《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。転移魔法は使わないでしい

翌日。

教室はガヤガヤと騒がしかった。

話題は勿論、昨日のループの事である。

「昨日の人、本當に來るのかな〜?」

「ループ先生は変わった人だったの。本當に永劫の賢者様なの?」

「本に出て來るループ様とは全然違う。偽

「そんな事よりっ!お腹空いたねっ!」

初登校から、たった1日で多種混合の陣グループが出來上がっていた。

昨日見た名簿を思い出す限りだと、一人目のし抜けた口調で話したのはドワーフのシャムルル。

二人目は呑気な格の狐獣人カエデ。

三人目は人間のテラクシィル。本が好きなのか、本ばかり読んでいる者だ。

四人目は食いしん坊の犬獣人ナナミ。

「うおぉぉぉぉ!!今日も熱だぜぇぇ!」

「ふんっ。何が熱だ。バカバカしい」

こちらは暑苦しい人間のレグルタと貴族のハミレイン・テルカルの會話だな。

會話と言うのか?

まぁ良い。

そこにドワーフのドゥカバラが會話に混ざったのでな。

「なんじゃ?熱いのは嫌か?儂は好きじゃぞ?」

「うおぉぉぉぉ!!同士よっ!!」

「おうっ!なんだか分からぬが、楽しい奴じゃな」

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ふむ。仲が良くて何よりだ。

それにしても、ループは何をしているのだ?

そろそろ來ても良い時間帯なのだがな…。

と、思っていたら丁度來たようだ。

スッと片開きのドアが開き、そこからループが姿を現した。そして、生徒達が居るのを確認してから口を開く。

「うむ。良い日であるな」

「チッ。どんな挨拶だよ」

反論したのはウルトだ。

だが、ループは頭ごなしに叱る事はしない。

なぜならば、ループはオレであってオレでないからだ。

「うむ。今日は地震が來るのである。滅多にない事が経験できるので、良い事ではないか?」

「ジシン?なんだよそれ」

「地震。大地が揺れる自然災害。…地震が起きる前れには必ず達が騒ぎ出すと記されている」

地震の説明をしたのはテラクシィルだ。

事柄の書かれているだろう本を捲って容の一部を読み上げていた。

「大地が揺れるだと?ンなわけねぇだろ。気でも狂ってんじゃねぇのか?」

「うむ。我は気など狂わさないのである。地震が起きるのは、おそらく夕方。達が騒ぐのは晝頃と言った所であるな」

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「ハッ。バカバカしい」

ふむ。験した事がなければ、そのような思考に至るのだな。

酷く殘念だ。

僅かでも信じる心を持ち、対処法を聞いていれば、もしもの時には迅速に行できるのだがな。

まぁ良い。それが此奴の考えだ。

口出しはしまい。

「うむ。質問は以上だな。では、學院からの報告を告げるのである」

コホンッと一度だけ咳を吐き、聲音を変えて話し始める。

「『今日は朝から全校集會があるから、生徒達を連れて育館に集まるようにね。ホント言うと面倒くさいんだけど、これも學院長の務めだし、すっごく面倒くさいんだけど、新生の子達にお祝いの言葉を送らなきゃならないしね。頼んだよ』との事である」

「えっ…誰の聲…?」

「子供…だよな…?」

ふむ。

やはり、ループの聲真似は素晴らしい出來だな。メーテルとソックリだったぞ。

しかし…この場にいる誰もメーテルの聲を聞いた事がないのか?

全員がキョロキョロと周囲を見渡して聲の発生源を探しているようだ。

ループが聲を変えて発したとは誰も思わないのだな。

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「なので、今から育館へ移するのである」

そう言ってはいるものの、誰もループの言葉が耳にっていないようだな。

「あ、あの…イクス君…」

「ふむ。どうした?」

「さっきの聲って…やっぱり、ループ先生が出した聲…なのかな…?」

「ふむ。そうだ」

レミナだけは誰が発したのかを聞き取ったようだな。素晴らしい観察能力だ。

俄かには信じられなくとも、信じようとするその意気に免じて、一つ助言をくれてやろう。

「それよりも、衝撃に備えた方が良いぞ」

「え?どういうーー」

視界が一転。

一瞬にしてオレ達は育館へと連れて來られていた。

ループが《転移》でクラスメイト全員を育館へと移させたのだ。

隨分と強制的な転移だった為に、初めて《転移》を味わう者からすれば、それは一種の拷問だ。

突然の転移によって一瞬の浮遊に包まれた後、育館へと移する。

そこはまだ良い。

時間の短が出來るので、良い事とも取れる。

だが、オレ以外の者は著地に失敗。床にから著地し、その後も吐気や眩暈を訴えかけている。

転移酔いだ。

距離が長ければ長いほど。そして、転移が強制的で強引な程に酷くなる。

以前オレが行使したのは、魔力を多放出するだけで拒絶できるものだったが、ループが使用したのは一切の拒絶が出來ないものだ。

その辺の事などループの頭には無いのだろうな。

オレとて、転移に慣れている訳でもないので眩暈と頭痛がしているのだ。

「え…どこから?」

「何もないところから突然現れたぞ」

「あの制服…Fクラスか?」

「よく見てみたら…今年の新生か?」

ふむ。どうやら育館には既に集まっていた生徒達が居たようだな。

だが、オレ達が最後な訳でもないようだ。

パッと見たじだと、三クラスしか集まっていないようなのでな。

それにしても…どうやって學年とクラスを見分けたのだ?

「うむ。予定時刻丁度に來た筈であるが、まだ集合しきれていないようであるな」

「ふむ。ならば、転移など使う必要は無かったと思うのだが?」

「學院長とやらが『遅れちゃダメだよ』と言っていたのである」

「む?そうか。それならば仕方あるまいな」

時間指定をされ、それに間に合うようにしたのであれば文句は言えないな。

「おやおや、これはこれは、落ちこぼれのFクラスが早く來るとは…珍しい事もあるものですねぇ。大災害が起きる前れですかねぇ?」

ふむ。誰だ?

他のクラスの所に居た痩せ男の教師が話しかけて來た。

口調にトゲが含まれているのは、オレの気の所為だと良いがな。

「うむ。大災害は起きないであるが、地震は起きるのである」

「おや?貴方は誰ですか?見ない顔ですねぇ」

「我は昨日から教師となったループである」

「クフフッ。ループ、ですかぁ?永劫の賢者様の真似でもしてるんですかねぇ?生徒も生徒なら教師も教師ですねぇ」

痩せ男が擔當しているであろうクラスの生徒達がクスクスと嗤っているな。

ふむ。ここまで言われればオレでも分かるぞ。

間違いなくバカにしているな。

しかし、ループは気付いてないだろう。なにせ、オレは転生して初めてバカにされると言う事を理解したのだ。ループが気付く筈がない。

「うむ。貴様の言葉は意味不明である」

「バマリス先生。ハッキリ言ってやらなきゃ可哀想ですよ。コイツ等Fクラスはバカだって。そうでも言わなきゃバカには分からないですよ」

「クフフッ。こらこら、言い過ぎですよ、マーカル君」

嘲笑いながら聲を発したマーカルと呼ばれた男子生徒を痩せ男のバマリスが宥める。しかし、バマリスもFクラスを嘲笑っている。

かなり直球な言葉だ。さすがのオレとて苛立ちを覚える。

「うむ。我のけ持つクラスは我が知恵に劣る劣等者であるな」

しかし、ループは何食わぬ顔だ。

此奴にとってみれば、この程度の嘲罵など戯言にしか聴こえてないのだろう。

「だが、貴様等も我が知恵に劣る劣等者である」

む?さすがのループでも苛立ちを覚えたのか?

いや、ないか。

これがループの素の筈だ。

あの時のオレは、この程度で苛立ちなど覚える事はなかったと思うのでな。

「んん?私達が貴方の知恵に劣ると?本當にそうお思いで?」

「うむ。我は言った筈だ。故に、貴様等は知識なき劣等者である」

「………」

ふむ。

バマリスは予想だにしなかった返答に聲も出ないと言った様子だな。

ループの発言の意味を理解しようとせず、ただ愕然とした表を浮かべている。

だがな、これがループなのだ。

此奴は噓や冗談を言わない。真実しか口にしないのだ。そう言う風にループと言う存在を作ったのだからな。

ループの言葉の意味をしづつ理解し始めてきたバマリスは、徐々に表を怒りに歪め始めた。

そして、何かを言おうと口を開いた瞬間。

「やっ!おはよっ!師匠とループさんっ!」

「が、學院長!?」

メーテルが現れた。

いや、元から居たのだが、今頃になって姿を現した。

「バマリス君。喧嘩はダメだよ?」

「ええ分かっています。分かっていますとも。ですが、この方が私めに突っ掛かってきたので、し説教をしてあげようとしていたのですよ」

ふむ。

全て見られていたというのに堂々と噓を吐くとは。なかなかどうして素晴らしく捻くれた格だな。

「ふーん。そう。でも、ループさんが相手じゃ負けちゃうよ?」

「フフッ。この私が?彼に?面白い事を言いますね、學院長。では、試してみますか?」

「やめといた方が良いと思うけどなー」

そうは言いつつも、メーテルはやってくれと言わんばかりの悪い笑みを浮かべている。

「どうなっても知らないよ?」

「クフフッ。言ってくれますね、學院長。この私が何処の馬の骨だか分からない彼なんぞに負ける筈がないでしょうに」

まるで悪戯が功して喜ぶような子供の笑みを浮かべながら、メーテルは視線をループに転じた。

「だそうだよ?ループさん。バマリス君はやる気だけど、どうする?」

「うむ。いつでも掛かってくるが良いである。不意打ち、一騎打ち、奇襲。どんな方法でも、我を倒せるのならば倒してみるのである」

「ク、クフフ…。言ってくれますねぇ…」

ふむ。バマリスは笑みを作ろうにも、湧き上がる怒りから歪んだ笑みになってしまっているようだ。

「では、お手並みを拝見させて頂きますよ…《ウォーターウォール》」

詠唱破棄によって発された水の壁がループを囲った。

…ふむ。

この場で行うのか。

まぁ、育館の天井が高いので、この程度であれば問題はないと思うが…ループの行使する魔法が心配だな。

バマリスは、追い打ちを掛けるかのように指先をループに向けて魔法名を紡ぐ。

「ここから出れますか?《エレクトッ》」

脆弱な電撃がループの周囲を囲う水の壁に纏わり付いた。

複合魔法《雷水の壁》を真似た魔法だな。

これが、もし本の《雷水の壁》であるならば、一度れれば電死。上部の吹き抜けには雷のが出來上がり、出るのは非常に困難となる。

しかし、バマリスが行使した魔法は真似事だ。

この程度、ループであれば力も魔力も必要としない。

「んなっ!?」

ただ、歩いて通り抜ける。

ループが取った行はそれだけだ。

水に濡れる事もなく、電する事もない。

ループの保有する魔力の質が余りにも高いが為に、脆弱な魔力で形作られた魔法は全く意味をさないのだ。

例えるならば、海にバケツの水を流しているに過ぎない。

「うむ。次は我の番であるな」

言い終えると同時に、雷撃を伴った水流がバマリスの周囲を囲った。

「魔法名。複合魔法《雷水の壁》。貴様の使った擬き・・とは違う。さぁ、そこから抜け出すを見つけるのである」

ふむ。

仕返しのようなやり方だな。

だが、を教えるには最適な方法だとは思う。

今のオレではこの様な考えには至らないだろう。

過去の。それも、獨自の思考を持った分だからこそ思い付く方法だ。

さて、バマリスはどう出るか。見ものだな。

一見すればバマリスの使った魔法と同種の魔法だが、全くの別なのだ。そう簡単には抜け出せまい。

魔法を個別で発させるのではなく、同時に発させる事によって威力と即効を高め、魔力消費を抑える。

その為、同じ魔力量を消費させたにも関わらず、バマリスの出した水壁は、ただの水の塊であるが、ループが出したのは、激しく蠢く流水になる。

それに、水に纏う雷の威力も桁違いだ。

それを理解しているのかは定かではないが、バマリスは雷の伴った水流に囲まれて攻めあぐねている様子だ。

いや、何か違うな。

「ク、クハハハハハッ!何が擬きですかっ!私の魔法と同じではないでーーアバババババババババッ」

所謂、バマリスはバカと呼ばれる存在の一人だったようだ。

なんの躊躇いもなく《雷水の壁》にれたのだ。それによって、バマリスの全に雷が駆け巡った。

ループがサッと手を振って魔法を消すと、雷を纏った水の渦が消え去る。そして、ドサリと音を立てて全から焦げ臭い煙を放つバマリスが倒れた。

「うむ。無謀で愚かである」

全くもって、その通りだ。

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