《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。新たな教師が來たようだな。

「よく聞くが良い。怠惰を貪るお前達に朗報だ。本日から、タクルスの代わりとして新たな教師が赴任する事になった。名はーー」

「ループ。我が名はループ。我が弱たる貴様等の面倒を見てやる事になった教師である」

オレの背後。空間にを空けて出て來たローブ姿の老人が、オレの聲に被せるようにして名乗った。

深くフードを被って顔を隠す老人。その割には背筋が真っ直ぐであり、長も190cm程とオレよりも高い。長くばされた白髭が無ければ老人だとは思えぬ程だな。

「ル、ループって…」

ふむ。レミナよ。

何か言いたげな表だな。

だが、彼奴の方が先決だな。

怒りを現させたかのようにズカズカと歩み寄ってくる者。教卓に置かれた名簿を見る限りだと、名はウルトだそうだ。

「テメェ!勝手に仕切ってんじゃねぇぞ!ゴラァ!!」

ふむ。

オレに毆り掛かってきそうな勢いだな。

しかし、ループがこの場に居る時點では何の意味もさぬ。

「うむ。貴様。我を前にして良い度であるな」

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転移魔法を片手間で使ってウルトの背後に現れると同時に頭を鷲摑みにして持ち上げた。

「は、離せ!離せって言ってんだろうが!!」

「貴様等は、一時だけとは言え、今日から我の下ぼ…生徒である。勝手な行を取るでない」

ふむ。

今、下僕と言い掛けたな。

まぁ、良い。

「いっ!?クソッ!クソッ!!なんつー力だよっ!離せ!!離せぇ!!」

ループはウルトを摑む手に徐々に力を加えて行っているようで、ウルトはゆるりと襲いくる痛みに表を歪ませ始めながら、び、暴れている。

しかし、この狀況には不適切な行だ。絶対的な強者にそんな事をするべきではない。

「ーーっ!がああっ!!いでぇ!いでえぇぇぇぇ!!はなせぇっ!!はな”ぜぇえ!!」

細い腕のどこにそこまでの力があるのか。老人とは思えぬ程の怪力。

ガッシリと摑む手は、どれだけ踠いても離れず、徐々に力を込められてミシミシとウルトの頭から悲鳴が上がる。

「ふむ。しやり過ぎではないか?」

「うむ。そうであるな。大切な生徒に死なれては我も困る。離してやろう」

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ループの手から離れたウルトは、から床に落ちると、頭を抱えて蹲ってしまった。

おそらく、痛みの余韻が殘っているのだろう。

相當痛かったのだろうな。

「あ、あの…イクス君…ループって…」

ふむ。そう言えば、その問いには答えていなかったな。

良いだろう。答えてやろう。

しかし、大部分はボカすつもりだがな。

「つい先日、迷宮ダンジョンに潛った際に出會った魔法學の研究者だ。し話をして打ち解けてな。オレ達の教師を代理でしてみないかと聞いてみたのだ」

「そ、それで…」

「ふむ。潔く了承を得た。メーテルからの許可は得たので今日からしてもらう事にした」

「そ、そうなんだ…」

大部分は噓だ。

メーテルからの許可を取ったのは本當だが、それ以外は全て噓だ。

魔法で作り出したオレの分だとは口が裂けても言えぬからな。その事を隠す為に、わざわざループに一方的な記憶を植え付けた程だ。

容は、オレがループであった頃の斷片的な記憶と、迷宮で出會った事ぐらいだ。

しかし、こう言う時に”永遠の歯車エターナル・ギア”は役に立つな。分を出現させ続ける際に消費する魔力を全て肩代わりさせる事が出來るのだからな。

で、ループ本人に分だと気が付けないようにも出來た。

いや、ループならば気付くのも時間の問題か。

「………」

ふむ。

名簿を見る限りだと、今、挙手したのは”ファルメイル”と言う男のエルフだ。

「うむ。どうした?質問であるか?」

「お前は何様のつもりだ。その名前は永劫の賢者様ーーループ様の名前だ。お前如き、訳の分からない奴が勝手に名乗っていい名前ではない」

口調は突き刺すように冷たく、怒気を孕んだ眼

ふむ。確かに、ループと言う存在は今の時代では英雄とされているのは知っていたが…名を使う事すらも許されぬとは知らなかったぞ。

しかし、この名が使えなければループは存在できないのだがな…。

「そうであるか。して、それがどうしたと言うのであるか?」

「んなっ!?お前が!お前如きが名乗るなと言ってるんだ!」

「それは出來ぬ相談だな。我が名はループ。この名を持って我は我として存在しているのである。名を変えれば、我はループでない存在となる」

あながち間違いではない。

占い師との契約によって、オレと言う存在は”名”と共に共存するようになった。

生まれると同時に與えられる”名”。その”名”を持ってして、オレと言う存在を形作るのだ。

オレが”名”を変える時。それ即ち、の姿形や人格ーーオレと言う存在を捨てる時であるのだ。

しかし、それらはループと言う存在には當てはまらない。

契約の抜け道を利用した、ただ一つの存在だ。

ループは、ローブとフードで姿を隠す存在だ。

姿がないからこそ、ループと言う”名”なのだ。

姿を曝け出す時。それは、一時だけ名を変え、姿形や格を変える時である。

そして、それが可能なのはループと言う存在。ただ一つだけなのだ。

とは言え、名を変えてしまえば姿形が変わってしまう。そればかりは、どうしようもなかった。

今のオレに適用されるかは分からないが、前世のオレを分として出した時には適用されたので、注意は必要だな。

「何言ってんのかサッパリ分かんねぇよ!クソが!テメェ、何者だよっ!」

「我が名はループ。それ以外の誰でもない。貴様等の言うループである。これで満足であるか?」

ループの発した何気ない一言。

だが、クラスメイト達を驚愕させるには十分過ぎる一言だ。

なにせ、ループと言う存在は神格とされ崇められているぐらいだからな。

……ミーネのけ売りだ。

事実かは知らぬ。

「ループゥ?ハッ!フザケンてんじゃねぇぞ!ソイツは死んじまった過去の人間だろうがっ!お前がソイツな訳ねぇだろ!」

ふむふむ。

熱くなっているようだな、ウルトよ。

「うむ。確かに我は死んだ。だが、我は不死なり。再び現世に蘇ったのである」

「う、うそだ!巫山戯るなっ!死んだ人は生き返らない!例えそれがループ様であっても同様の筈だ!!」

ふむ。

ファルメイルも白熱しているな。

ループに々と喋られては困るのだが…そろそろ止めた方が良いか?

いや、その必要はないか。

「我は死なぬ。それが理である。異論があれば勝手に言ってるが良い」

この通り、ループは事実だけを伝え、それを疑う者は放置する格だ。

教えを請う者には惜しむ事なくを教え、それ以外の者は無視する。そして、害を為す者には躊躇なく鉄槌を下した。

要は、友を作れるような存在ではなかったのだ。

嫌な思い出だ。

だが、そうでもしなければ人間達は生きていけなかった。そう言う點では仕方なかったのも事実。

……虛しいな…。

「ふむ…」

「ど、どうしたの…?イクス君…」

「む。なに、問題ない」

「そ、そう…」

ふむ。まさかレミナに心配されるとは思いもよらなかったな。

揺してしまったぞ。

それはさておき、今日からは、オレの分であるループが教師を勤めることになった。

その日の殘りはループとクラスメイトの質疑応答だけで終了した。

クラスメイト達は寮へ帰り、オレの分であるループは永遠の歯車エターナル・ギアの管理をすると言って、時計塔へと向かった。

そして、オレはと言うと…。

「師匠ぅ〜。さっきの、し強引じゃないかなぁ?」

メーテルに捕まっていた。

メーテルのいつも浮かべている笑みが引き攣って見えるのは…気の所為か?

「何がだ?」

「あの、ループって人。人?人なのかな?」

「ふむ。一応は人間だ」

「一応って所が気になるけど、まぁ、いいや。それよりさ、僕、學院長だよ?學院長って偉いんだよ?それなのに、ループって人を教師にしたいって言う師匠の頼み方は…」

確か、手早く事を済ませる為に、學院長室にりメーテルを數分程待ち、メーテルがって來たと同時にオレを見て何かを言おうとしたので魔法で黙らせ、言う事だけ言ってメーテルが頷くのを確認してから退出したぐらいだが?

「何か問題があったか?」

「大ありだよっ!もうっ!あんなの頼んでるって言わないよっ!普通の人が相手なら恫喝になってるよっ!?」

「ふむ。そうなのか。承諾を得るだけならば問題ないとばかり思っていたぞ」

「そんな訳ないじゃんっ!もうっ!もうっ!酷いよ…」

そこまで落ち込む事なのか?

とは言え、全ての非はオレにあるのはメーテルの反応からして間違いなさそうだな。

「ふむ。それは悪い事をしたな。以後、気を付けよう」

「うん。うん。分かってくれて何よりだよ。それで、肝心のループ君は何処に?」

メーテルは周囲を見渡してループの姿を探しているようだが、生憎とこの場にはいない。

「ループならば、時計塔の中にいる。會いたければ明日の朝にでも時計塔前で待つと良い」

メーテルは待つ事が好きそうだからな。

なにせ、良くオレが泊まっている宿屋の前で數時間前からオレが出てくるのを律儀に待っているぐらいだ。

「時計塔前ね。分かったよ……ん?ループ君、時計塔の中に居るの?」

「そうだが?」

「えっ!?噓っ!?あの時計塔の中!?あの中ってれるのっ!?」

……しまった。

言わなければ良かったな。

はぁ…。まぁ、良い。

適當に誤魔化しておけば問題ないだろう。

「ふむ。オレとて分からない事もあるのだ。詳しい事は製作者に聞くと良い」

「製作者って、あの永劫の賢……あっ」

む?

「ループ君って…まさかっ!?」

どうやら答えに辿り著けたようだな。

後はオレの口から説明しなくても良いだろう。

「ねぇっ!師匠っ!ループ君って!えっ!?ホントなのっ!?ねぇってばっ!師匠っ!!」

ふむ。宿屋に帰るか。

背後からメーテルの聲が喧しく聴こえてくるが、答える必要がないと判斷したので、無視してオレは宿への帰路へと著いた。

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