《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》タイプ
「イクス。お前に教える事は何もない。何もないんだ!クソォ!!」
ふむ。泣きながら言われても困るぞ。父よ。
「イっくん!イっくん!見て見て!」
サリアがオレの素振りを真似て、しぎこちないが素振りをし始めた。
「天才が…天才が二人も…」
それを見た父が、両膝をついてあからさまに落ち込んだ。
この程度で天才とは…父のを疑うぞ。
しかし、これで分かった事がある。それは、サリアは魔法よりも剣の方が得意だと言う事だ。
だが、この程度は出來て當然である。
この先に幾つもの壁があり、それを乗り越えてこそ、真の天才と言うものだ。
なので、そう簡単に天才を作り出すものではないぞ、父よ。
それはさておき、オレは父に尋ねたいことがある。
それは、もうし先に予定していた事だ。
だが、今がこの狀況だからこそ絶好のチャンスと言うものだ。
「ふむ。父よ」
「あぁ…?」
まだ泣いているのか。
男としてけないぞ。
「街を出ても良いか?」
「あぁ…」
ふむ。予測通りの反応だ。
む?兄も行きたそうにオレを見ているな。
よし、良いだろう。
「ならば、サリアと兄を連れて外に行ってくるぞ」
「あぁ…」
ふむ。ここまで上手く行くとはな。
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父は復活するまで時間を要すると思うが、このまま置いといても良いだろう。
父は々と脆い人間だが、復活するのは無駄に早いからな。
まるで、前世の時に何度もオレに挑んできた”勇者を名乗るバカ”のようだ。
思い出しただけだが、凄く懐かしくじるな。また會えるのならば、今度は真面に相手してやろう。
取り敢えず、全て了承を得た。
街を出ても何ら問題はないだろう。
「兄よ。父からの了承は得た。外へ行くぞ」
「おー!」
「えっ、う、うん!」
落ち込んだままの父を庭に放置して、元気なサリアと戸う兄を連れてオレは街の外へと向かう事にする。
どうせ、放って置いても父は勝手に復活するだろう。
〜〜〜
街の外に出たオレ達は、”カルカヌス平原”と呼ばれる街のすぐそばの草原にて、早速だが三匹の魔と対峙していた。
「ちょっ!イクス!無理だって!」
そして、けない事に兄マリアスは魔を前に背を向けて逃げようとしていた。
そんな兄の襟首を摑んで逃さぬようにしながら、無理ではないことを教えてやる。
「そんな事はないぞ。サリアを見てみろ」
サリアは、刃を潰した鍛錬用の剣で、魔ーーゴブリン二匹と対等に渡り合っていた。
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ちなみに、一は數合わせの為に屠った。
ふむ。初めて剣を扱う筈だが、上手く扱うじゃないか。
やはり、サリアは魔法よりも剣との相の方が良いようだ。前世のタイプで例えるならば”戦士”で間違いないだろう。
だが、まだゴブリンなどと渡り合う程度では未だ。
「ぼ、僕には無理だよ!まだ素振りしかした事ないもん!」
何を子供のような事を…。
ふむ。そう言えば、兄はオレと5つ離れてるだけの子供であったな。
「ふむ。ならば、致し方ないな。魔を倒せば”経験値”を得る事ができ、より強くなれると言うのにな」
「えっ…」
「この辺りのゴブリンは弱い。弱いが故に、倒しやすい。必要であれば、倒し易いように手助けしようと思っていたのだが…。その必要はないのだな」
「そ、それは…」
「それならば、マリアスは見ているがいい。オレとサリアは全力を持ってゴブリンを殲滅し、大量の経験値を獨占するまでだ」
「わ、分かったよ!僕も戦うよ!」
ふむ。もうし手間取ると思ったが、案外簡単にオレの挑発にのったな。
「ならば、サリアと共に戦うがいい」
「でも、僕、まだ素振りしか…」
ふむ。覚悟が出來たのだとばかり思っていたのだが、違うのか。
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仕方ない。手助けすると言ってしまったからには、盛大に助けてやろうではないか。
オレが持っていた鍛錬用剣に魔力を適度に込めて槍に《錬》する。
《練》とは、を造り替えるだけの簡単な魔法だ。
よく鉱山で使用したものだ。必要な鉱石があると、山ごと『練』して手にれてた時が懐かしいぞ。
ちなみに、槍にした理由は兄が臆病だからだ。
し離れていれば、攻撃ぐらいできるだろうと考えた。
我ながら安易な考えだとは思うが、”魔眼”を失った今では武を一つづつ試すしか方法がない。
しかし、余りにも簡単に作りすぎて雑な作りになってしまったな…。
だが、まぁ、ゴブリンが相手だ。何ら問題もないだろう。
兎に角、それを兄に渡してやるとしよう。
「そうか。なら、これを使うがいい」
「えっ…今、どうやって…」
「つべこべ言う暇があるならば、背後にいるゴブリンをなんとかした方が良いぞ」
オレはサリアの橫を抜けて兄マリアスの背後から襲い掛かろうとしているゴブリンを指差して教えてやる。
「ーーっ!?」
「ふむ。良い反応速度だ」
振り返った瞬間にゴブリンが目の前にいたら驚くのは分かるが、初めての戦闘で初めての不意打ちを食らい掛けて瞬間に防に移るとはな。
思いの外、けるではないか。
伊達に素振りを4年間も続けていないな。
「一度距離を取れ。間合いを図ってから攻撃に移るのだ」
オレの助言を聞いた兄は的確に行し始める。
ふむ。やはり剣ばかり使っていたからか、槍は使い辛いようだな。
今度は何を使わせようか…。
「イっくん!倒せないよ!」
なぜだ?
例え、刃を潰しているとは言え、大陸を両斷するぐらいは出來るだろうに……そうだった。サリアは今日初めて剣を握ったのだったな。
ふむ。を教えるとは難しいものだ。
「ならば、剣に魔力を這わせるがいい」
「分かったー!」
返事をすると同時に、サリアは鍛錬用剣で対面するゴブリンを武の棒ごと切り裂いた。
「ふむ…」
イマイチな威力だな。
「ねーねー!イっくん!倒したよ!」
「はぁあぁぁ!!」
ふむ。兄もゴブリンを倒せたようだな。
「ふむ。ご苦労。して、兄よ。どうだ?」
「つ、疲れたよ…」
この程度で疲れるとは…弱すぎるぞ、兄よ。
サリアを見習うがいい。ゴブリンを倒せた喜びからか、跳び回ってはしゃいでるぞ。
ふむ。…雙方共にもっと鍛錬が必要だな。
「では、この辺りを限定として新たな魔を探して倒してくるがいい。サリア。兄を頼むぞ」
「はーい!」
「えっ!ちょっ!待って!待ってぇぇぇ!!」
ふむ。兄よ。まだ自分よりもいサリアに引き摺られて行くとはけないぞ。
さて、オレは獨自の鍛錬でもして待つとするか…。
鍛錬容はオレの弱なを強化する事だ。目標は、前世のオレを超える事であるが、まずは、普通の人間並みに力を作る事だな。
ただ、普通に行なっていては時間が1000年あっても足りないだろう。
ならば、だ。
普通でなければいい。
「『スキル解放。【限界突破】』」
オレのの限界以上の力を引き出し、常に力りきんでいる狀態にする。
そして、が悲鳴を上げ始めたら回復魔法の《ヒール》を掛けてやればいい。
それらを魔力の持つ限り無限ループさせると、必然とが強化されるはずだ。
後は、を形作る為の食事だけだが…。
ふむ。そうだな。ゴブリンの死が目の前にあるし、丁度良い。オレの作りの為に有意義に使わせてもらうとしよう。
〜〜〜
人間は、主に三種類のタイプに別れる。
一つは”魔法使い”。
魔法を得意とし、努力次第では多種多様な屬の魔法を行使する事が可能となる。
二つ目は”戦士”。
魔法を得意とせず、強化を得意とする派の者達だ。
そして、論外なのが、どのタイプにも屬さない”無能”タイプ。
名前の通り、無能である。
しかし、努力と言うのは素晴らしいものであり、努力次第では魔法の行使も可能とする。そして、その反対もある。
・魔・を鍛えれば、自ずと何でも行えるようになるのだ。
「ちなみに、オレは”無能”タイプだ」
前世でも今世でも、オレは無能であった。
無能とは、総合能力が平均以下の者の事である。
魔力で例えるならば、魔力を全てを使い切ると通常ならば一晩で回復するのだが、無能は10日以上掛かる。
魔法を使うにも、下手な人間が効率の悪い魔法を行使するよりも、より魔力の消費が激しい。おおよそ10倍以上も必要とされる。
力は下手をすれば転けただけで死に、力は剣一本すらマトモに振れない。歩けば、何かに躓いて死んでしまう程に脆弱なタイプだ。
生きていても、スキルの一つすら覚えれぬ程に無能なのだ。
個人差はあるが、オレは前世と変わらず全てが無能であった。
しかし前世の記憶があるオレには問題ない。使えるようにする知識を持っているからな。
ちなみに、今日はオレの部屋で座學中である。
これまで出來なかった座學だが、猛特訓する前に必ず教えておかなければならない事が幾つかあるのだ。
「はい!」
「なんだ?サリア」
「サリアは何のタイプですか!」
「サリアは”戦士”だ」
斷言できる。
剣を得意とする”戦士”タイプで間違いない。
教えれば教える程に吸収し、実力を憾なく発揮する。
覚えは悪い方だと思うが、で覚えるのは得意なようだ。
「イクス。僕は?」
「ふむ。兄はだな…」
兄は、正直に言ってしまうと分からないのだ。
魔法も使える。強化も出來る。剣や槍。その他の武を々と使わせてみたが、全て使えるのだ。
要するに、用貧乏なのだ。
無能タイプだと言えば話は早いが、兄には才能がある。オレと同じではないのだ。
必要な事だけを教えれば壁にぶち當たるまではびる。しかし、一度壁に當たってしまえば、見るからにびが遅くなる。
早とでも言えばいいのか?
オレのタイプとは真逆だ。
ふむ。変に誤魔化しても後で面倒になる。
正直に言っておくのが良いか。
「ふむ。分からぬ」
「えぇ…」
そう困った表を浮かべるな。
「だが、努力次第では間違いなくびる。斷言しようではないか」
「斷言されても、余り嬉しくないよ…」
「ふむ。なぜだ?」
「イクスの努力って、僕達の努力と掛け離れてるんだもん」
「それは違うぞ、兄よ。努力と言うものは、死ぬ気でやるからこそ努力と言うのだ。生半可な努力など、努力とは言わぬ。ただの遊戯だ」
「………」
ふむ。何を絶句しているのだ?
嫌が応にも、強くなるためには死線を何度も潛り抜けなければならないぞ?
そうして、ようやく強さと言うものが手にるのだからな。
オレだって、”無能”から駆け上がった人間なのだ。そんなオレが言うからこそ、真実味があるというものだろう。
「イっくん!イっくん!サリア、強くなれるの!?」
「ふむ。強くなりたいと言う意志さえあれば、努力さえ怠らなければ、どこまででも強くなれるぞ」
「やったー!」
「一どれほどの努力を積めばいいのか分からないけどね」
兄が何やら屁理屈を言っているが、なに、才能があれば300年ほど努力すれば、余裕を持って魔王を倒せるぐらいにはなる。
オレなんて、5年間もの努力と不意打ちと卑劣極まる行為で命からがら魔王を倒したのだからな。
「して、次の話だが…」
「まだあるの?」
「ふむ。次が一番大切なのだ」
兄がどこかウンザリしたような表を浮かべているが、そこは軽くけ流しておこう。
「二人は魔力をどんな力だと理解しているのだ?」
「うーん…凄いの!」
「魔法を使えるようにする力…?」
ふむ。サリアの答えは間違ってはいないが、合ってもいない。
兄の話で進めるとするか。
「ふむ。魔力があると魔法を使う事ができる。全くもってその通りだ。しかし、魔法だけではない」
「…?」
ふむ。分からぬか。
「魔力とは、この世界を形作る要素の一つだ。ありとあらゆる事象に関わり、それらを構築する。だからこそ、魔法があるのだ」
これ以上詳しく説明しても理解してくれぬだろうから、この程度の簡単な説明で良いだろう。
「魔力を使いたくば、魔法を知ろうとするのではなく、魔力を知る事だ。そうすれば、自ずと魔法が使えるようになる」
「な、なるほど…」
「分かったー!」
サリアは口ではああ言っているが、頭では分かっていなさそうだ。
兄だけが何とか理解できたぐらいだろう。
「では、明日からは、魔法、力、神力の三つを重點的に鍛えるとしよう」
「はーい!」
「う、うん…あっ!」
む?兄よ、何か思い出したのか?
「明日はダメだよイクス」
「ふむ。何かあったか?」
全く覚えがないのだが?
「明後日はイクスの誕生日じゃないか!」
「だからどうした?」
前世では毎年の年初めに誕生日を総出で祝っていた筈だが、今世では違うようで、5歳の頃に一度だけ祝ってくれた覚えがある。
ふむ。5歳毎にでも祝う習慣にでもなったのか?
「だから、イクスは10歳になるんだよ!?」
「ふむ…?」
訳がわからぬぞ。
「サリア知ってるよ!10歳になると教會って所に行って、神様から祝福を貰うの!これがそうなのっ!」
ふむ。サリアの手の甲に印が変わった付いているな。これは…なんだ?
まるで焼印でもしたかのような…それでいて、刺青で描いたような剣の紋様だ。
そう言えば、兄にも十字の紋様があるな。
そんなものを付ける習慣があるのか。
時代が変われば祝い事も変わるのだな。
し興味深いな。
「ならば、明日は休みだ」
「ホッ…」
兄よ。どうしてそこで安堵の息を吐くのだ。
そんなにも次の鍛錬を苛烈にしてしいのか?
おみとあらば、どこまででも鍛錬容を強化してやるぞ。
「ーーっ!?そ、そうだ!父さん!父さんがイクスの誕生日を忘れてるかもしれないから、教えてくるよ!明日にでもここを発つかもしれないから、イクスは早く寢るようにねっ!」
何かを察した兄は、早口で捲したてるかのように言い放ち、逃げるかのように部屋から出て行った。
まだ晝なのだがな…。
仕方ない。夕方までサリアと二人で特訓の続きでもしておくとするか。
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