きく分けて三つある。

前線部隊・・・いくつかの班部隊に別れ、門が開いてから次開くまでの間戦う。

一つの班部隊で二十名で構されている。

魔導部隊・・・バルティカの壁の上より魔法攻撃による遠距離攻撃を仕掛ける。

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狩り以降、魔道士の數が極端になく人手不足である。

醫療・援護部隊・・・魔法障壁や回復魔法などが主な役割だがやはり魔狩り以降人手不足であり特に回復魔法の魔道士不足は深刻な問題となっている。各國に援助依頼を通達しているがそれでも足りない狀況である。

「門を開けえ、開けえ!」

錆び付いた鈍い重いが響きわる。ゆっくりと門がしずつ上がって行く。

前方の景がゆっくりと見えてくる。

門が半分くらい上がった先には、辺りを埋め盡くす魔が數メートル先まで迫っていた。

「第七、八部隊・・・後は頼む」

傷付いた兵士が足早に門の中へと退散して行く。

「す、すまない」

「また、何名か殺られたよ」

の恐怖と疲労からも心もボロボロになりながら退散していく。

「門を閉めるぞお」

錆び付いた重い音を響かせながらゆっくりと門が閉まっていく。

「まっ、待ってくれえええ」

一人の兵士が足を引きずりながら必死で門に駆け寄る。

「駄目だ!危ない潰されるぞ」

第七、八部隊の兵士が足を引きずる兵士を制止した。

ドーーンと地面が揺れるような音と共に門は閉ざされた。

「ああ、そんな・・・」

足を引きずった兵士は門の前で崩れ落ちた。

その姿を見た小柄な年は、

「ふんっ、け無い。ここにいても無駄死になるだけだ。とっとと戦場から去れ!」

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ロビンは、崩れ落ちた兵士に冷たく罵倒した。一見冷たくも見えるが一度心が折れた兵士が戦場で再起するのは不可能に近い、その狀況で戦場にいれば他の兵士の足を引っ張ることになる。戦場で一つでもほころびが出れば取り返しのつかない事になる。最悪の場合は全滅すらありえるのだ。ロビンはそのことをいながらもよく知っている。それは円卓の魔道士として常に戦闘の最前線で戦い続けてきた経験値だ。

「ロビン部隊長、來ますよ!」

その聲に正面を向き、戦闘態勢にる。

「総員戦闘準備!奴等を數十メートル後退させてやる」

ロビンは、魔力を解放するーーその凄まじい魔力量は攻めてくる魔も躊躇するほどだ。

「だ、第七、八部隊だ!!ロビンだぞ」

待機している部隊からも喝采の聲があがり皆、壁の上から観戦する。

「行くぞおお!!陣形をすな」

ロビンが一目散に魔に突進するーー。

そのスピードは常人離れしている。

二本のナイフで魔力をれ切る。

ロビンに続けと兵士たちも魔を討伐して行く。

ロビン達の第七、八部隊は、先程の部隊とは打って変わり次々に魔を討伐し數メートル手前まで攻められていたが徐々に後退させていった。

「さすが、ロビン。円卓の魔道士は伊達じゃないなあ。魔法を使わなくてもあの強さだ。討伐數も半端じゃないもんな」

圧倒的な強さと魔を後退させた事で待機している兵士たちも安堵の表を浮かべていた。しかしーー、

「第七、八部隊、第七、八部隊ーー」

観測手より通信がロビンにる。

「どうした?」

「竜です!ワイバーンが三向かって來ます」

ロビンの顔が曇る。

「くっ、あまり無駄な魔力を消費したくないんだが・・・仕方ない」

ロビンは、前線から距離を置く。

ワイバーンの出現の一報をけ魔導部隊が壁の上で魔力を練って待機する。

補助部隊は障壁を展開する準備をしている。

「ーーワイバーン襲來!!各部隊行せよ」

警戒を知らせる警告音がバルティカの壁に鳴り響く。

「ギャヴアアアアアア」

ワイバーンの咆哮が響きわる。

その巨大なをうねらせ威嚇してくる。

「魔導部隊放てーーー」

ワイバーンに向け魔法攻撃を放つ。

ワイバーンは魔法攻撃を真面にけたが顔を顰める程度だった。

のウチの一は壁の上にいる魔導部隊に襲いかかる。

「うわわあああ」

魔導部隊の兵士一名がワイバーンに咥えられ空中に連れさらわれる。ーー無慘にも兵士は噛み殺された。

別の二は、ロビン達第七、八部隊に襲いかかる。

「ロビンさんの援護だ、粘るぞ」

第七、八部隊はワイバーンの攻撃を必死で回避しロビンに時間を作る。

「お前ら上出來だ! 契約の名の元に我の聲に耳を傾けたまえ、汝その姿を示せーー」

ロビンの足元に魔法陣が浮かび上がる。

「出でよ!サラマンダー」

魔法陣が輝きその中から炎に包まれた大トカゲが姿を現した。大きさはけして大きくなく馬車を引く馬程度だ。

「またずいぶんと敵の多い場面で呼び出してくれるねえ」

サラマンダーは面倒くさそうに笑った。

「まあまあ、そう言うなって。ーーこっからは俺のターンだ」

指をバキバキと鳴らしゆっくりと上空で翼を羽ばたくワイバーン二を睨みつける。

「マンダー頼むぜ!!」

「変な名前つけんなよ!ーー喰らえ」

サラマンダーは、ワイバーン二に向かい両手を前に出すとその手から炎が噴き出しワイバーン二を襲う。

ワイバーン二は炎に包まれ苦しそうに暴れていたが羽をバタバタと羽ばたきながら炎から逃れた。をからは煙がプツプツと上がっている。

「ほう、あの炎から逃れたか。さすが竜族だ」

サラマンダーは、腕を組んで上から目線だ。

「マンダ、あまり魔力を消費したくないんだ。一撃で決めてくれよ」

「贅沢なヤツめ、お前のために召喚されてやってるのを忘れるなよ」

「ーーマンダ、ワイバーンが來るぞ!」

ワイバーン二のウチの一が炎のブレスを口から吐きサラマンダーを襲う。

ワイバーンの炎にサラマンダーが包まれた。

「クククク、お前ら如きの炎が俺様に通じると思うか?」

サラマンダーは炎に包まれているが余裕そうに笑っている。

もう一のワイバーンも炎のブレスを吐いて応戦する。

「炎の化のこの俺様がこんな鎮火な炎が効くわけないだろ?本の炎にを包んで味わえ」

サラマンダーのを覆う炎が一層燃え上がる。

「ーーーー熱っ!」

サラマンダーの近くにいるロビンが熱気に顔を歪め後ずさりする。

「奈落の業火でを焦せ!ヘルプロミネンス」

辺り一面を覆い盡くす炎が地面から噴き出し空にまで到達する程の無數の火柱が上がる。

ワイバーン二は一瞬で廃となり、地上を覆い盡くしていた魔もほぼ塵と化した。

「ーーじゃあな!今度からは呼び出しは予約制にするかな」

サラマンダーは空間に溶け込むように姿を消した。

「サンキュー、マンダ」

ロビンが安堵の表を浮かべていると、

「ロビンさんまだワイバーンがもう一、壁の上空で暴れています」

「そうだった、くそっ、魔力が余り殘っていない」

「地上の敵なら我々でも何とかなるのですが空からとなるとーー」

第七、八部隊の兵士たちは無にもワイバーンをただ見つめていることしか出來なかった。

「お前らは更に前進して今のこのアドバンテージを維持しろ。仕方ない、もう一召喚してワイバーンを倒すしかねえな」

ロビンは、今後の展開も考え今ここでもう一回召喚するリスクを考えていた。魔力も限りがあるが一につき二十四時に一回しか召喚は出來ないのだ。サラマンダーは明日のこの時間まで召喚は出來ない。次の出陣の際にまた竜族が攻めてこられたら召喚でしか現狀太刀打ち出來ない。ここでもう一召喚は大きな痛手になる。

「ーー魔導部隊で退いてはくれないだろうか」

必死で魔法攻撃を繰り返しワイバーンを何とか食い止めているのをロビンは見上げていた。

「あのー、すいません」

大きなリュックを背負ったごく普通なが迷い込んで來た。明らかに過酷な前線とは不釣り合いで浮いて見える。

「ん? 何で君のような子がこんなところに?」

待機している兵士が目を疑っている。

「あのー、私戦いたくないんです。いつもいつも巻き込まれてばかりでーー」

「はい?」

兵士は彼が何を言っているのか理解出來ないでいる。

「だから、ここに來れば安心だと聞いて來たんです」

「・・・・」

兵士は後ろを振り返り戦場を見た。とても安心出來る場所にはどう見ても思えなかった。

「ーーとりあえず、皆さんにご挨拶をさせて頂いて後はひっそりと過ごさせてもらいます」

は、兵士に頭を下げ足早に壁の上に登って行った。

「あっ!君、そっちはーー」

兵士はを制止しようとしたが、どんどんと勝手に登って行ってしまった。

「こんにちはー、あのここに來れば安心だと言われて來たんです。皆さんにご挨拶をと思いましてーーえっ?」

は笑顔で挨拶した先には、今まさにワイバーンと必死で戦う魔導部隊の姿があった。

「きゃー何で? 何でまたこんな場所に來ちゃったの」

は力が抜け地面におをついた。

の名は、ライラ・キャロル。不運の持ち主で自分の意思とは関係無しに常に危険な場所へと足が向かう。

「君、君、何で一般市民がこんな場所に」

一人の兵士がライラに気付く。

「ここが安全だと聞いたのです」

「はっ? 誰から。世界一過酷な最前線だよここは」

「ううー、騙されたあ」

がっかりと頭を下げたライラ。

「どうでもいいから早くこの場から離れなさい」

「はい・・・」

ライラが立ち上がり背を向けた瞬間ーー、

「危ない! 伏せろーー」

ワイバーンが背を向けたライラに向かって牙を向ける。

ライラの魔力が瞬時に危険を判斷し自的に反撃モードに移行する。これは自分の意思とは関係なしに発する。

「きゃー助けてえ【自魔法】オートマチック」

ライラが頭を抱え地面に伏せているのにも関わらずライラから無數の閃弾が発されワイバーンを襲う。ワイバーンがその閃弾を回避しようと必死で逃げるが閃弾は追跡するかのようにワイバーンに全て直撃する。

回避出來ないワイバーンは地面に墮ちていったーー。

「き、君は一・・・」

一部始終見ていた兵士は唖然ぼうぜんと彼を見ていた。

突如、崩れ落ち地面に散ったワイバーンをロビンも口を開けたまま何が起こったのか理解出來ずにいた。

「ロックオン閃弾・・・不幸娘?いや、戦場の神が迷い込んだか」

ロビンは笑みを浮かべた。

『第七、八部隊、門が開くぞ、代だ』

錆びついた重い軋む音が辺りに響き渡った。

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