《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ジョーク

一晩。アークが貸切にした高級らしい宿屋で過ごしたオレは、目が醒めると馬小屋に居た。

昨夜の事を思い返すと、馬小屋に居た理由がハッキリとした。

リリルから逃れる為だった。

トイレに行くも、風呂に行くも、部屋に行くも、ベットで寢るも、全てリリルに付き纏われていた為に、安息の寢床を求めて馬小屋に移したのだった。

「ふむ。馬よ。よく寢れたか?」

馬小屋の隅っこで震える馬に話し掛けると、ガクガクと首振り人形のように首を縦に振った。

ふむ。調子が悪いみたいだな。

「邪魔して悪かったな」

そう言って、オレは馬小屋を後にするが、気配で察する辺り、オレが離れた瞬間に馬達は気力を失ったかのようにその場でヘタリ込んだ。

どうやら、オレは馬達に怯えられているようだが…ふむ。なぜだ?

怯えさせる事など一切していないと思うが…?

まぁ、良いか。

「リリルって、ホントそれ好きよね」

「好きじゃない。大好き」

「そ、そうなの…」

朝食を食べようと、食堂へと向かうと、何やらリリルとミーネが會話に花を咲かせていた。

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ふむ。オレも參加させてもらおうとしよう。

「良い日だな」

扉を開けながらオレは朝の挨拶をする。

今日は一日中晴天になるだろうから、この挨拶だ。

だが、二人の反応は芳しくない。

「どんな挨拶よ」

ミーネには呆れられたが…時代が変わって朝の挨拶も変わったのか?

難しいものだな。

「おはよう、旦那様」

「ふむ。オレは旦那様ではない。イクスだ」

む?

リリルは何を大事そうに抱えているのだ?

「リリルよ。それは何だ?」

「英雄の本。私の寶

「ふむ。英雄か」

「読む?オススメは勇者様の話」

勇者には面倒くさい思い出しかないが、気にならないと言えば噓になる。

「どんな容だ?」

「オススメは勇者様の話」

読めと言うのだな。

「ふむ。し借りよう」

オレはリリルから本をけ取って何ページか捲って容にサッと目を通す。

ふむ。英雄の本と言うだけあり、オレが死んだ後の英雄まで載っているな。

しかし、なぜ英雄とは無縁の魔王に関しても載っているのだ?

まぁ良い。リリルが言っているのは初めのページにあったのでな。

ーーー

”古代歴”5200年頃。世界は兇暴な魔と暴の魔王の脅威に脅かされていた。

村々は侵略され、破壊され、世界は飢に瀕していた。

しかし、突如、どこからともなく一人の黃金に輝く剣を攜えた男が現れた。

彼は、魔法使い、槍使い、弓使い。三人のお供を連れて、人々が抱える不安を拭うために魔王の差し向けた魔と戦った。

時には、道に迷った子供を助け、困っている人に手を差しべ、魔に襲われた村を救い、貧困に襲われた町に祝福を與えた。

それでも魔に襲われる町々が後を絶たなかった。

魔王を倒さない限り、平和は訪れない。そう知った彼等は決斷に迷いを覚えた。

魔王は、強大すぎる力を持っている。そんな相手に勝てるのかと不安を抱えた。

そんな彼等に、黃金の剣を攜えた彼は剣を掲げてこう言った。

『僕達がやらなきゃ誰がやるの?これは、神様が僕達に與えた試練なんだよ!』

その言葉を聞いて覚悟を決めた彼等は、魔王を倒さんと立ち上がった。

時に仲違いをし、時に喜びを分かち合い、時に悲しみを分け合った彼等は、神々と霊達の祝福をけて、人々の不安を聖なる太で照らさんと各々の武を掲げて魔王を討った。

魔王が倒されて世界に平和が訪れた。

だが、黃金の剣を攜えた彼は、魔法使い、槍使い、弓使いの三人を殘して姿を消してしまった。

世界を救い、忽然と姿を消した彼の事を人々は尊敬の意を込めて、こう呼んだ。

勇者”オルタナ”とーー。

ーーー

ふむ。オルタナとはオレが前世で初めに呼ばれていた名だと同じだが…。話の容を見る限りだと、全くの別人だな。

まず、時代の名前が違う。

オレが魔王を倒した時代は”神魔歴”だ。

神族と霊族。魔族と人族が爭い合っていた愚かな時代だ。

そんな時代に、オレは右も左も分からない地で偶然出會った占い師に”オルタナ”と名付けられた。

隨分とボッタくられたがな。

なぜ、オレは右も左もわから地に居たのか、今となっては定かではないが、そんな記憶がある

思えば、オレには仲間など存在しなかったな。

ましてや、その時代は稅金が高い所為で剣の値段が高過ぎて手が屆かず、自作の木刀を護用として常にに付けていた。

そして、オレは聖人ではないのだ。なにせ、平和の為に魔王を倒した訳ではないのでな。

國の稅金が払えず、首が回らない危機的狀況に陥っていたのだが、不意に舞い降りた稅金の免稅と國からの多額の報酬と言う魔王討伐依頼に目が眩んで參加したのだ。

だが、金が支払われる事はなかった。

魔王が倒されて魔の活化が止まった事に人々は喜びはしたが、オレが勇者と呼ばれた事は一度もなかった。

その後、國から刺客を送り込まれる事は多々あったがな。

あの時は逃げるのに必死だったぞ。

そう考えると、全くの別人だ。

「ふむ…読んだぞ」

「はやっ!?」

どうした、ミーネよ。

読み終えるまでに5秒だぞ?これでも遅い方だとオレは思うが?

想は?」

「むっ…」

また難しい注文をするではないか。

オレはそう言った事が苦手なのだがな…。仕方ない。答えてやるとしよう。

「ふむ。聖なる太で照らさんと各々の武を掲げて魔王を討ったと書いてあるが、これはどう言ったなのだ?」

「私も分からない。だけど、凄い魔法だと思う」

ふむ。凄い魔法か…。

魔法でなければ一つ思い當たらない事もなかったが、魔法ならば該當するが思い付かないな。

「そうか。ならば、今度辺り研究してみるとしよう」

「研究?なにそれ?研究者のつもり?」

何やらトゲのある言い方だな、ミーネよ。

だが、それは違うぞ。

「オレは研究者ではない」

「なら、なんだって言うのよ」

「む?ただの子供だが?」

「「それはない」」

ふむ。2人同時に否定してくるか。

しかし、なぜだ?

オレは子供を演じきれてないのか?

これでも上手くしている方だとは思うのだが…。

2人に否定されて、困の渦に呑み込まれかけていたオレだったが、タイミングを見計らったかのようにラッテンが部屋にノックをしてってきた。

「お食事の用意が出來たようです。運ばせても宜しいでしょうか?」

ふむ。

ここの料理は母の手料理には劣るが味い。

それに、腹が減ってはいざという時にけぬからな。食事は大切だ。

ミーネとリリルが頷いて答えているのを橫目に、オレはしばかり冗談をえて言葉を発する。

「ふむ。頼む。実を言うと、腹が減りすぎて今にも倒れそうだ」

「す、すぐにお持ちさせます!暫しお待ち下さい!」

だが、ラッテンにはオレの冗談は通じなかったようだ。いや、ラッテンだけでなく、ミーネにもリリルにも通じてなさそうだ。

ミーネには呆れられ、リリルには心配そうな瞳を向けられた。

前世では當たり前のジョークだった筈だったのだがな…。

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