《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》出逢い

「ガアァァァァッ!!」

2分も経ってしまったが、目的の場所に近付いてきたようで魔の聲が良く聞こえる。

は既に辿り著いて人間達と戦を開始しているようだが、気配を察するに、父の馬は無事なようで何よりだ。

木々を走り抜け、視界が開けて目視にて熊型の魔を確認した。剎那。オレは足を強く踏みしめて前方へと跳躍する。

背後で地面が散して、木々が吹き飛ばされたが、気にせずにオレは一直線に熊型の魔ーークレイジー・ベアの後頭部目掛けて頭から突撃する。

所謂、頭突きだ。

「ーーガッ!?」

クレイジー・ベアがオレに気が付くも、時既に遅し。

その時にはオレの頭突きがクレイジー・ベアの頭に命中していた。

どちらかの頭蓋が割れる音が聴こえたが、僅かしか痛みが襲って來ない事から、おそらくオレではないだろう。

ズドォォンッと音を立ててクレイジー・ベアが倒れる。その側に著地しながら周囲の確認をする。

父の馬は怪我はしていないようだ。へたり込んでしまっているがな。

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そして、その近くには馬車に繋がれた他の馬が3頭と、それを守るような布陣をしている兵士が15人居る。

そのの2人は怪我をして後退しているようだ。

「しかし、弱だな」

兵士や馬に向けた言葉ではない。クレイジー・ベアに向けて発した。

クレイジー・ベアはオレの何倍も大きな巨軀を持っている。対するオレは、まだまだ未な子供のだ。

なのに、オレの頭突き一発で倒れるとは、なんと脆弱な。前世では、どんな魔でも頭蓋を叩き割ったとしても立ち向かってきたぞ。

話は変わるが……こいつ、喰えそうだな。

おっと、ヨダレが。

「子供っ!?子供がなぜここに!?」

「いや、そんな事より、上級魔を一発で仕留めたぞ!?」

「な、何者だ!?まさかっ!貴様、魔族か!?」

「む?」

警戒心の篭った聲が投げ掛けられた気がしたから振り返ってみると、先程確認した兵士達がオレに剣を向けていた。

ふむ。オレの事が”魔族”か魔にでも見えてるのか?

有り得ん。どこからどう見たって、オレは人間の子供だろうに。

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そんな事を言っても信用などしてくれなさそうだから、し返答を変えるとするか。

「ふむ。そこの馬の持ち主だが?」

オレはへたり込んでる馬を指差して言う。

どうやら、先程の魔に怯えて腰を抜かしたようだ。

立ち上がろうとしても、後腳が産まれたての子馬のように震えて立てないでいる。

けない。

警戒心の篭った瞳に當てられながらも、オレは気にせずに父の馬の前に立つ。

「立て」

し威圧を込めて命令すると、馬は腳を竦ませて完全にへたり込んでしまった。

立ち上がる気配はないな。

もうし威圧を強めるか…。

「立て」

………またやってしまった。

父の馬が泡を吹いて倒れてしまった。

なんと脆弱な…。

やはり、馬は馬か…馬は食用に限るな。

む?ピクリと腳がいたぞ?

だが、起きる気配はなさそうだ。

これでは父の元に運ぶのが面倒になるではないか。

「ふむ。困ったな」

馬の一頭や二頭。運べない事もないが、面倒極まる。

それに、運んだとしても、いつ起きるのか分かったものではない。

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起きなければ食べるだけだが。

おっ、またピクリといたな。

まさかとは思うが、起きているのではないだろうな?

だとすれば、容赦しないぞ。

「貴様!何者だ!?」

「む?」

振り返れば、未だに警戒を緩めていない兵士達が先程よりも警戒を濃くしてオレに剣を向けていた。

どうやら、オレは人間として見られてないようだ。

なぜだ?

「この姿が人間の子供に見えなければ何だと言うのだ」

「喋り方からして怪しいな」

「だな。やっぱり魔族か?」

「上級魔を一撃だもんな」

「でも、魔族が人間を助けるか?」

どうやらオレが敵かどうか判斷できずに迷っているように見えるな。

ふむ。どうしたものか…。

「鎮まれっ!」

「「「………」」」

今の今ま黙ってり行きを見ていた兵士が唐突に聲をあげると、他の兵士達が口を閉じた。

雰囲気から察するに、この兵士達を指示する人で間違いないだろうな。

「俺は回りくどい事が嫌いだ。だから、単刀直に聞く。お前は何者だ?」

「ふむ。先程も言ったが、オレは人間の子供で、この貧弱な馬の持ち主だ」

詳しく言うならば、馬の持ち主の息子だな。

「その言葉に噓偽りはないな?」

鋭い眼と威圧の篭った聲で尋ねてきた。

だが、これぐらいで怯むオレではない。

「噓を吐いてもオレに得は一つもない。信じるも信じないもお前達次第だ」

兵士長の目を真っ直ぐに見つめ返しながら言葉を返すと、兵士長は瞼を閉じて思案する素振りを見せ、暫くすると口を開いた。

「…そうか。その言葉、信じよう」

「隊長がそう言うなら…」

ふむ。やはり兵士達の長であったか。

しかし、隨分と信頼されているな。

もうし疑われるかと思っていたが。

「俺の名前はガルード。小僧、お前は?」

「オレはイクスだ」

「そうか、イクスか。良い名だな。でだ、イクス。お前に合わせたい人がいるんだが、良いか?」

「ふむ。構わないが?」

おそらくだが、馬車の中に居る人だろう。

先程から、外に出ようとする気配と、それを必死に止めようとする気配が気になっていた所だ。

今は一箇所に留まっているようだが、落ち著きなくかしてるみたいだ。

そして、オレの予測通り、ガルードはその馬車の前に案した。

し待っててくれ」

「ふむ。分かった」

オレの了承を聞き、ガルードは馬車の中へ…。

「すぐに呼んでくれ!」

ふむ。ガルードが馬車にってから間も経たずに大聲が聞こえて來たぞ。

そして、ガルードは何だか申し訳なさそうな表を浮かべて戻って來た。

「先に言っておくが、すまない。々と面倒だとは思うが我慢してくれ」

「ふむ」

何が言いたいのかよく分からんが、

「分かった」

要するに、會えばいい話だ。

おそらくだが、彼等だけが馬車に乗っている事や、戦闘に參加してなかった事を考えるに、ガルード達よりも上の立場の人間なんだろう。

ふむ。他の馬を貰えないか渉してみるとするか。

されるがまま馬車の中へと腳を踏みれると、髪型がボッサボサの40代程の男と、オレと同じぐらいの歳のが二人。

ボーッと天井を眺める冴えないと、キラキラと瞳を輝かせてオレを見るが居た。

そして、涼しい馬車にも関わらず汗ダクになっている執事服を著た初老の男が男の隣に立っている。

「よくぞ參った!歓迎するぞ!」

「旦那様。し落ち著いて下さい。これではお客人を困らせてしまいます」

「そうだな!では、楽にしてくれて構わないぞ!」

まぁ、取り敢えず座ってくれ!と続けざまに言われるが座る席などない。

旦那様と呼ばれた男が一番奧の席に。

二人は壁側にある長椅子に向かい合って座っている。

そして、初老の男は立ったまま。

勿論、オレを案したガルードも立ったままだ。

ふむ。狹いな。

達の座る席は空いているが、座って良いのだろうか?

「それじゃあ、まずは自己紹介からだ!俺の名はアーク!アーク・ランディットだ!」

「ふむ。そうか」

會うのは今日限りだと思うが、名乗られたのだ。覚えておかなければ失禮だろう。

「「………」」

「………え?それだけか?」

「む?それだけだが。何か不都合でもあったか?」

何を驚いている。

驚く場面など一つもなかっただろうに。

オレが不思議に思っていると、隣に立ってるガルードが困った表を浮かべて、肘でトントンと叩いて小聲で言ってきた。

「イクス。お前も名乗るんだよ」

そうか。

名乗られたからには名乗り返す。

人が持つ変わった常識であったな。

生憎と、前世では人との関わりがなかったから忘れていたぞ。

「ふむ。オレはイクスだ」

「そ、そうか!イクスか!それにしても、イクス。俺の名前を聞いても驚かないんだな」

「なぜオレが驚かねばならないのだ?」

またもやアークが驚き、ガルードには肘で叩かれて、小聲で言われた。

「ランディット家は公爵家だぞ」

「ふむ。そうか。公爵家か」

上から數えて何番目の地位なんだ?

オレは政治には詳しくないから分からないぞ。

「それだけか?」

「ああ。生憎と政治には詳しくないのでな」

「まぁ、まだ子供だから仕方ないか…」

ふむ。中は歳食ってるがな。

「プッ、プハハハハッ!面白い奴だなイクス!気にったぞ!強さも十分過ぎる程に強い!どうだ?俺の下で働かないか?」

ふむ。突然笑い出すものだから、何事かと思ったぞ。

「働く気はないが、的には何をするのだ?」

「ガルード達を始めとした、騎士団の一員になるんだ!栄な事なんだぞ?」

栄、か…。

騎士団と言えば、前世で謂れの無い罪を著せられ、追い掛け回された覚えしかないぞ。

気が付けば指名手配までされていたしな。

嫌な思い出だ。

騎士団の所為で、幾つもの國に追われ、幾つもの國を潰した辛い想い出がある。

それがオレが転生したキッカケの一つであるからな。

「ふむ。騎士団の者とは今後とも仲良くしたいものだが、辭めておこう」

「なぜだ?騎士団にると將來は安泰だぞ?見た所まだ10歳にも満たないだろうに。だったら、今からるとなればガルードよりも上も目指せるんだぞ?」

オレはそんなにく見えるのか?

まぁ、見た目などどうでも良い。

理由を答えねばならないのか。

なんと答えたものか…。

「旦那様。無理強いはいけません。イクス様が困っておりますよ」

「おお!これは済まない!騎士団と聴けば誰もがりたがる筈だが、それを辭退するなど珍しくてな!ガハハハハッ!」

ふむ。理解した。

アークはオレの父と同じようなタイプだ。

”ジョブ”ではなく、格の方と言う意味でだ。

「今更だが本題にるぞ。騎士団でも苦戦する程の上級魔を倒してくれたんだ。その報酬の話だが…」

む?騎士団でも苦戦するとな?

あの貧弱なクレイジー・ベアでか?

おおよそ、子供であるオレを擔ぎ上げて機嫌を取る為の詭弁だろうな。

まぁ、都合が良いので放っておこう。

「ふむ。馬をくれ」

「即答だな」

ガルードが何か言ってるが、アークは無視して話を進める。

「それだけでいいのか?」

「オレは子供だぞ?ガキ一人が求めるなんてたかが知れてるだろ」

「それもそうか!」

ガハハッと豪快に笑いながらアークは話を続ける。

「だがな、俺はお前を子供として見てないんだ。その喋り方もだが、一介の冒険者にも引けを取らない程のその力に俺は嘆した。だから、お前を…イクスを大人と見て再度聞く。どんな報酬を求める?」

「馬だな。を言うならば、神力の強い馬がしい」

「本當にそれだけがみか?お前がむなら、金でも名譽でもくれてやるぞ?」

オレを試しているのか?

だが、無駄だ。それらはオレがしいと思えるものではないのだからな。

「ふむ。金なら幾らでも稼ぐ方法がある。名譽なんてものも必要ない。今必要なのは馬なのだ」

ついでに父の馬の後処理も頼むとするか……いや、アレは食うと味そうだから捌いて持って帰るのが得策か。

「なぜそこまで馬をしがるのか聴いてもいいか?」

「父が馬を必要とするからだ」

「そうか。親孝行だな」

そんなつもりはなかったのだが、そうなるのか?

まぁ、良いだろう。親孝行になるのならば、盛大に親孝行しようではないか。

「よしっ!分かった!ガルード!馬の手配を!」

「はっ!」

ガルードは心臓辺りのを強く叩いて敬禮をしてから馬車から出て行った。

さて、オレも…。

「まぁ、待て。いつ會えるか分からんのだから、お前の父には悪いが、し話をしないか?」

ちょっとした雑談のいか。

「ふむ。構わないぞ」

雑談は大歓迎だ。新たな知識と報が手にるからな。

父ならば放っといても大丈夫だろうし、問題ないだろう。

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