《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。特訓だ。

ふむ。面白いを見れたな。

タクルスの顔を思い浮かべると、笑いを堪えるのに必死になってしまう。寫真に保存しておきたかったぐらいだ。

後でループに頼むか。

それにしても、まさか、あれ程まで混を見せるとは予想外だった。おもわず吹き出しそうになった程だ。

ちなみにだが、初めに醫務室にったのがオレだ。次にループがり、闇魔法《幻》を醫務室の空間に掛ける。

すると、どうだ。

オレ達がワンサカと居る狀態になる訳だ。

いやはや、本當に面白かった。

「ハハ…ハハハ…ハハハハ…」

タクルスが現実逃避をし始めたので、そろそろ種明かしをしても良いだろう。

どれが本當のループかオレでも見分けが付かないが、取り敢えず、隣のループを見やって一度頷く。

すると、壁際に居たループが頷き返した。

どうやら、違ったようだ。

だが、反応はしてくれたので問題はない。

ループは《イベントリ》から『恵のハリセン』を取り出し、タクルスの頭を毆った。

ーーパァァンッ!

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「ぬあっ!?」

ふむ。どれだけ時が経とうと、変わらず良い音だな。

しかし、まだ微睡みの中のようだ。

…起こすか。

オレも《イベントリ》から『覚醒の木刀』を取り出し、タクルスの頭を軽く毆る。

「イッテェェェ!!」

悲鳴を上げつつ起きたようだ。

だが、大袈裟だな。

跳び上がる程ではないだろうに。

一応、カツラと仮面を外して《イベントリ》に放り込んでおく。

ループも魔法を解き、フードを被り直した。

「ふむ。良い余興であったぞ」

「うむ。我も久方振りに心から楽しんだのである」

「へ?あ?ん?イクス…か?學院長は…?」

「ふむ。この校舎の二階。學院長室に居るようだ」

「………俺、寢てたのか?」

「いや、起きてたぞ。お前の反応は実に愉快であった」

「お、おおお…」

「む?」

「お前の仕業かあぁぁ!!」

何をそこまで怒るのだ?

取り敢えず、ぐらを摑み掛かろうとしてきたので理防魔法を張って阻止する。

「グベッ!」

見事な張り付き方だ。

潰れた顔が、これまた面白味をう。

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「クク…クハハハハッ」

俺が笑いを堪えきれなかった程だ。

「ハッ!」

それだけではない。を全くと言って良い程に表に出さないループを笑わせたのだ。此奴には素晴らしいぐらい笑いの才能があるぞ。

〜〜〜

タクルスの気が収まるのに暫し時間が掛かったが、なんとか気を落ち著かせたタクルスは一呼吸置いて、大きな溜息を吐いた。

「はぁ…。全く。見舞いに來てくれんのは良いけど、ちと、タチが悪過ぎるぞ。やりすぎだ」

「それは叱っているのか?」

「當たり前だ!ったく…」

ふむ。叱られているのか。

他人に叱られるなんて何千年振りの事だろうな。

「で、そっちの怪しいのが新しい教師か?」

「うむ。我が名はループ。前任の教師、タクルスである貴様には我が下僕となってもらうのである」

「また変わった奴だな…。イクスの周りには、こんなのばっかりだな。一応言っとくが、下僕にはならんからな」

「うぅむ…」

珍しくループが落ち込んだな。

それだけタクルスを気にったのだろう。

「ふむ。ループに気にられたようだな」

「どうなったらそうなるんだ?」

分からぬ奴だな。

ループに気にられると言う事は、誰にでも出來る事ではないのだ。

それこそ、何百年と子々孫々でループの側に付いて世話を焼き、飽きられないように蕓を披し、新たな知識を絶えず得ようとする者でないと無理な話だ。

いや、それでも誰一人として気にった者が居なかったな。ただ、無駄に付いてくる邪魔な者達と思っていたぐらいだ。

「うむ。イクスよ。あの件。我が下僕、タクルスに任せてみてはどうであるか?」

「おいっ。俺は下僕になるって言ってねぇぞ」

「ふむ……良い案だとは思うが、力量が足りなくはないか?」

「おい、聴けよ」

「それならば、鍛え直せば良いのである。気力は十分にあると判斷した。途中で斷念する事はないのである」

「なぁ、聞いてくれねぇか?」

ふむ。ループが斷言する程か。

ならば、試してみても良いだろう。

「分かった。オレが教えよう」

「うむ。頼むのである」

「だから、俺の話を聞けって!」

タクルスは何の話をしているのか理解していなさそうだが、まぁ良い。後になれば分かる事だ。

ループがオレとタクルスの肩に手を置いた剎那ーー一瞬の浮遊に包まれ、景が一変した。

空間魔法《転移(テレポート)》だ。

學院の外にある野花の咲き誇る場所へとした。

「次は何だよ…ってか、ここどこだ?」

ただ、學院付近を歩き回ったとしても、この様な場所には行き著かないだろう。

なにせ、ここはーー。

「うむ。ここは”地の迷宮”。迷宮ダンジョンである」

この世界に12しか存在しない巨大迷宮の一つだ。

それが、この學院のすぐ側にあり、その130層目に移したのだ。

「はぁ…また訳の分からん事を…。"地の迷宮"つったら、迷宮都市だぞ?學院からどれだけ距離があると思ってんだよ。また何かの悪戯か?」

「む?何を言ってるのだ?ここは正真正銘の”地の迷宮"だぞ?」

「それ、本気で言ってるのか?一応言っとくが、俺は”地の迷宮”に行った事あるんだぞ?」

「ふむ。では、聴くが、そこはどんな場所だったのだ?」

「それは、迷宮の構造か?それとも、魔の話か?」

「構造だ」

「えー…確か、全一層の窟型で、出り口が沢山ある。んで、兎に角、落としが多かったな」

ふむ。いつか迷宮都市とやらに行く必要が出たな。

「そこは”奈落の迷宮”だ」

落としと言うが、そこにれば、より際奧へと進む事の出來る道へと繋がる変わった迷宮だ。だが、落ちた先は視界が全く効かない。

永遠に暗闇が続く事から”奈落の迷宮ダンジョン”と呼ばれていた。

そして、何よりも奈落と呼ばれ恐れられていた由縁は、階層の広さと深さだ。

全く視界が効かないにも関わらず、12ある大迷宮の中でも一番の大きさを持っているのだ。

一度落ちれば帰ってこれない。とまで言われた程だ。

タクルスは何かを考えるような素振りを見せているので、この話はこれで終いだな。

「後の事は頼むぞ、ループ」

「うむ。頼まれたのである」

後の事と言うのは、クラスメイトの事である。

暫く、オレとタクルスは留守にするので、その間のクラスメイトの面倒を見る事と、メーテルへの説明をしに行って貰ったのだ。

ループが《転移(テレポート)》で帰って行くのを目に、再度タクルスへと視線を戻す。

「ふむ。では、早速始めるとするか」

「ん?何がだ?…ループの奴はどうした?」

どうやら狀況を理解できていないようだな。

まぁ良い。もうしすれば嫌でも理解するだろう。

《イベントリ》から木剣を取り出し、タクルスへと投げ渡しつつ、軽く説明する。

「心を落ち著かせ、意識を研ぎ澄ますのだ。眼で見るのではなく、己が心で見よ」

「何言ってんだ?お前…頭大丈夫か?」

「つべこべ言う暇があるならば、さっさと木剣に魔力を流して背後の魔を倒せ」

「あ?…ぬあっ!?」

オレが指差す方向へとタクルスが振り返った瞬間、タクルスは魔に毆り飛ばされた。

折角、忠告してやったのに、もう忘れたようだな。

取り敢えず、たった一撃で瀕死となってしまったタクルスに回復魔法を掛けてから、《作》の魔法を掛け、強制的に立たせる。

「此奴の名は”アイアン・トータス”。鋼鉄の甲羅を背負った亀だ。きは遅いが、一撃食らえば痛い。倒してみろ」

「こんな木剣でどうしろってんだよっ!」

悲痛なびを上げるタクルス。

確かに木剣が今の攻撃で折れてしまっているな。

しかしだな、武に頼りきりなのは頂けないな。武がなくとも戦う意思を見せてしかったぞ。

やる前から諦めていては、そこで戦いは終いだ。時に逃げて戦略を練る事も大事だが、今は戦って勝利と経験を得る時なのだ。

木剣が折れたぐらいで諦めてはしくないが、まだ始めたばかりだ。仕方ないのだろうな。

「案ずるな。予備ならば幾らでもある」

新たに取り出した木剣をタクルスに投げ渡す。

「そうじゃねぇ!俺が言ってんのは、そうじゃねぇんだよ!」

グチグチと煩い奴だな。

アイアン・トータスが一歩タクルスに近づくたびに、タクルスも一歩下がる。

これではイタチごっこだ。

仕方ない。助言をれるか。

「此奴を斬れ」

「んなっ!?無茶言うなっ!」

「無理ではない。手足に魔力を流すように、剣に魔力を流すのだ。纏わせ、鋭く、頑丈に。『心を落ち著かせ、意識を研ぎ澄ますのだ。眼で見るのではなく、己が心で見よ』この言葉を忘れるな」

「何言ってんのかサッパリだよっ!クソッ!」

「ふむ。タクルスよ。お前がグズグズしているから集まってきてしまったぞ?」

オレの背後から五匹。

タクルスの近くに二匹。

その他の方向から十三匹。

のっそのっそ、とアイアン・トータスがやってきた。

「どうしろってんだっ!!」

「ふむ。倒せ」

「できるかっ!」

ふむ…まだ渋るか。

……良し、分かった。

「手本を見せてやる。よく見ておけ」

魔法名《武強化》。

側に魔力を流す事で化、又は化させる。そして、周囲を魔力で覆う事によって、斬れ味を増すと言う効果を持つ。

魔力制が上手い奴程、《武強化》の真意は発揮される。前衛職であるタクルスでも使える比較的簡単な魔法だ。

《イベントリ》から手頃な木の枝を取り出し、《武強化》を施してから近くに這い寄ってきていたアイアン・トータスに雑に振り下ろす。

スパッと小気味よい音が鳴り、アイアン・トータスは真っ二つになり、魔力の粒となり消えた。

殘ったのは、ドロップ品と呼ばれる、ダンジョンの特産品だ。わざわざ魔を解せずとも綺麗な狀態の素材が手にるのだ。だが、普通に外で倒すよりは素材數がない。

今回は甲羅と魔石だった。

「コツさえ摑めば簡単だ」

「簡単に言うなっ!お前の基準はおかしいんだよっ!」

「何事もやってみなければ分からぬ。さぁ、やるのだ」

「だあぁぁぁ!!クソォォ!!」

びを上げながら、剣に魔力を纏わせてアイアン・トータスに切り掛かるタクルス。

しかし、それではダメだ。

タクルスの振るった剣は、太刀筋はそれなりだが、アイアン・トータスの甲羅に阻まれて弾かれた。

ついでに、反撃の突進まで食らって吹き飛ばされた。

即座に回復魔法を掛けて、強制的に立たせる。

「ふむ。オレの魔力は無限ではないのだ。余り手間を掛けさせるな」

オレの側まで近寄ってきたアイアン・トータスが突進をしてきたので、跳び上がるついでに、タクルスの元まで移する。

「ンな事言っても、無理なもんは無理だっつーのっ!」

「それは込める魔力が多いからだ。魔力が荒々しすぎる。努力しろ。ちなみにだが、あと數回お前を回復させればオレの魔力は空になる。そうなれば、後は死を待つだけだ」

「無茶言いやがる…わーったよ。やるよ。やってやるよ!」

ふむ。その意気だ。

努力は決して己を裏切らぬ。

努力を怠らず、必死になる事だな。

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