《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》別れ

雑談と言う名の報収集の為に馬車に殘り、アークが何かを離そうと口を開いた剎那。

「パパ?」

先程からオレを見定めるような視線を向けてきていたが痺れを切らしたかのようにアークに訴えかけた。

もう一人は未だに天井を眺めている。

天井を見てて何が面白いのやら。

「おぉ!そうだった!すっかり忘れていたぞ!」

「忘れないでよ…」

はムスッと顰めっ面を浮かべて拗ねた。

「済まないな、ミーネ」

ふむ。ミーネと言うのか。

どうでも良い報だな。

「それと、イクス。二人の紹介が遅れて済まないな」

「旦那様。私の事もお忘れですか?」

「…済まない」

どうやら、執事の事も忘れていたようだ。

近に居て存在を忘れるとは…いや、近だからこそか。

「ゴホンッ。では、気を取り直して…そうだな。誰からだ?」

なぜオレに聞くんだ?

「旦那様。イクス様に尋ねられても困らせるだけですよ。…では、手始めに私から」

執事が姿勢を真っ直ぐに正してから話し始める。

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「私は”ラッテン・マーカス”と申します。代々、ランディット家に仕える執事でございます。特技と言えるはありませんが、特筆するるとなると、家事や炊事を極めているぐらいです。今後とも宜しくお願い致したく存じ上げます」

深く一例してから、二人のに視線を向けたラッテン。

ふむ。どうやら、二人に自己紹介のお手本を見せていたようだな。

しかし、一人は全く聞いていなさそうだ。現在に至っても上の空狀態だ。

それはさておき、ミーネが立ち上がって偉そうにを張って話し始めた。

「次は私ね!私はミーネ!ミーネ・ランディットよ!えーっと、私は…私…あっ!私はね!パパの娘よ!」

ふむ。ラッテンの真似でもしているのか?

言い終わってから気が付いたのか、顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。

だが、すぐに顔を上げて、自己紹介のような何かを続け始めた。

「そ、それから、私の特技は、剣よ!誰にも負けないんだからっ!」

早口で捲し立てるかのように言い切って、椅子に座りなおした。

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それを見屆けてから、最後の一人。ずっと天井を見上げてばかりのに視線を向けると、いつの間にか立ち上がってオレを見ていた。

「私はリリル。イクス…私と結婚する」

ふむ。無表で戯言かどうか判斷が付かないな。

「はぁ!?」

「………!?」

ミーネは驚いきに聲を荒げ、アークは絶句した。と言う事は、真面目なのか?

前世にもこう言う事は…無かった。告白されるのなんてのは初めての経験だ。だが、問題はない。

「ふむ。……む?」

問題ない筈なのだが、斷り方が分からんぞ。

どう言えば良いのだ?

「リリル。婚約を結ぶのは構わないが、一つ聞きたい。どうしてイクスなんだ?いや、確かにイクスは強いぞ。顔も俺には劣るが整っている。……もしかして、それが理由か?」

む?それ以外に理由が思い付かなかったのか?アークよ。

それだと、オレがその程度の人間みたいではないか。

いや、彼等からすれば、その程度の人間なのか?

「小さなが集まったから」

「……は?」

ふむ。そう言う事か。

しかし、リリルの父であるアークには意味が理解できなかったみたいだな。

「ふむ。”妖魔の魔眼”か」

「なんだ、それは?俺にも分かるように説明してくれないか?」

知らぬのか?

知っていて當然の事だぞ?なにせ、魔眼の類ならば誰もが最低でも一つは持ってるだろうからな。

……そう言えば、今のオレには備わってなかったな。機會があれば手にれておかなければな。

「”妖魔の魔眼”。俗に伝えられている容では、”妖の園”に導く者が持つとされる魔眼だ。だが、これには誤りがある。”妖魔の魔眼”は幻影を見破る力を持っているのだ」

「………?すまない。もう一度、次はもっと詳しく頼む」

む?分かりやすく説明したつもりなのだが?

まぁ、良い。

端的に分かりやすく説明しようではないか。

「つまり、だ。目に見えないが見えるのだ」

「お、俺の娘にそんな力が…!?」

知らなかったのか。

「………」

ミーネが驚いた表で固まっているが…まさか、ミーネも知らなかったのではないだろうな?

家族である中でも、一番側に居る時間の長い姉妹であろうに。

まぁ、彼等の家庭の事かど詳しくは知らぬがな。

「リリル。お前が見たと言う小さきは”妖”と呼ばれる種族だ。覚えておくといい。時に、敵となり、味方となる曖昧な存在だからな」

「わかった。だから、結婚」

ふむ。本當に分かっているのか?

「妖…だと?ここか?ここにいるのか?」

「妖!私も見たい!どこ!?」

ふむ。二人は何を探し回っているのだ?

見えぬと言った筈だが…む?ラッテンよ。お前まで探し始めるのか。

オレの服をめくっても何も出ないぞ。

時に、お前は執事ではなかったのか?

どうして一緒になって探すのだ。

いや、執事だからこそ、か。これも、立派な仕事なのだな。邪魔するのは酷と言うものだな。

ふむ。さて、この狀況。どうしたものか…。

ただの雑談だと思っていたのだが…困ったな。

ーーー

俺は”ターナーカルカ”って所で辺境伯をしている”グランズ・ディルア”ってもんだが…。

今はし…いや、かなり困った狀況に陥ってる。

「イクスのやつ、どこまで行ったんだ?」

あいつが突然消えてから1時間は経過している。

所詮は子供だと思ってしばかり単獨行を許してみたが…ちとヤバイかもしれねぇな。

しかし、どうしたもんか。

突然消えるもんだから、足取りさえ追えねぇぞ。

もしも、イクスが怪我でもして帰ってきて、ナタリリアに知られてみろ。

何をされるか…想像しただけで鳥が立つぞ。

「いや、大丈夫だ。大丈夫な筈だ。なにせ、Aランク冒険者である俺の子だ。それに、素振りも……そう言えば、あの後どうなったんだ?」

イクスに初めて素振りをさせた數日前の事だが…思い出そうとしたが、思い出せん。

何かあった筈だが…。

「うーーん…」

まぁ、今更気にしても仕方ないか。

アイツ等も夕方には帰ってきたし…マリアスがボロボロになって帰ってきたのは疑問だったが、イクスのやつが問題ないって言ってたし、サリアちゃんも楽しそうにしてたしな。

後に、マリアスが怪我したのをナタリリアが発見して、俺が生ゴミと一緒に外に捨てられたぐらいだ。

で、だ。

肝心の現在。イクスの所在だが…。

困った……。

いや、いいや!違うぞ、グランズ!真の漢…いや、父ならば、黙って子の帰りを待つんだ!

後でナタリリアにされる事を今更考えたって仕方がない!怪我をしてでも帰ってきてこそ、俺の子と言うものだ!

……無傷で帰ってきてくれよ、イクス………。

ーーー

「ーーーそう言うわけだ。だから、妖と言う曖昧な存在は目には見えぬのだ」

「結婚…」

「それは…また今度だ」

「……分かった」

ふむ…。アーク達に説明するのに時間が掛かってしまった…。

リリルはリリルで「結婚、結婚」と執拗に迫ってくるものだから、本當に説明に時間を掛けた。

こんなにも説明に苦労したのは、前世を含めても今日が初めてだぞ。

問題が一段落著いた今。タイミングを見計らったかのように馬車の扉がノックされ、返事を待たずしてガンドがってきた。

いや、タイミングを見計らったのだろう。なにせ、俺が説明に苦戦している時にガンドは馬車の側でウロウロしていたのだからな。

「もう良いか?馬の用意ができたんだが」

「…ふむ」

なぜだ。

に苛立ちを覚えるぞ。

「一発で良い」

「何がーーダハッ!?」

「毆らせろ」

ふむ。言い切る前に毆ってしまった。

しかし、そこまで派手に吹き飛ぶ程に強く毆った覚えはないぞ?

オレは軽く毆っただけだ。

ああ、そうか。子供に優越を與える為に自ら跳んだのだな。素晴らしい心持ちではないか。

「言う前に毆るなよ!?」

ふむ。しかし、復活がしばかり早いな。

演技するならば、もっと上手くすれば良いと思うのだが…む?鎧が凹んでいるぞ?

る程。それで復活が早かったのか。わざわざ強度の弱い鎧に著替えて、それを見せる為に早く起き上がったのだな。

素晴らしい演技心ではないか。賞賛に値する。

「なんて力だよ…ったく…なっ!?鎧が凹んでやがる!?仕れたばかりのやつだぞ、おい…」

ぶつくさと何やら聴こえてくるが、それも演技の一種なんだろうな。

「ふむ。では、馬は貰って行くぞ」

「あ、ああ。そ、そうだ!これも持って行け」

そう言って投げ渡されたのは1枚の貨。

燃え盛る鳥の絵が描かれている。

…金か?

「お前のその力があれば、いつか必要になるだろう。だから、その時まで大切に取っておけよ」

「ふむ。分かった」

金ではないのか。それだと、この貨に何の価値があるかは分からないが…大切にしなければならないのであれば、大切に持っておこうではないか。

「…また今度」

馬車から降りる剎那。小さな聲でリリルの聲が聞こえたが、振り返らずにオレは手配された馬の元へと向かった。

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