《三人の霊と俺の契約事和平條約

その男は不気味は笑みを浮かべ一人椅子に腰掛けていた。

「バルティカ戦線では、思いがけない発見や報も手にれた。大収穫だよ」

まるで遊園地に行った子供のように思い出しては笑いをずっと繰り返している。

「ローゼンクロイツ、貴様何を考えてる?」

片方にしか羽の生えていない青年が何もない空間から浮かび上がるようにして現れた。

「ああ、ルシファーかい?僕はここ數年で一番の楽しみな事が出來たんだよ」

「ーーまた実験と言う名の破壊と殺戮を繰り返すのか?」

「ククク・・・ルシファー、実験には犠牲が付きなのさ。失敗を繰り返しデータを取りそれを元にまた実験し、魔法は進歩するのさ」

鼻で笑い澄まし顔を決め、両手を広げてみせるクロイツ。

「・・・・・・」

その姿を見ても表一つ変えないルシファーに逆にムッと表を変えるクロイツ。

「ルシファー、僕との契約忘れてないよね?」

「・・・ああ」

「ーーなら、これ以上僕のやる事に口を出さないでね」

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「・・・・・・」

「僕は【神殺し】なんて何とも思わないからね」

ゆっくりと歩み寄りながらルシファーを見つめ、

「この世から君を消すなんて秒だからさ」

ルシファーを見つめるその冷ややかな瞳は神の一人と呼ばれたルシファーに戦慄を與えるのには十分過ぎた。人間に恐怖を與えられる事になるとは夢にも思わなかったルシファーだった。

「ああそうだルシファー、その羽もう片方も消してやってもいいんだよ」

「ありがとう僕の友達になってくれて」

「ムーちゃん・・・もー會えないの?」

「ーー多分、遠くに・・・遠く遠くに父さんと母さんと行くからさ」

離れた場所で自分を待つ両親に一瞥をやるハバムート。

「そっか。俺もダチいなかったから同じ位のムーちゃんとダチになれて嬉しかったよ」

手を差し出すロビン。

その手を見て笑顔が溢れるバハムート。二人は堅くぎゅっと手を握った。

二人はいつまでも、いつまでもその手を離さなかったーーーー

サヨナラ元気でな!

ありがとう!ロビンも元気でね!

ロビンはバハムート達が見えなくなるまでいつまでもいつまでも手を振り続けた。

必死で溢れ出てくる涙を堪えていた。

俺は泣かないよ。

だってこれは永遠のサヨナラじゃないから、

また、笑って逢える日までのお別れだから。

また笑顔で笑ってあの日のようにーー。

☆ ☆ ☆

ーー時は同じくしてアヴァロン城

「この度は我が國のためにご協力頂き誠に謝しております」

王の間の赤い絨毯の上で膝を付き頭を下げるバルティカ統括司令ダグラス・クルーニー元バルティカ共和國國王。

「そんなに畏まらないでかしこまらないで下さい。困っている國同士手を取り合い助け合うのは當然ですよ」

真っ白な髪にしわくちゃな顔をしたアヴァロン皇帝シーサー・ペンドラゴンが笑ってみせた。

「ーー失禮ですが數年前にお會いしてからずいぶんお年を取られたような・・・」

「ああ、私は隠居ですよ。息子に王の座を明け渡したいのですが、なかなか引きけてくれないのでね」

「そうですか。シーサー様の後は何かとプレッシャーがあるのではないのでしょうか」

「私何て何もしてないですよ。バルティカ共和國とはこれからもお互い手を取り合っていきましょう」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

『バルティカ共和國・アヴァロン魔法王國和平條約提攜』

シーサーとダグラスがい握手をしていると王の間の外の扉が勢いよく開いたーー

「申し上げます!!」

「無禮者!會談の最中だぞーー!」

「も、申し訳ございません。で、ですが無禮を承知で報告したい事がございます」

「申してみろ」

シーサーの顔が見る見るうちに真顔になる。

「はっ!帝國が、アストレア帝國が戦火に包まれております。すでに國土の七十パーセントを侵略されております」

「な・・・」

言葉を失うダグラス。

「攻めているのはどこだ?」

「はっ!報によりますと反帝國バンディッツとレムリア國であります」

「・・・レムリアだと?」

眉間にシワを寄せるシーサー。

「レムリアにそんな戦力があったとは・・・」

また同じく眉間にシワを寄せるダグラス。

「・・・偵察を帝國に派遣しろ。レムリアのような小國がバンディッツと手を組んだとてこれほど有利に攻めれるには何か理由があるはずだ」

「はい。すぐに何名か派遣させます」

「頼んだぞ」

兵士は一禮すると急ぎ足でその場から姿を消した。

「それにしても長年続いた帝國の獨裁政権もこれでようやく終わりを告げそうですな」

「いや・・・何か引っかかるんですよ。レムリア何か裏がありますよ」

「う、裏ですか・・・」

「帝國が落ちてくれればそれは嬉しいですが、レムリアがその上に立ちこの世界の中心になるのは、何か違うような気がしますし絶対にさせてはならない気がします」

「ーーでは、帝國に手を貸すのですか?」

「それは無いですが・・・偵察部隊の報次第ではレムリアを叩き潰さなければならないですね」

そう言い放ったシーサーの顔は數年前出會ったあの青年の顔をしていた。

ダグラスは改めて思ったーー、

アヴァロンは敵に回してはならないと・・・

「みんなお帰りーー!!」

「ただいまミーナ」

「ただいまなの」

「お元気でしたか?ミーナ」

「アーサーさんの活躍、世界新聞の一面を飾ってましたよ」

「えっ、僕の活躍・・・ですか?」

「はい、百年続いたバルティカ戦線に終止符を打ったと載ってましたよ」

「僕は何もしてないですよ。たまたまそこにいただけで・・・それに邪竜を沈めたのは僕ではないので」

「それでも、アーサーさんだからこそ出來た事は必ずあったんだと思いますよ」

「僕だから出來た事・・・」

アーサーはまわりを見渡したーー、リサ、エルザ、シルフィーが笑顔で頷いている。

「僕だけでは無いですけど、霊たちがいたから出來たんだと思います」

ミーナは優しく微笑み、

「今度はまたゆっくり過ごせるの?」

「世界中を旅する夢はあるけれど、しばらくはゆっくりと霊たちと過ごしたいね」

リサ、エルザ、シルフィーの三人は笑顔で手を合わせて喜んでいた。

「ーーそれじゃあ、味しいものでも作ってあげる!!」

「わーいなの」

エルザの弾けんばかりの笑顔にみんな大笑いしていた。

ぼんやりとる水晶玉の通信に気づく事なくーー。

ーー バルティカ戦線 完 ーー

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