《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。今日からだな。

「今日からだね、師匠」

「ふむ。そうだな」

あれから數日が経ち、メーテルの言う通り、今日から學院に通う事になった。

そして、現在は宿屋から學院に向かっている最中である。

サリア達、本試験に合格した者は既に寮へと移っているが、オレは再試験と言う異例の學なので、まだ寮の部屋が用意されていないのだそうだ。

いつ用意できるかも分からないと言われた。

「して、なぜメーテルがここに居るのだ?」

なぜか、學院長室で別れた時からずっと付けられているのだ。そして、宿屋を出るタイミングを合わせてオレに接してきた。

「ん?そりゃあ、あれだよ。えーっと、そう!師匠が今日から通うクラスを教えに來たのさっ!」

を張って言われたが…ふむ。そう言えば、聞いてなかったな。

「本當なら、君のクラスを擔當する教師が出向く筈だったんだけど、特別に僕が來たんだっ!」

そうであったのか。

それは野暮な事を聞いたな。

「ならば、オレのクラスは何処になるのだ?」

「うん!師匠のクラスはFだよ!全クラスの中でも最も績が悪く、素行も悪い。最低最悪の落ち零れクラスだね」

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なんの悪気もなさそうな無邪気な笑みを浮かべながら「師匠にピッタリだよ!」と言われた。

ふむ。では、オレはその部類に含まれるのか?

心でオレをそのクラスの人間達と同じと思っているのだろうか?

いや、それも仕方ないのかもしれぬな。

なにせ、オレは本試験に落ちているのだ。素行がどうかは知らぬが、績が悪いと言うのは頷ける話だ。

「まぁ、行けば分かるよ。僕が師匠をそのクラスに推薦した理由がね」

ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべると「じゃ、また後でね〜」と言って、屋伝いに學院へと向かっていくと、れ違いで模擬試験の試験ーータクルスが焦った形相で駆けてきた。

そして、オレの前に辿り著くや否や、ガバッと頭を下げた。

「すまんっ!遅れた!」

「ふむ」

「學院長の奴が俺を木に縛り付けやがったんだ!本當にすまんっ!」

「ふむ」

やはり、メーテルは侮れぬな。

自分では『君のクラスを擔當する教師が出向く筈だったんだけど、特別に僕が來たんだっ!』と言っていたが、その擔當者を拘束してけぬようにしていたとはな。

とは言え、考えてみれば確かに『來れない』とは言ってなかったがな。

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おそらく、タクルスが拘束から抜け出す事も想定済みだったのだろう。

「では、行くか。案してくれるのだろう?」

「あ、ああ!任せろ!」

頭を下げ続けるタクルスに出発の聲を掛けてやると、顔を上げてキョトンとした表を浮かべた後、をドンッと叩いてオレを先導するように歩き始めた。

ーーー

僕はメーテル。

メーテル・サルバートさ。

冒険者ランクはS。

ランクSは化け達に與えられるようなランクで、どれだけ頑張ってもランクAが限界って言われてる。だから、僕はこれ以上ランクを上げれない。

ちなみにだけど、過去最高ランクはSSSなんだよね。有り得ないよね?

そう考えると、僕は化け達のランクに片足を突っ込んでいるだけのただの冒険者って事だね。

それとね、”大賢者”なんて異名で呼ばれているけど、案外そうでもなかったりするんだ。

ただ、エルフだから人よりも魔力量が多く、扱える魔法も多いだけなんだ。

まぁ、普通のエルフ達と比べたら僕の方が扱える魔法の幅も広いけどね。

そんな僕だけど、師匠と會った時は驚いたよ。ホントだよ?

話には聞いてたけど、本當に神の祝福をけてない。なのに、魔力量が桁違いに多かった。

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神の紋様がないと、魔法もスキルも使えない筈なのにね。

試しに深淵の魔眼で覗いてみたら、もうビックリ。何も見えなかったんだ。

こんな事は”神の所有ゴッズ・アイテム”って呼ばれるアーティファクトを覗いた時以來だった。

神の所有ゴッズ・アイテムって言うのは、一國を簡単に滅ぼせる程の力を持ったアーティファクトの事さ。

でも、師匠とは敵対してる訳でもないし…いや、絶対に敵になんて回したくないけど…。

兎に角、學院長としての務めがあるから師匠と話しをしたんだ。

話の途中でが昂ぶったりもして、師匠に威圧を向けてしまったりもしたけど…いや、まぁ、威圧している僕が方が師匠かられ出した怒気に怖気付いてしチビっちゃいそうになったけど…。

見事に言い負かされたね。

ホント驚きの連発だったね。

まさか、僕が言い負かされるとは思いもよらなかったし、僕が気圧されるとも思わなかった。

それにね、彼…僕のに気付いていたしね。

もしかすると、初めから気付いていたのかもしれないね。僕が呪われているって事。

まぁ、それは置いといてさ、僕は學院が始まるまでの數日間の間、師匠の行を遠くから観察していたんだ。

でも、相手は師匠。

すぐに尾行している事に気付かれると思ったから、隠系のアーティファクトを沢山に付けて、絶対に見つからないようにしていた。

それで、師匠の數日間の過ごし方を見ていたけど…いやぁ、師匠の言っていた努力の真の意味が分かった気がしたよ。

初めはさ、何がしたいのかよく分からなかったんだ。

學院の外を歩き回って、キョロキョロと周囲を見渡す。そればかり繰り返していた。

だけど、人気の全くない場所に辿り著くと、その行の意図がやっと理解できた。

まさに、師匠は努力の化だったんだ。

地面に見た事もない難解な魔法陣を描いたと思えば、《強化》を使い、それを継続させながら空に向かって莫大な魔力の込められた魔法を無駄撃ちし始めたんだ。

魔法陣は複雑過ぎて僕でも理解できなかった。

だけど、なんとなく効果は分かる気がする。

魔力の吸収。それと、回復だと思う。

魔法をどれだけ撃っても無くならないのは、大気中の魔力を吸収してるからなんだろうね。

その証拠に、彼の周囲の木や草。土や小。全ての魔力を強制的に吸い上げ、枯らせていた。

遠くにいた僕の魔力まで持っていかれかけた時には驚いたよ。

師匠のは《強化》の使い過ぎでが裂け、骨が砕け、が剝き出しになる。と、同時に、途切れることのない回復魔法が師匠のを包み込み、出來たばかりの傷を塞ぎ続ける。

僕ですら見た事のない、普通とは掛け離れた《強化》だったけど、注意する點はそこだけじゃない。

そもそも、師匠がしてる事は、普通の人が出來るような事じゃないし、出來たとしても普通ならやろうとも思わない事なんだ。

を削って力を得る。悪くはない考えだけど、決して人に勧めれる事じゃない。

その日を終える頃には、師匠はボロボロで地面に倒れていた。暫くの間、全くかずに空をジッと見つめ続けていたぐらいなんだ。

いや、かずって言うか、けなかったんだと思う。

回復が追い付いていない程に師匠のはボロボロになっていたんだもん。

だけど、師匠はそれを毎日繰り返した。

何かと戦うわけでもなく、何かを極めようとしてるわけでもない。だけど、を今以上に強力にすると言う點では合點が行く行

もう、それは努力としか言いようがなかった。

アダ名気分で師匠って名付けたけど、まさに師匠の名に恥じない人だったよ。

だから、僕は師匠が本來る筈だったクラスをAからFクラスに変更した。

學院でのFクラスは、落ち零れ。能無し。雑魚クラス。々な呼び名で呼ばれてて、Fクラスの卒業生もハッキリ言ってしまうと手の付けられないバカばっかりなんだ。

大半は悪事を働いて死んだりする。殘りは、村人として平凡に生きているのも居れば、下級冒険者として生きていたりする。

それも、タチの悪い冒険者が多い。

だけど、そんなクラスに師匠がればどうなる?

凄く面白そうだろう?

それを僕は見たいと思ったんだ。

師匠は…イクス君は、何かをしでかしてくれる。それも、とっても面白そうで、凄い事をね。

そんな彼に僕は學院長として、そして、メーテル個人として、期待するよ。

何かを変えてくれる大きな存在になるってね。

ーーー

「おー!集まってるかー?今日から、ここがお前等、落ち零れ共が通うFクラスだ!ここが嫌ならを実力と績を上げやがれ!」

Fクラスの教室ると同時に、開口一番タクルスが大きな聲で生徒達に挨拶をした。

その後からオレが教室にり、中を見渡すとーー機の半數以上が空席で、居るのは4名。寢ていたり、空を呆然と見ていたり、必死に本と睨めっこをしていたりしている者達ばかりだった。

タクルスの話を聴いているのは、オレを除けば一人だけだった。

「ふむ。人が居ないな」

「だなっ!サボってんだろうよ!」

それは堂々と言う事か?

「せ、先生…その…みんなは…えと…屋闘技場に向かっちゃいました…」

オドオドとしたじで手を挙げて自信なさげに言ったのは、唯一、タクルスの話を聞いていた男だ。

的な顔付きで、見ただけでは男かかの見分けが付かないが、髪は短く、特有のはないので男だろうな。

正直に言ってしまうと、どちらかなど分からないので、男だと決めつけただけなのだ。

それは兎も角、隣のタクルスは男の話を聞いて面白そうなでも見つけたかのような笑みを浮かべた。

「もう始まってんのかよ!今年はいつもよりも早かったな!よしっ!みんな付いて來い!」

そう言って、タクルスは一人だけで先に走って行ってしまった。

殘されたのは、先程の男と、自分達の世界にり込んでしまっている者達だけだ。

「ふむ…」

「あ、あの…先生…行っちゃいましたけど…」

モジモジと恥ずかしげに…いや、自分自に自信がないのか?

それはダメだ。いざと言う時に自信がなければ即座にけぬ。そして、一番に敵に狙われる存在になる可能が高い。

クラスメイトとなったと言う事は、オレの友達候補でもある。死なれたら困ると言うものだ。

「ふむ。お前の名は?」

「えっ…その…レミナ…です…」

ふむ。全く視線を合わせようとしないな。

「そうか。で、レミナよ。お前はどうしたいのだ?」

「ど、どうしたいって言われても…」

困ったように視線を彷徨わせ、最終的には床へと向けてしまった。

まさか、自分で決斷も出來ぬとはな。

だが、悪い事ではない。努力して長して行けば良いだけの話だ。

それまではオレが幾らでも導いてやろうではないか。

「ふむ。ならば付いて來ると良い」

そう言いながら、片手を他の生徒達に向けて、魔法を発する。

この場にはサリアが居ないので、無詠唱だ。

「貴様等も付いて來るが良い」

オレが魔法を発すると、先程まで自分の世界にり込んでいた生徒達が一斉に立ち上がった。

「ん…?なに…?」

「な、がっ!?何が起きてるんだっ!?」

「まだ眠い…」

唐突に自分のが意思に反していた事に驚きを隠せないようだ。

しかし、これでは混を招いただけと同義だ。

「ふむ。黙れ。そして、寢るな」

オレの一聲に全員が口を閉じ、立ち寢をしようとした者はパッチリと目を見開かせて寢れなくしてやった。

これは、散々カラスに使った魔法と同じようなもので、《闇魔法》でっているだけに過ぎぬ。

オレよりも魔力作が上手ければ簡単に抜け出せる脆弱な作魔法だが、どうやら、Fクラス生徒には居ないようだな。

「付いて來い」

一聲発せば、その通りにく。

カラスの時は魔力だけで作したが、相手はカラスよりも何倍も大きい人間だ。だからこそ、魔力で作するのは魔力消費量が倍増するので今のオレではおいそれと使えない。

だからこそ、わざわざ聲によって指示をする必要があるのだ。

催眠とは違うが、聲によって他者のる事は同じだな。

オレを親の仇のように睨み付けてくる者も居るが、それらを引き連れて、オレはタクルスの向かった先へと足を向ける。

どこへ向かったかはレミナが言っていたので名稱は分かる。

しかし、場所までは分からぬ。

闘技場など、どこにあるのか見當が付かぬ。

取り敢えず、【気配察知】でタクルスと同じ気配を見つけ、そこへ向かうようにしている。

ちなみにだが、オレ達の教室は時計塔を囲む3階建の校舎からし離れた場所にある、木々などの自然に囲まれた平屋だ。すぐ裏手に運場がある。

3階建の校舎には、1階は多目的教室があり、2階にEクラス〜Aクラス。それから教務員室があり、3階全てはSクラスの為にあるらしい。

屋上はSクラス専用だそうだ。

他の校舎も同じような構造だが、學年が上がったとしても校舎から校舎へ移する事はないらしい。

學してから、ずっとこのままだそうだ。

それから暫く歩き続け、タクルスの気配のじる場所に辿り著いた。

時計塔の前にな。

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