《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。では、行くか。
トレールで數時間。それから徒歩で數時間。
1日と掛からずに家に到著した。
こんなに早く移できるのならば、初めからそうすれば良いと思うのだが、父は「そんなもの使ってたら、旅にならねぇだろ?」と言っていた。
ならば、なぜ、帰りには使ったのだ?
……まぁ良いか。
それは兎も角、その數日後。父は母にこっ酷く叱られていた。
理由は、オレの左腕だ。
オレが大火傷を負い、あまつさえ後癥まで殘ってしまった事を母が知り、しっかりと面倒を見ていなかった父に激怒したのだ。
その際に、父がアークと呑み歩いていた事も知られていた。
ちなみに、ドラゴンのブレスによって負った後癥は、肩から先が全くかぬ事だ。だが、オレからすれば肩はくので問題はない。
治そうと思えば、いつでも治せるしな。
それから、4年としの時が経ち、オレが15歳になる年になった。
こんな些細な事など普段は気にしないのだが、數日前からこの年になるのを楽しみにしていたのだ。
その理由はだな…。
「よしっ!イクス!約束通り、再來月からお前には學院に通ってもらうぞ!」
こう言う事だ。
生憎とオレは人間の學び舎に行った事がないので、心しか楽しみにしているのだ。
「無事に卒業できれば、お前の好きな事をするのを許す!だが!それがダメだったら、お前にはこの街の兵士になってもらう!」
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數日前…年末に言われた事と同じ事だが、それでも良い。なにせ、どこかで聞いた話ではあるが、學院に行けば友が出來るのだ。
生憎と前世でのオレは學院に近寄る前に學院を管理する國を敵に回してしまっていたので、どうしようもなかったのだが、今回は違う。
現狀ではオレは敵を作っていない。だからこそ、學院に行ける。
今の気持ちを表すのならば、ウキウキとしていると言っても過言ではない。
そんな訳で、オレは今まで以上に努力をしている。勿論、サリアもだ。
共に學院に行く事になったので、その為の準備である。
勉學は勿論の事ながら、戦闘に関しても、オレが教えれる範囲の全てを教え、學院に行ってもバカにされないようしておく寸法だ。
學院とはを教える場所。そこで、バカにされてなどいれば、友など出來る筈もないだろうからな。
たった數ヶ月でどこまで長するかは定かではないが、なに、學院に行っても努力を怠らなければ良い話だ。
それからと言うもの、オレとサリアの努力の日々が続いた。
オレはより高みへと登る努力を。そして、サリアはオレに追いつく為の努力を主とした。
時には、竜討伐に向かいサリア一人で討伐させてみたり、剣と魔法を使っての模擬戦を行ってみたり、新たな魔式を作り上げて試し打ちしてみたり、と々な事を行なった。
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ちなみに、オレは空を歩く際の魔法を簡略化した魔式を作ったのだが、サリアは何をしようとしたのか分からなかったが、失敗に終え、周囲一帯を焼け野原にしていた。
それには、さすがのオレでも肝を冷やした。
街から離れた人気のない場所で行使して良かったと、安堵の息を吐いた程だ。
そして、遂にオレ達が學院へと向かう日となった。
「ふむ行ってくるぞ」
「行ってきまーすっ!」
今回は學院までの道程を馬車で移する事になっている。前のように馬に乗っては行っては、向こうで馬の世話をしなければならなくなるらしいのでな。
者は、街から街へと資を運ぶ商人だ。
「道中気を付けるのよ、イクス。危ない事はなるべく避けて、學院に著いたら到著の手紙を送ってね。絶対よ。それから、何か嫌な事があったら、いつでも帰って來ても良いのよ。お父さんが何か言うようだったら、お母さんが説教してあげるから」
母は相変わらずの心配だな。
それだけいっぺんに言われると、返す言葉に困るぞ。
「イクスに限って危険な事なんて無いと思うけど、なるべく問題を起こさないようにね」
「ふむ。善処しよう」
なぜかオレの父だけはいないが、それ以外の家族が出迎えに來てくれているのだ。
ちなみに、姉には未だに會った事すらなく、この場にも居ない。
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隣のサリアを橫目で見てみると、彼の両親は號泣しているにも関わらず、サリアはいつも通り元気な笑みを見せているようだ。
だが、どうもサリアは両親が泣いている理由が分かっていなさそうに見えるな。
「では、そろそろ行くとしよう。商人よ。頼めるか?」
「一応、メアードルって名前があるんですが…」
「ふむ。それは悪い事をしたな、メアードル」
「いえいえ。では、出発しますね」
「ああ、頼む」
オレの獨斷での判斷だが、なに、永遠の別れでは無いのだ。會おうと思えば會えるのだから、悲観する必要はない。
「バイバーイ!」
サリアは號泣する家族に向かって元気に手を振って僅かな別れを告げている。
ふむ。では、オレもしておくか。
オレが軽く手を挙げて別れの印にすると、兄は和かに微笑みながら手を挙げ返してくれた。
母は、涙を拭ったハンカチを持った手を振って送り出してくれた。
さて、では行こうではないか。
”オルタルーブ”學院へとな。
確か、馬車で急げば二週間と言う話だったので、今から出発すれば學試験の當日には著くだろう。
し強行な旅になりそうだ。
「ちょっと待てぇえぇぇぇぇ!!」
馬車がゆっくりと走り始めた時。街の方角から誰かがオレ達の出発を呼び止めるびが聞こえて來た。
振り返って確認してみると、父がこちらに向かって駆けて來ていた。
ふむ。
「すまないが、し止まってくれ」
「はいよっ」
メアードルに頼みをれたが、彼は既に手綱を引っ張って馬に停止の指示を送っていたようだ。
オレが言うまでもなかったようだな。
しかし、父は今の今まで何をしていたのだ?
出発し始めた時に來るなど、予想すらしていなかったぞ。
「ふぅ、ギリギリ間に合ったぁ…」
馬車の後部に手を掛けてゼーハーと荒い息を吐く父。
どうやら、全力疾走をしていたようだ。
余りに遅いものだから、全力だとは思わなかったぞ。
父はしの間、荒い息を吐いていたが、息を整えると手に持ったカードのようなを二枚差し出して來た。
一枚はサリアの分のようだ。
「ほれ、これ持ってけ。これがあると街にる時とかに便利だからよ」
…見覚えがあるな。
いつしか、トレールに乗る際に父のポケットから出て來た分証に似ている。しかし、描かれている容はし違うようだ。
「ありがとーっ!」
サリアは考える素振りすらなく嬉しげにけ取った。
オレも一応け取っておこう。
街にるのが楽になるのは、便利な事だからな。
「一応言っとくが、それはギルドカードだ。お前等が學院生のは冒険者をして小遣いを稼ぐ事になるだろうから、その為に必要なだ。だから、失くすなよ?」
ふむ。そう言うことか。
冒険者が何かは分からぬが、まぁ良い。
向こうで過ごしている最中にでも知る機會があるだろう。
「ふむ。了解した」
「立派になって帰ってこい!って言ってやりたい所だけど、お前等にそんな言葉は意味ねぇのな分かってる。だから、これだけは言わせてくれ。嫌な奴がいたらブチのめせ!」
父がそう言った瞬間、ガンッと母にフライパンで頭を毆られて倒れた。
見た所だと、気を失っているだけのようだが、母よ。そのフライパンは何処から出したのだ?
「貴方ったら、何を迷ったのかしら?」
ふむ。オレから言わせれば、母よ、何を迷ったのだ?
気絶までさせなくても良かったのではないか?
それと、そのフライパンの出所を知りたいのだが…。
「イクス。お父さんの言った事は無視するのよ?」
「む…。ふむ。分かった」
久々に気圧されたぞ。
しかも、眼力だけでなど…何千年振りだ。
「じゃあ、私はお父さんの説教があるから行ってらっしゃい、イクス。無事に帰って來るのよ」
「ふむ…」
そして、オレ達は生まれ育った、この街。”ランディス”を後にした。
〜〜〜
街を出発してから數日。
「いやぁ、ホントにお嬢さんは強いですねぇ」
魔と戦うサリアを見てメアードルは嘆の聲を上げている。
初めの頃は「危ない」や「逃げる」などの単語をギャーギャーと喚いていたのだが、変わりが早いようだ。
「ふむ。あれぐらいの雑魚相手ならば、サリアでも余裕だろうな」
なにせ、竜と戦っても傷一つ負わずに勝利を収められるようにまで育て上げたのだからな。
「雑魚って…Dランクの冒険者が5人集まって、ようやく一を倒せる程の魔ですよ?それを雑魚って…」
サリアが戦っているのは大型の蜂の魔だ。
それが數百といて、オレ達は囲まれているのだが、なに、サリア一人でも対処可能な數だ。
既に半分程が片付いている。
オレはと言うと、メアードルと會話しながらサリアが取り逃がした魔を片手間に摑んで軽く放り投げているだけだ。
オレが倒せば早く片付くが、それだとサリアの特訓にはならぬからな。
「ふむ。サリアよ。剣だけではなく、魔法も使うのだ」
前にも教えた筈なのだが、いつもサリアは剣で戦おうとする癖がある。
「分かったー!」
返事をすると共に、全に魔力が行き渡り、そこから滲み出した魔力がの表面を覆う。すると、全を魔力が包み込むかのように青白くを放った。
魔力を全に行き渡らせる事で能力を総合的に上昇させる《強化》と、外に纏う事で鋼を纏うかのように頑丈さを得る《武裝》だな。
そして、に纏う魔力を剣にも送り、剣も青白いを帯びた。
これは、ただの《武強化》だ。
《武裝》のように纏わせる事によって、頑丈さを得れる。そして、魔力で刃を作り出す事によって斬れ味も変化させる事の出來る魔法だ。
「む、無詠唱っ!?」
メアードルはサリアが詠唱せずに魔法を行使した事に驚きをわにしているようだが、詠唱などしていれば魔力効率が悪いし、応用も効かぬ。
本來の力の半分も出せぬだろう。
それに、そもそも詠唱をサリアに教えていない。そんな事を教えてしまえば、詠唱が癖になってしまうかもしれぬからな。
だが、魔法名だけは唱えるように教えたのだがな…。
「いっくよーっ!」
サリアが剣を雑に一振りすれば、剣圧だけで付近の魔者共は吹き飛ばされ、剣の軌跡から放たれる刃で遠方の魔者共は切り飛ばされる。
スキル【剣撃波】だ。
オレの得意技の一つである。
それが連発されれば魔者共もたまったものではないだろう。しかし、サリアが【剣撃波】を放てるのは數発が限度だ。
なにせ、簡単な風に見えて、その実、かなり力を消耗するスキルだからな。
サリアはその事を理解しているようで、吹き飛ばされた魔に【瞬】で瞬く間に近付き、トドメを刺して行き、殘った僅かな魔を倒して戦闘は終えた。
「イッくんっ!イッくんっ!どうだったっ?」
初めての群れをす魔との戦闘に勝利を収めたサリアは嬉しげに飛び跳ねて訊いてくるが…ふむ。
「まだまだ詰めが甘いな」
まだける魔が數匹殘っている。
なにせ、蜂の魔だ。首を刎ねたぐらいでは死なぬ。
「蟲の魔は、首や四肢を切るのではなく、心臓を潰すのだ」
そう言いながらオレは近くに落ちている生きた魔の心臓に《イベントリ》から取り出した木刀を突き刺す。
「でも、心臓は見えないよ?」
「へ?木剣?刺さった?いや、そうじゃなくて、どこから…?」
メアードルが何かを言ってるが、その質問に答える前にサリアは疑問を口にしたので、そちらを優先しよう。
「ならば、全を刻めば良い。そこまですれば、蟲とは言えど生き絶えるだろう」
「うんっ!分かった!」
返事をすると、既に死んでいる魔からける魔まで、見境なく切り刻み始めた。
側から見れば、気盛んなが暴れてるようにしか見えない景だ。
だが、オレからすれば、そうではない。
蟲の魔は危険なのだ。首を刎ね、四肢を捥ごうとも、攻撃をしてくるのだ。
かく言うオレも、過去に蟲の魔と戦って何度も傷を負った覚えがある。
それぞれに個があり、戦い方を知らなければ危険な相手なのだ。
「これが考え方の違いと言うものですか…」
ふむ。この様子だと、先程の質問は答えなくて良さそうだな。
〜〜〜
ガタガタと馬車は揺れるが、ゆっくりと流れる景を眺める旅は、そう悪くはないものだ。
時折、群れから逸れた魔が街道にり込んでくるが、それらは全てサリアの特訓に有効活用させてもらっている。
何が言いたいかと言うと、
「旅とは良いものだな」
旅をした経験は幾度もあるが、いつも一人だった。
友は居なく、一緒に行する者も居なかった。
前世のオレにとって、他人とは敵であったのだ。
旅をして會うのは、何かと理由を付けてオレを追い回す國々からの回し者や、依頼をけてオレを殺そうとする者達ばかりだった。
道中に人と會わなかった訳ではなかったが、姿を変え、喋り方を変え、聲を変えても、人々はオレに怯えて逃げてしまっていた。
オレが彼等に何かをした覚えはなかったのだが、なぜか、オレは人々に忌み嫌われていた。悪魔とまで言われた程だ。
なぜだ?
今になっても分からぬ。
「あっ!イッくん!見えたよっ!」
空を見上げて黃昏ているオレだったが、サリアが嬉しそうに聲を上げたので、そちらへと視線を向けてみる。
「…ふむ」
あれは…街か?
大きな壁に覆われているのは人が集う場所ならばどこも同じようだが、中の様子が一風変わっているようだ。
そこらの街ならば、中央には領主の屋敷があるのだが、その代わりとして見覚えのある時計塔が建っている。
それを中心として、東西南北と巨大な建で別けられているようだ。
そして、その建から一番離れた壁付近には、またもや東西南北で別けられた建と空白地帯がある。
「何か見えましたか?私には何にも見えないですけど…?」
「ふむ。気にするな」
この辺りは何もない平原なので、確かに近くしか見れない人からしてみれば草原しか見えぬだろうから、気にしても仕方ない事だ。
しかし、オレとサリアは【千里眼】のスキルを習得しており、メアードルよりも遠くの場所を見る事が出來るので、気になるものだ。
とは言え、サリアは【千里眼】を使用すると目を回す為、特訓の為に常に使用しておくようにさせていた《強化》で見つけたのだろう。
《強化》を使えば、筋力が強化されるだけでなく、目視で見える距離も強化されるからな。
ちなみにだが、【千里眼】とは人によって使い方が異なるが、オレの使用方法は誰かの見たを盜み見る方法だ。
今回は空を飛んでいた鳥の目を借りて、街…ではなく、學院を確認させてもらった。
【千里眼】を使用して學院を空から下見していると、ふと、近隣にある森が目にった。
この學院の建つ場所が、オレの予想する場所であるならば、この森には迷宮がある筈だ。
それを確認しておきたい。
なにせ、その迷宮の最奧にはーーむ?
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