《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。喧嘩決闘と言うらしいな。

「ふむ。タクルス達はこの下にいるみたいだな。…レミナよ。どうすれば良いのだ?」

「えっ…そ、その…」

突然話を振ったからか、レミナを揺させてしまったようだ。

これではマトモに話が出來ないだろうな。

…ふむ。仕方ない。

時計塔にれば必ず・・辿り著けるだろう。

「ふむ。付いて來い」

再度、クラスメイト達に命令を下し、後を続かせる。

時計塔のり口は、一見すれば、どこにもない。グルリと周囲を回ったとしても、り口らしきは見當たらない。

だが、り口は隠されているように見えて案外近にあるのだ。

場所はどこでも良い。時計塔の壁にれて軽く押し込むと、時計塔の壁がズズズッと重みのじる音と共に側へと沈み込むようにき、り口を作り出した。

り口の広さは人一人分だ。

そこへ、驚きをわにするクラスメイト達を連れ立って中へとって行く。

時計塔にると、そこは別世界だ。

まず、外と中とでは広さが全く違う。オレが良く使う《イベントリ》の応用で、空間を拡張しているのだ。

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そして、外からでは一切聞こえぬ歯車や力を伝えるシャフトがく轟音とも言える音が耳へと強引にってくる。

歯車が無駄と思える程に所狹しと配置され、床に減り込んでかないもあれば、歯車同士が噛み合わずして止まったままのもあり、空回りし続けているのもある。

しかし、それらの一つとして無駄な歯車はない。その殆どは罠の一部でもあるのだ。

者用のトラップの類で、これらがく時は正規の場以外で進された時などである。

どうなるかと言えば、時計塔の中がゴロリと変化し、決して出が出來ない迷路へと変貌させる。

出するには、罠を作させている歯車を探し出し、回転を止める必要がある。

故に、正規の方法で時計塔部へとったオレ達には関係のない代だ。

そんな訳で、オレ達はずんずんと時計塔の奧へと進む。

進むに連れて、歩ける場所がなくなり始め、遂にはく歯車の間をって進まなければならなくなった。

極端に運神経の悪い者が數名居たみたいで、歯車に挾まれかけていたが、間一髪で引っ張り出すことができたので問題ない。

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問題なのは、これからだ。

どこもかしこも歯車、歯車、歯車。

作った本人であるオレですら、どの歯車が、どの機関に繋がっているのか理解しきれていない程だ。

『自己進化能力』など付けるのではなかったな。

とは言え、時計塔の中心地はもう目の前だ。

辿り著いたと言っても過言ではない。

手短に《イベントリ》から鉄の棒を數本取り出して、近くのいていない歯車に放り投げておく。

これは、この先に進むと自で作する罠を止める為の処置だ。決して適當に放った訳ではない。これしか止め方がないのだ。

そうして、クラスメイト達を連れ立って、ようやく時計塔の中央である巨大な歯車の前に辿り著いた。

「なに…これ…」

レミナが愕然とした呟きを発するのも最もだ。

この時計塔をかす要となる力源だからな。かなり大きい。

…オレが作った時よりも大きいな。

やはり、自己進化したのか?

巨大な縦に空いた空間。上も下も真っ暗な空間が広がっているだけ。そんな中に幾つもの円狀の歯車が重なり合い、回転している。

その中心には黒と白のを放つ球コンソールがあり、それに近い程にきは遅く、離れる程に激しく回る。さながら、球を作り上げているようにも見える重なり合う歯車達だ。

何一つとして機械的には連結せず、ただ、そこに浮いている。フヨフヨとではなく、ガッチリと空間に固定されているのだ。

これこそが、オレがループであった頃、研究に研究を重ね追い求め続け、500年もの時間を要して完させた大魔道機ーー”永遠の歯車エターナル・ギア”。

時計塔の形を模してはいるが、それはただの偽造だ。本來の姿は、永劫に潰える事がないエネルギーを生み出し続ける永久機関なのだ。

これ一つで、世界全土を覆い盡くせる程のエネルギーを僅か數分で生み出す事ができるが、時計塔部にある歯車達の無駄なきで大半のエネルギーが消費されている。

使い方はどうあれ、莫大な価値のある代なのだ。

だが、まぁ、そうだな…。

クラスメイト達からすれば、巨大で幻想的なきをする歯車にしか見えていないのだろうな。

「ふむ。ただの歯車だ。気にするな」

とは言ったが、皆は納得してなさそうだ。

疑問や怒りなどの々なの込められた視線が背中に突き刺さる。

だが、無視だ。

気にしても仕方ないのでな。

「さて、行くか」

そう言ってオレは足を一歩前へと踏み出す。

「あっ…!」

レミナが咄嗟に手をばしてオレを摑もうとしたが、もう遅い。

なぜならば、オレは底の見えないへと自ら足を進めたのでな。

次いでなので、レミナの手を引いて一緒にの底へと落ちる。

続いて、オレの魔法の効力によってクラスメイト達も嫌々ながらにへと飛び降り始めるのが確認できた。

泣いている者もいるようだが、知らぬ。

この程度で死ぬわけでもあるまいしな。

それから落下し続けて數分。

恐怖にを竦めていた者や、気を失っていた者も正気に戻り、何やら悟りを開き始めた頃。

「ふむ。長いな」

時計塔の真下にタクルスの気配はあった。

そして、それから既に數分が経過している。にも関わらず、タクルスの気配はまだ下にある。

どうやら、時計塔が自己進化をし続けて空間までも歪めてしまったようだ。

し予想外だな。

永遠に落ち続ける底無しのに足を踏みれてしまったようだ。

そして、時計塔の地下に作った倉庫が行方不明になってしまった。

まぁ、問題はないがな。

余り使いたくはなかったが、戻るにもタクルスの元へ向かうにも倉庫に行くにも、これしか方法がないのだから仕方がない。

「”永遠の歯車エターナル・ギア”のアーカイブに接続。我が名はループ。指定位置を特定後エリア・テレポートを起せよ」

この時計塔を作ったのはオレだ。

ならば、これぐらいは可能である。

しかし、この名のオレは既に死んだ者として扱われている。勿論、”永遠の歯車エターナル・ギア”にもだ。

だが、オレがこの名を使った瞬間から、オレは蘇った事となった。

即ち、オレがこの世界に蘇ったと、オレが作り上げた他の魔導機達に知られてしまった。

”永遠の歯車エターナル・ギア”を完全に起させてしまったと言っても過言ではない。

今頃は、”永遠の歯車エターナル・ギア”から魔力を供給された魔導機達が起き始めている事だろうな。

そう思いながら、オレ達は眩いに包まれて一瞬にして屋闘技場へと移した。

「ぬあっ!?」

タクルスの頭上へとな。

オレ達が頭上に現れた事に気が付かなかったタクルスは、見事にクラスメイト達の下敷きにされた。

そして、オレは下手くそな著地を決めたクラスメイト達の上に上手く著地して、周囲へと目を向ける。

どうやら、オレ達は闘技場を囲う階段狀の観客席にいるようだ。

そして、舞臺にはサリアが居た。オレに気が付くや否や「イっくーん!」とオレを呼びながら無邪気に手を振っているようだ。その隣には、ズタボロになった數人の男子生徒が気を失って倒れている姿がある。

……狀況がいまいち読み込めないな。

「あのレスイル達を一瞬で倒すって…やっぱスゲェな。さすが特待生」

「だよねぇ。私達じゃ絶対に勝てない強さだよね」

「連戦連勝だぞ。しかも、集団が相手でも余裕って…。今年の特待生は化けか?」

「それでも、あの強さは異常だよ。確か、あの子って特待生でも一番でしょ?彼が特別なんじゃないの?」

周りの話に耳を傾けてみると、そんな會話が聞こえてきた。

會話をしている者達へと視線を転じてみると、制服に施されている刺繍のが違う者達がいた。

オレ達は紺に対して、彼等は青だ。

「あの人達は二年生よ」

ふむ。ミーネか。

気配から察するに間違いはないが、そろそろクラスメイト達の上から降りてやらなければならないので、ミーネの側に降り立つ。

「やっぱり貴方も來たのね。イクス」

「ふむ。して、これは何をしているのだ?」

「はぁ…分かってないのに來たのね。まぁいいわ。教えてあげる。これは、毎年恒例、新生同士の決闘よ」

ミーネが言い終わると同時に、新たな男子生徒が舞臺へと降り立つと同時に名乗った。

「俺はナルーズ家長男!ハヴァルカだ!」

そう言いながら、手持ちの剣を抜いてサリアに向かって駆け出す。

「まぁ、あんなじで名乗りを上げてから戦うんだけど」

サリアの元へと辿り著いた男子生徒が剣を掲げーー何もする事ができず一瞬のに木剣で叩きのめされて膝から崩れ落ちた。

ちなみに、サリアの持ってる木剣はオレ特製の列記とした剣だ。學祝いに挙げただ。

しかし、木剣だからと言って斬れ味がないとは思わない事だ。斬ろうと思えば、なんだって斷ち切ることが出來る。

男子生徒は斬られてないようだがな。

「あの子の前じゃ相手にすらならないのね…」

ミーネが呆れるのも納得がいく。

サリアからすれば男子生徒など眼中にないのだからな。

ずっとオレの名を呼びながら手を振っており、片手間で襲って來た男子生徒を叩きのめしたのだ。

おそらく自己防衛での反によるもので、サリア自では倒した事すら気付いてないのだろうな。

「ふむ」

オレも軽く手を振り返してやると、サリアは嬉しそうに飛び跳ねて、前に向き直った。

そして、目の前に倒れている男子生徒に見覚えがなかったのか、首を傾げた。

やはり気付いてなかったのだな。

「あの子…やっぱり強いわね」

「オレよりも強いぞ」

「噓でしょ…」

ミーネの表からは驚きが見て取れた。

大方、であるサリアがオレよりも強いとは思わなかったのだろうな。

しかし、であろうと子供であろうと、努力し続ける事で強くなれるのだ。

今は才能の差によって追い越されてしまっているが、いつかはオレが必ず追い越すつもりだ。

「(イクスより強いって…どんな化けよ…)」

ミーネが隣でボソリと呟いていたが、聞き取れなかった。

だが、気にする程の事でもないだろう。

「して、リリルが居ないようだが?」

いつもはミーネと共に居る筈だが、気配を察するに、今は近くには居ないようだ。

結婚結婚と言われないだけで、しの安堵を覚える。

しかし、オレの安堵は杞憂に終わった。ミーネは小さな溜息を吐いて舞臺へと指差して言ったのだ。

「リリルならーー」

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