《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》子供の戯れ
「ありがとうございます」
「ありがとうっ!」
傷を治したの子と、その母親に禮を言われた。
ただ傷を治しただけだと言うのに、謝されるとは。こそばゆい。
「その…イクス?」
「む?どうしたのだ、兄よ」
「……」
兄マリアスは、やはりオレの言葉遣いに慣れないのか、なんとも言えない表を浮かべた後、口を開いた。
「さっきのって、魔法…だよね?」
「そうだが、それがどうしたんだ?」
「………」
む?絶句する程に驚く要素があったか?
オレの魔法の何処どこかがおかしかったか?
まぁ、獨學だから、おかしく思うのは仕方のない事だとは思う。しかし、これが一番効率の良い魔法式なのだ。世間で流行っている魔法は簡単だが消費が激しいのだ。
「イクスって、ずっと寢たきり…だったよね…?」
「ふむ。その通りだが?」
厳に言うならば、しだけしか起き上がる事が出來なかった為、たまに帰ってくる母に本を読んでもらっていたぐらいだな。
「その魔法…どこで…?」
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簡単でありながらも、難しい質問だな。
オレが転生者だと言えば済む話だが、混は避けたい。
ならば、だ。
「ふむ。なんとなくやったら出來た」
我ながら下手くそな噓だと思う。
だが、兄マリアスはオレの言葉を信じたのか、ワナワナと震えて數歩後ずさり、「天才だ…イクスは天才だったんだ!」と言って、どこかへ走り去って行った。
そんな兄を見屆けたオレは、ある事に気が付いた。
「む。置いてかれたな」
帰り道が分からんぞ。
大通りを一直線に歩いていた記憶はあるが、もしかすると、どこかで曲がったかもしれない。それに、どっちへ向かえば良いのか分からない。
「ふむ。どうしたものか…」
魔法を使えば楽に帰れるのだが、また言い訳するのも面倒だ。
適當にほっつき歩くのも良いと思うが、なにせ、このは5歳児とい。
小さな街と言えども、5歳児のオレが歩けば、家に帰れるのは、いつになる事やら…。
そんな風に考え事をしていると、服の裾を誰かが摑んだじがした。
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振り返ってみると、先程のがモジモジと恥ずかしそうにして上目遣いでオレを見ていた。
オレに趣味はないぞ。
「あ、あの…その…」
「む?」
何がしたいんだ?
言いたい事があるなら、ハッキリ言えば良いだろうに。
何を言い淀む必要がある。
「サ、サリアのともだちになってっ!」
バッと頭を下げて頼まれた。
ふむ。サリアが誰か分からないが、願ってもないことだ。
オレは友達がしかったが、向こうから友達になってくれるとは。これは、嬉しいこと…だ……。
……ふむ。意識が飛びそうだ。
あぁ、そうか。
このは魔力容量がまだなかったんだ。
オレが倒れるのは、必然と言う事…か……。
薄れ行く意識の中で、オレは町人達の慌てふためく聲を耳にして、し、面白おかしくじた。
〜〜〜
その後、倒れたオレは子供部屋で目が覚めた。
話に聞く限りだと、オレが魔法を使った幻覚・・を見た兄マリアルスはオレを置いて家に帰った事で、父にこっ酷く怒られたらしい。
そして、オレが魔法を使ったと言う事は、いつの間にか忘れ去られていた。
ついでに言うと、ヤブ醫者が『イクス様の調はまだ著しくないですね』と言ったせいで、部屋でされた。
まぁ、大人しく部屋で篭ってるオレではないがな。
それから、一年が経ったある日。
「イっくーん、あーそぼっ!」
あれから毎日懲りずにオレの元に遊びに來るーーサリアが子供部屋にってきた。
オレが怪我を治してあげたである。
ちなみに『イっくん』とはオレの事だ。
知らぬ間にサリアの中で定著してしまったアダ名みたいなものだ。
まぁ、わざわざ家に來たからと言って、する事など特にない。強いて言うならば、本を読んだりするぐらいだ。
とは言え、折角來てくれるのだ。
追い返すのは忍びない。
「ふむ。今日は何をするのだ?」
毎日同じ言葉を掛けているような気がするが、気にしても仕方ないだろう。
「今日はねっ!」
ゴソゴソと肩掛けのカバンを探り、
「じゃーんっ!」
カバンから石を取り出した。
ふむ。一見ただの石に見えるが、ほんの僅かに魔力が宿っているな。”魔石”で間違いないだろう。
主に魔ので生される魔力集合の一種だ。
余剰魔力が一箇所に集まり、濃され、出來上がる。それが魔石と呼ばれる。
「これ、なーんだ?」
「ふむ。魔石だな」
「………」
む?どうして黙り込む。
そして、どうして頬を膨らませて睨むのだ。
何か機嫌を損ねる事でもしたか?
この年頃の子供の考える事は分からん…。
「し貸してくれ」
ふむ。しご機嫌で取りでもするか。
このまま帰られては、次に會う時に顔を合わせ辛いからな。
オレは、サリアから魔石をけ取ってから部屋の扉や窓を全て締め切り、魔石にし細工をしてから魔力を流し込み始める。
しづつ、慎重に、魔石を壊さないように魔力を調節しつつれて行き、限界まで達すると同時に魔石の魔力を解き放つ。
すると、部屋が一瞬で暗くなった。
これは、『ブラックアウト』と言う魔法だ。
ただの子供騙しにしか使えないが、使いようによっては、これからの行う事象に大変便利な魔法になる。
「なんで暗くするの!?くらいよ!こわいよ!イっくん!」
サリナが怖がってオレの肩を摑んでガクガクと揺らして來る。
「ふむ。そう焦るな。そろそろだ」
そんなサリナを片手で押さえつけながら、オレが言葉を発し終えると同時に、部屋のあちこちに小さなが點々浮かび上がった。
ふむ。上手く起したようだ。
オレが作ったのは、簡易版の魔道ーー〈星空投影機プラネタリウム〉だ。
魔石に魔法陣を描き、それを魔石の魔力によって起させる。と言った、子供でも作れる簡単なものだ。
「なに!?った!ったよ!イっくん!」
まぁ、サリアは何が起きたか理解できてないようだがな。
それにしても、そこまで大喜びする程の事か?
大した事ではないのだがな。
まぁ、相手は無知な子供だから気にしても仕方ない事なのだろうが。
「ふむ。ったな。それらは夜にだけ見れるなのだが、見覚えはあるか?」
「…ない?」
なぜ疑問形なのだ。
一度は見た事があるはずだが…もしかしてだが、記憶がハッキリしないのか?
「ふむ。ないのか。夜に空を見上げれば観えるものなのだが」
「知ってる!サリアそれ知ってる!凄く綺麗なのっ!」
やはり、観ていたか。
前世では、夜は明るく、暗い場所など探した所で窟や迷宮ぐらいだったから、綺麗には観えなかった。
だが、ここは綺麗に観えるのだから、忘れるはずもない景だろうな。
「それを総じて何と言うか知っているか?」
「ソウじて…?」
「ふむ。全て、と言う意味だ」
「うーん…」
ふむ。分からないか。
それにしても、そこまで無理して首を傾げなくても良いと思うが…。
まぁ、良い。し早いと思うが答え合わせといこうか。
「星だ」
「ホシ?」
それも分からないのか…。
まぁ、いつかは分かる時が來るだろう。その時に詳しく教えてやればいい話だ。
「詳しい事を話しても今はまだ理解できないと思うが、それらは総じて星と言う。綺麗に輝くのもあれば、薄いものもある。それ以外にも、を発さないものもある。目に見えるものばかりが全てじゃないと言うわけだ」
「うーん、むずかしいー」
そうか。
まだそこまで理解できないか。
だが、サリアは楽しそうに天を見ているので、やった甲斐はあったと言えよう。
魔石に込めた魔力が切れるまでまだ時間はある。その間にオレは日課の魔力強制増強トレーニングでもしておくとしよう。
全ての生きのには、”魔力”と言う目には見えない世界の事象を変化させる力を持っている。
それらを行使できる人間は”魔法使い”と呼ばれ、無意識や意図的に使って能力を強化するのが”戦士”と呼ばれる。
それがオレの生きていた時代ーー魔導暦の話だ。
今は報不足で何とも言えないが、魔導暦の時よりも”ジョブ”が増えているのは母からの話で聞いた。
それはさておき、オレのにある魔力を全て作して外に出す。そして、大気中に存在する魔力と混合させてからに戻す。
これをすると、魔力過多の影響で全に激しい痛みが走るが、慣れれば我慢できない事はない。
魔力切れになっても倒れないようにするのも兼ねての大切な訓練だ。
ちなみにだが、失敗すると失神してしまうので慎重さも必要だ。
とは言え、痛みでがかし辛くなるのが問題だな。
しばかり訓練方法を変えた方が良いか?
いや、手早く済ますならば、これが一番早い。
もっと言うならば、魔界や天界ですれば、より多くの魔力や魔力以外のを手にれる事ができる。
まぁ、それをすると慣れるまでがかせなくなるがな。
そんな事をしていると、いつの間にか晝前になっていた。
晝になった事に気が付いたのは、丁度と言うべきか、タイミング良く魔石の魔力が切れて闇が晴れたからだ。
サリアは「もっかい!もう一回やって!」とせがんでくるが、それは無理だ。
なにせ、そろそろーー。
「イクス。晝ご飯だよ。起きれるかい?」
兄マリアスがオレに聲を掛けながら部屋にってきた。
ノックぐらいしてしいものだ。
まぁ、オレは気にしないが、サリナは違う。
「マ、マリアシュしゃま!おじゃまちてまちゅっ!」
心の準備ができてないサリアが噛みまくるのでな。
言い終わる時にでも舌を噛んだのか、涙目になっている。
「今日もイクスの為に來てくれたんだね。ありがとう、サリアちゃん」
そう言って兄マリアスはサリアの頭をでる。
だが、兄よ。し勘違いをしているようだが、サリアの本來の目的はオレではなく、兄マリアスに會いに來てるんだ。
サリアの抱く心をしは汲んでやってしいものだ。
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