《俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?》第十二話~前兆~
「ΚΦΡΦΡΥΠΞΔγΚΦΡΥΚΠΛΟΛΞΓΦ!!」
──轟く咆哮。
「キャァァァァァァ!!」
「た、助けてくれぇぇぇ!!」
「し、死にたくないよぉ・・・」
──逃げう人々。
その正しく産まれたばかりの子蜘蛛の如く逃げう人の群れの中に、僕はいた。
母は死に絶え、父とはぐれた。涙も最早流し盡くし枯れ果てた。
どれ位走っただろう。數時間、いや、數日のような気もする。しかし、たった數分のようにもじる。
父さんと約束した。生きる、と約束した。だから走る、逃げる、生き殘る。また會えることを信じて。
母さんは居ない。遠くへ行ってしまった。真っ赤になりながら。口から、から、至る所から赤い、紅い、鉄臭いを吐き出しながら。
「僕は、僕は、俺・は・・・生き殘る。絶対に、生き殘る。約束したんだ・・・父さんと!」
この言葉にどれ程救われただろうか。
「γΚγΠΥΧΟΔλχροροροπλπβπολο!!」
またあの聲だ。父さんとはぐれた時にも聞こえた、あの聲。聞こえる度に心臓が止まりそうになる。
でも、止まれない。止まってはいけない。止まったら全てが終わってしまうような、そんな気がする。だから走る、ひたすらに。
*****
──咆哮が遠くで聞こえた。
化けはあの場所で暴れているのか、追っては來なかった。
俺は商店街のに隠れていた。聲は遠くで聞こえるが油斷は出來ない。あ・の・時・もいきなり化けが現れたのだから。
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「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
苦しい。心臓が痛い。鼓に合わせて中が悲鳴を挙げる。
暫く此処で休もう、そしてまた走ろう。
そう思いながら俺の意識は沈んでいった───。
◇◇◇◇◇
「・・・・ッ!!」
──ベッドが軋む程の勢いで飛び起きる。
「・・・・・久しぶりに見たな、あ・の・夢」
自嘲気味に笑いながらカーテンを開ける。
窓から差し込む日と鳥の囀さえずりを聞きながら、欠をする。
「ふぅあぁぁ~」
◇◇◇◇
ベーコンエッグを焼くジューシーで香ばしい匂い音を聞きながら意識を覚醒させて行く。
「えー、本日の朝食は、ベーコンエッグ、サラダ、コーヒー、トーストのモーニングセット風に座います」
・・・誰に言ってんだ、俺?
程なくして出來上がったモーニングセットを頬張りながら、テレビを點ける。
──丁度昨日の事件がニュースで報道されていた。
『昨日午前十一時頃、東京都、睦月市の公園に突如としてDゲートが開き魔が出現しました。魔による被害は中心部の建六棟の倒壊及び、死者八名、重傷者十七名、軽傷者二十五名と判明しており、また市街地に出現した魔の討伐に向かった"學園"の生徒二名が重傷を負いました。その後、本部より派遣された団員により、魔は討伐されました幸いにも討伐に向かった生徒の命に別狀はなく──』
學園から生徒が派遣?どういうことだ?學生でも討伐任務に出れるのか?それに、重傷を負ったって言ってたよな?正規隊員じゃない生徒を討伐に向かわせた挙げ句に重傷、下手しなくても信用問題になるんじゃないのか?
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続きが気になり、朝食を摂るのも忘れてデレビに見る。
『今回の事件について只今より開拓団より、記者會見が行われます。生中継、ノーカットでお送りします』
丁度記者會見が行われるようだ。
──テレビ畫面が會見場所に切り替わる。
するとそこには白い布を被せた長い機があり、左から、メディア課課長、団長、研究所長のプレートが立て掛けてある・・・って団長!?
──すると、団長が話し始めた。
『えー、この度は我々開拓団の至らなさ故にお亡くなりになられた方々及び、族の方々に心よりご冥福とお悔やみ申し上げます、大変申し訳ありませんでした』
──団長が頭を下げるのと同時にカメラのフラッシュによって畫面が真っ白になる。十數秒程だろうか、フラッシュが止んだ。それと同時に団長が頭を挙げ、言葉を紡ぐ。
『今回の事件──ワイバーン出現──は、本・來・開拓団本部にて管理しているDゲートが、市街地に突如出現した為に起こりました。本・來・は絶対にDゲートが市街地に出現する事はありません、絶・対・にです──』
やけに強に否定するな・・・まぁそれもそうか、開拓団の信用に直接関係するからな。何度でも言おう、信用問題だ! 例えどんなに結果を出そうとも信用が無ければ意味は無い。
A社は業績は良いが、過去に々な問題を起こしている會社と、業績はA社に及ばないが、過去に問題もなく、評判の良いB。
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さて、Youはどっちを選ぶ?まぁ、俺ならB社だな。用はそういうことだ。結果が全てじゃない。
だかまぁその件に関しては、開拓団は一度とんでもない失敗を犯してくれちゃってるけどな。
『◇◇社です。つまり、今回は開拓団の不手際、ということですか?8年前のように』
『ッ!・・・いえ、そうではありません』
『・・・どういうことですか?』
『その件につきましては、今から順々にご説明させていただきます。まず、今回のような突然発生する開拓団管理外のDゲートを我々は、"イレギュラーゲート"と呼んでいます』
『イレギュラーゲート、ですか』
──興味を持ったように聞き返す記者。
あの人、始めからこ・れ・を狙ってたのか。まったく、喰えない人だな相変わらず。
今の話でマスコミを開拓団の信用問題から、新たに発生したDゲートへ意識を導できる。マスコミが好きなものは大、スキャンダルとかだから一度捕まれば、何を書かれるか分からない。その手の印象作に関してはマスコミはプロだからな。
『はい。そのイレギュラーゲートですが、以前にも発生しています』
『▽▽▽社です。それはつまり、以前にもこの様な開拓団の管理外のDゲートが発生した、ということですか?』
『はい、その通りです』
『それは、いつ頃の話ですか?』
『かれこれ六十年前の事になります』
『では何故今まで対策がとられなかったのですか?六十年も前の事なのでしょう?』
『それを今からご説明させていただきます。まず、我々はイレギュラーゲートを"前兆"と考えています。そして、発生前にイレギュラーゲートを捕捉することは出來ません』  
──マスコミが一際大きくざわめく。
そりゃそうだ、自分の首を締めるような発言を開拓団のトップが言ったのだから。
あの人達はこれも折り込み済み・・・・・じゃ無いな。だって、隣に座ってる二人が「はぁ!?」って顔して団長を見てんだもん。
『その理由については、研究所長から説明があります』
『えっ』
『お願いしますね?』ニコッ
『はい・・・』
おい!明らかに今、話振られた研究所長「えっ」って言っただろ!流されんなよ!マスコミが若干引いてんだろうが!
『はぁ、何で私が・・・こほん。其れでは、イレギュラーゲートを出現前に捕捉することが出來ない理由について私、開拓団研究所長、リリー・ワトソンよりご説明させていただきます』
──所長、リリー・ワトソンさんだったか?若いな、20代に屆いてるのか?あの人。それにすげぇ人だ。し釣り上がった勝ち気な目はルビーに輝き、サラサラと流れるブロンドの髪は腰まで屆く長さだ。なにより、スタイルめっちゃ良い!モデルでもやってそうなスタイルだ。現に所長が話始めた途端、「おおぉ」って聲が畫面越しに聞こえる程度には人だ。
──そうして、所長は話始める。
『まず、皆様には"Dゲート"についての簡単な説明をさせていただきます。"Dゲート"とは、時空間と時空間の解れによって起こります。例えとして時空間をシャボン玉とでも考えてください。そしてシャボン玉は一つの宇宙空間に無數に存在します。そうでなければ繋がった先の異界に地球と同じ質があるはずが無いからです。では、的にどうやって繋がっているのかと言うと、シャボン玉は実・際・の・位・置・ではない、と考えてください』
──會場がどよめく。
まぁ、そうだろう。俺も一瞬、「コイツ頭湧いてんのか?」って思ったからな!
『▽▽▽社です。あの、何を仰ってんるですか?』
『そんな可哀想なものを見る目で私を見ないでください。ホルマリン漬けにしますよ』
サラッと騒だな、おい!
『えっ!?』
『冗談ですよ・・・二割』
『ええっ!?』
『じょーくです』
『・・・』
濃いなぁ・・・。何がって、キャラに決まってんだろ。もしかしなくても學園関連でまともな知り合い居なくね?・・・はぁ。
『続けます。用は地球という座標の報を持ったシャボン玉が、異界の座標の報を持ったシャボン玉とくっ付くことにより、時空間座標に狂いが生じ繋がることによりDゲートが発生します。開拓団では、その接地面を強制的に変更して本部の敷地に繋ぐことにより、市街地に魔が出現することを防ぐと共に出現した魔を敷地で処理しています。此処までで何かご質問はありますか?』
『□□□社です。質問いいですか?』
『どうぞ』
『的にはどの様にして座標を変更しているのでしょうか?』
『その質問にはお答えできません』
『何故ですか?』
『座標変更の方法は最重要機事項に當たります。なので、お答えできません』
『そちらからしたら相応の理由かもしれませんが、市民がどう思うかは分かりませんよ。我々の報道しだいで如何様にも変えられます』
『ッ・・・』
『さぁ、どうなんですか?』
これは最早脅迫だろう。それにコイツはバカなのか?生放送なのに如何様も何もないだろう。あと、たじろぐ所長も様になってる。
『さぁ、お答えしてもらえませんか?』
『そ、それは・・・』
──その時、凜とした聲が響き渡った。
『お答えできません』
『だ、団長!?』
『・・・何故ですか?』
『先程も申し上げました通り、最重要機事項に當たる事なのでお答えできません。そもそも、その件についてお答えする義務は座いません』
『確かに無いのかもしれないですが、この國での心象を悪くしたくはないですよね?』
『脅しのつもりですか?』
『いえ、そんなつも──』
『そもそも、我々開拓団は特定の國、組織、政府、個人に屬するものではありません。この意味がわかりますか?』
『それはもちろんわかっていますが? 開拓団は國に屬していないので、その國の法律で──』
『いいえ、わかっていません。そんな些細な問題ではなく、我々が國と対等な渉のテーブルに著いている時點で、分からないのですか?我々は、國と渡り合える武力と財力、資源、人材を持っているのです。此処ではっきりと申し上げましょう。開拓団は一つの國と同等のものと思ってください』
『なっ・・・そんな橫暴が許されるはずが・・・』 
『橫暴?何をいっているのですか?そもそも、貴方達は勝手に敷地にって來ては々と嗅ぎ回っていますが、開拓団は一種の國、治外法権も有効な外・國・ですよ?やろうと思えば貴方達を不法國で訴えましょうか?』
『脅すつもりですか!そんなこ──』
『黙りなさいッ!!』
『っ!!』
『何が「脅すつもりですか」ですか、世論を盾に脅しをかけてきたのは貴方でしょう。第一、この土地も我々が日本より正式な手続きを持って買い取っています。開拓団の主な任務は異界の調査及び、異界へと行方不明になっている人々の捜索。そして、魔の調査及び研究です。そこに市民の防衛は含まれません。我々が皆様の安全を守っているのは國から稅金によって依頼されているからです。それに、我々としても市民の皆様と良い関係を築いていきたいと思っているからこそなるべく報の掲示を行い、開拓団への団希者の方を育する機関も設立しました。わかりますか?あくまでも、善意なんです。その事を努々ゆめゆめお忘れのなきように。これでも何かご質問は?』
──會場も、スタジオも、俺も唖然とした。
まじかよ・・・えぇ、ちょ、え・・・ま、マジすか?
思いきったなぁ・・・。ズバズバ言ったなあの人。俺も途中からスカッとしたぜ。
『・・・いえ』
『あぁ、それともうひとつ、貴方にお伝えしたいことが』
まさか・・・。
『今、生放送でお送りしてるのをお忘れで?』
『・・・あ』
『愁傷様です』
『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!』
──會場中に□□□社の記者の斷末魔が響いた。
うわぁ・・・トドメを止しやがったよ、この人。人間か?この人。人の皮を被った悪魔かなんかか?
『あ、・・・こほん。其れでは、"前兆"とは何か、対策がとられなかったのは何故かについてご説明させていただきます』
『「・・・」』
サラッと流しやがった・・・。
『まず、"前兆"について。前兆とは2400年、初めて我々の世界に魔及び、ipウイルスが流れ込んで來た時──第壱次ファースト代侵攻スタンピートに遡ります。実を言うと、それ以前からDゲート自は開き、魔が出現していました』
『「はぁ!?」』
──この時、マスコミと俺の聲はまたしてもシンクロした。
どういう事だ!?知らないんですけど、初耳なんですけど!
『ど、どういう事ですか?』
『皆様も聞いたことがと思いますが?』
『勿振らないで教えてください』
──若干苛立ちながら、記者が質問する。
『妖怪』
『「へ?」』
──俺と記者のシンクロ率は300%!!
相が良いのか?嬉しくねぇ・・・。
『聞いたことがありませんか?妖怪、お化け、ゴースト、モンスター、UMAなど、一度は聞いたことがあるはずです』
『はぁ、ありますが、まさかそれが魔と仰りたいのですか?』
『はい、その通りです』
──會場全がざわめく。
『古來より日本や、世界に魔は出現していました。日本を例えにするなら、穢れと師、式神などが代表的です。世界で例えるなら、悪魔と祓魔師エクソシスト、使い魔などがそうです』
──いつしか會場全が団長の話に聞きり、靜まり返る。
『開拓団に師やエクソシスト関係者が多い理由はこれにあります。では何故、2400年に世界規模でスタンピートが起こったのか、それは未だに解明できていません。ですが、スタンピートが起こる一年前前後より、本來一定の場所に開くDゲートが不規則に開くようになり、尚且つ強力な魔が出現するようになりました。この期間を"前兆"と呼んでいます。第壱次代侵攻が起こってから、200年周期で代侵攻が起こっているのは、皆さんご存知かと思いますが、代肆次フォース代侵攻スタンピートが起こったのが六十年前になります。その時にも、イレギュラーゲートが発生しました』
──俺の中で、一つの仮説がり立つ。
まさか、そんな・・・もし、もしもそうだとしたら。
『ここまで言えば皆様もお察しになっているかと思います。えぇ、我々は今回のワイバーン出現をスタンピートの"前兆"と考えています』
『「ッ!!」』
──余りの衝撃に會場も俺も言葉を失う。
──數十秒程の靜寂の後、団長が話し出す。
『皆さん衝撃をけたことでしょう。本來ならあと140年は無い筈のスタンピートの心配はなかった筈なんですから。ですが、これからはより激の時代へとなるでしょう。よもや私も人生で二度もスタンピートを経験することになるかもしれないのですから』
『えー、皆さん。最後に私、メディア課長の薫森しげもり 重蔵じゅうぞうより今後、皆様に留意していただきたいことがあります。今後もイレギュラーゲートは開くと予想されます。いや、もっと増える事でしょう。一度開いたゲートはこちらに座標を変更いたしますが皆様にも危険が及ぶ可能は充分にあります。ですので、皆様におきましては災害時の避難経路や食料、連絡方法などをよく確認し、備えて戴きたいと思います。以上です』
──此処で、記者會見から畫面がスタジオに戻った。
「備え、ねぇ・・・」
はぁ・・・。朝っぱらからあの時の事を思い出すような事ばっかだなぁ。そろそろ真剣に向き合わなきゃなのかねぇ。
なぁ、母さん、父さん。
──そして、學式を迎えた。
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