《努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す》ふむ。更に特訓だ。

階層を一つ降り、131層目。

「ふむ。この階層にはボスの”メタル・トータル”が居る。なので、お前には二つの武の教える」

「何が『なので』になんのか分からねぇが、教えてくれるって言うんなら頼む」

ふむ。良い心意気だ。

その意気や良し。教え甲斐があると言うものだ。

とは言え、オレの武は教えるには適していない。

「今から見せる。見て覚え、真似ろ」

この階層は、前の花畑の階層とは違い、全てが鉄に覆われた場所だ。

見通しの良さだけは同じだがな。

《イベントリ》から一本の線香を取り出し、火を付けて鉄の地面に置く。

すると、ドタドタと荒々しい足音が聞こえ、數分もしないうちに百近くのアイアン・トータスが現れた。

普段はゆっくりと行するアイアン・トータスが猛然と駆けてきている。

オレが使ったのは、『魔寄せの線香』と呼ばれる道だ。正式名稱は『癒しの線香』と言い、香りを嗅いでいるとの疲れが落ちると言う優れなのだ。だが、魔の好む匂いを発する為に使用止とされた曰く付きの魔道だ。

「おいおい…こんなにもアイアン・トータスが…さすがのイクスでも、これはヤバイだろ…」

Advertisement

何を言っているのだ?

オレが倒すのは數だけで、殘りはタクルスの分だ。

まぁ、良いか。先に見て貰うとしよう。

木刀を取り出し、手を頭上に。剣先を下向きに向け、両足を地面を踏み抜く勢いで踏ん張る。

この技を出す時の基本的な型だ。

慣れれば必要ないが、教える分には覚えてもらわなければならない。

「リバイア流剣『飛斬』…『破扇』」

言い終えると同時に木刀を素早く振り上げ、勢いを利用しながらの回転も併せ持って刃を返し、橫に一閃。

一撃目が『飛斬』。前方へと斬撃を飛ばす剣技。

二撃目が『破扇』。大気を津波のようにさせ、周囲に居る敵を吹き飛ばす剣技だ。

前方から迫り來るアイアン・トータスの群れに、鉄の地面をガリガリと削りながら突き進む『飛斬』が直撃すると、そこに一本の道が出來上がる。そして、遅れてやってきた『破扇』がアイアン・トータスを襲い、先頭の群れが後方へと吹き飛ばす。

「これがリバイア流剣だ。主に中距離戦闘を得意とする。二撃目の『破扇』は近寄られた場合に使う技だ」

「今のが遠距離…?」

Advertisement

何か言ってるが、疑問は後回しだ。

「次は武がない時の技だ。良く見ておけ」

木刀を《イベントリ》に収納し、構える。

とは言え、構えと言える構えはない。突っ立っているだけだ。なんなら、手をポケットに突っ込んでも良い程だ。

ただ、とある技を使う際にだけ特殊な構えが必要になるが、今回は教えるつもりがないので、行わない。

「デルタ流無手『反転』」

手をゆるりとかし、宙を摑む。そして、グルリと腕を捻りつつ投げる。

剎那。アイアン・トータス達が一瞬だけ一斉に宙へ浮き、落ちる。大半が裏返ったようで、起き上がるのに苦戦している。

「本來は、相手の力を利用して使う技だが、使い方によっては、この様な事が出來る」

「いや、普通は無理だからな?」

ふむ。そこは努力次第だな。

「次だ。シッカリと見ておけよ」

デルタ流は近距離に優れている。だが、逆に言えば、近距離でしか効果を発揮しないのだ。

なので、オレ自らアイアン・トータスに近付いて行く。

あと數メートルで衝突と言った所で、先頭がオレに巖石を放つ魔法を放ってきた。

Advertisement

丁度良いタイミングだ。

飛來してくる巖石を摑み、その威力を利用しつつ一回転。飛來時よりも威力を増して巖石を投げ返す。

魔法を放ったアイアン・トータスに見事に命中し、木っ端微塵に砕け散った。

次に、突進をしてきたアイアン・トータスの首と甲羅の間を摑み、突進の威力を加算しつつ反対側の地面に投げる。

甲羅が割れ、魔力の粒となって消えた。

「ふむ。し距離を離すか。デルタ流無手『空波』」

オレは片手が使えないが、手拍子をするようかのに、右手で宙を叩く・・と、そこから衝撃波が発生し、近付いて來ていたアイアン・トータスを吹き飛ばす。

ついでに、タクルスも巻き添えを食らって吹き飛ばされそうになったが、即座にタクルスの足を摑んで吹き飛ばされるのを阻止する。

「ガッ!?」

地面に背中を強打していたが問題はないだろう。

アイアン・トータスとの距離が大きく開いたのを橫目で確認した後、ヨロヨロと起き上がるタクルスに一言告げる。

「手首にコレを付けろ」

「労わりもクソもねぇな…」

文句を言いつつも、オレが渡したリストバンドを手首に嵌める。

「…あ?魔力が…?」

おそらく、の魔力作が出來なくなった事に困しているのだろう。

「ふむ。それは魔力を使えぬように魔道だ。それを付けたまま戦え」

「あの大群と魔力なしとか…冗談…じゃねぇよなぁ…」

「ふむ。分かっているのならば、さっさと行け」

ゲンナリとしているタクルスの背を軽く押して、前に立たせる。

「はぁ…。わーった。わーったよ。やるよ。やれば良いんだろ…」

今度は一回で覚えたのか、オレが初めに取ったリバイア流の構えをし、剣を勢い良く振り上げる。

筋が良いのか悪いのか、斬撃は飛んだ。

飛んだが、ものの數メートルで掻き消えた。

威力も弱く、もし當たったとしても、そよ風程度の力だ。

「マジで出やがった…」

「ふむ。何事もやってみなければ分からぬのだ。今は使いこなせとは言わぬ。ただ、出來るようになれ」

「それが難しいんだよ」

そうは言いつつも、何度も何度も繰り返し同じ型を取り、『飛斬』を放つ。

〜〜〜

あれから數時間。この迷宮にってから、ざっと1日が経過した。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「ふむ。上出來だ。では、暫し休憩を挾むか」

ここには太がなく、晝か夜なのか判斷する事は出來ない。

しかし、オレの時計は正確だ。

「飯か?寢るか?それとも、オレか?」

「オレって何だよっ」

ふむ。疲労でツッコミに覇気がないな。

「いや、なに。特訓をまだ続けるかと聞いたのだ」

「だったら、初めからそう言えよ…。はぁ…取り敢えず飯だな」

「ふむ。分かった」

食事はを作る基本となる。その為、食事の容は濃く、栄養を考えたにしなければならない。

だとすれば…。

サッと料理したをタクルスの前に出す。

「これを食え」

アイアン・トータスのを主とした焼き。前の階層で手にれた花を使った煮。両方を合わせて作っただ。

アイアン・トータスの甲羅は鍋にもなるので便利だな。

「オエッ」

食用には向かないがな。

タクルスが料理を一口食べた瞬間えずいた。

「アイアン・トータスの食材は旨味とは程遠い味だが、力増強の効果がある。その他に挙げるとするならば、活力増強。行促進。傷の治りが早くなったりもする」

「泥水を固にして食った気分だ…」

「そう言わず、食え」

「お前は食わねぇのか?」

何やら恨めしそうな眼差しだな。

そう心配するな。

「勿論、オレも食べるぞ?お前に食べさせる為に作った訳ではないからな」

オレの言葉に、タクルスはホッと安心したような息を吐いて食事を始めた。

オレも追加の料理を作りながら片手間に食事をし始める。

食事を終え、タクルスが一眠りした後、寢ているタクルスを叩き起こして再出発する。

向かうはボス部屋だ。

「思ったんだけどよ、お前って、どうやって俺に教えた技とか覚えたんだ?」

「ふむ…」

「いや、ふむ。じゃなくてよ」

「本で読んだのだ」

「噓だろ。絶対」

のない奴だ。

ボス部屋へと向かっていると知っている筈なのに、よく喋りかけてくる。

もしかして、張を解す為に喋りかけてくるのか?

「教えてくれても良いだろ?誰にも言わねぇからさ」

「…ふむ」

「頼むぜ。しぐらい良いだろ?」

「…ふむ」

「なぁ。教えてくれよ」

ふむ。気を紛らわす為に話してやるか。

「……一つ、昔話を聞かせてやる」

「昔話?それがお前が強さを手にれた話か?」

「昔々。遙か昔。愚かなる人間が悪魔と契約をわし、世界を躙していた」

「悪魔…」

「そうだ。悪魔だ。魔や魔王などよりも遙かに強大な力を持つ怪だ。そして、そんな存在と、たった一人で戦っていた男がいた」

「それが、お前…?」

「ふむ。話は最後まで聞くものだ」

「悪い」

話の節を折られたが仕切り直しだ。

思い浮かべるのは、実際に見てきた景。

「その者は純粋に力を求め続けていた。何者にも阻まれる事のない力を。そして、悪逆の限りを盡くす契約者共から人々を守る為の力を。だが、悪魔の力は余りにも強大すぎた。其奴一人では一を相手するだけで一杯であったのだ」

伽噺でしか聞いた事ないけどよ、そんなに強いのか?悪魔って」

「ああ。一で一國を滅ぼせる程だ」

「ヤバすぎだろ…」

「ふむ。話を続けるぞ。…其奴は力及ばずとも悪魔との戦闘に日々起した。反吐を吐きながらも、かぬを引き摺ってでもかし、悪魔と契約者を狩り続けた。しかし、ある時。愚かなる人間共は、より強力な力を得る為に數萬もの罪なき命を生贄に、より強大な悪魔を召喚した」

悲鳴。助けを求める悲痛なび。憎悪に狂った雄び。々な幻聴が聞こえてくる。

耳から離れない。忘れられない嫌な思い出だ。

「召喚された悪魔は、まず初めに世界にを開けた。悪魔の棲む魔界と、人間の住む人間界との境界に大を開けたのだ。そして、魔界の悪魔が人間界に雪崩れ込んだ」

「ゴクリッ…」

「男は必死に抵抗し、人々を守ろうとした。だが、所詮は一人。何も守れず、人々が無殘に殺されて行くのを目に焼き付け、未練を殘して其奴は死んだ」

そして、デルタが生まれた。

「…で、この話のどこにお前の力に関係してるんだ?」

全てだが?

しかし、まぁ、この話はここで終わりのようだな。

「ふむ。著いたぞ」

なにせ、ボス部屋へ繋がる扉の前に著いたのでな。

地面に不自然な形で設置された円盤型の鉄の扉。これが、ボス部屋へと繋がる唯一の道なのだ。

「…なんだこれ?通れるのか?」

いかにもな疑問だな。

普通に扉を開けようにも、取手らしきはなく、ただ地面に張り付いているだけで、パッと見では扉だとも思わないだろう。

タクルスは、扉の周囲をグルリと回って、コンコンと足で蹴ったり、木剣で突いたりしているが扉が開く気配は一切ない。

「ふむ。そこを開けるには、この階層の何処かに居る甲羅に鍵のマークが描かれたアイアン・トータスを倒さなければならない」

「じゃあ、無理じゃねぇかよ」

「む?そうでもないぞ?」

《イベントリ》から手に収まる程度の大きさをした箱を取り出し、タクルスに投げ渡す。

「その赤いボタンを押してみろ」

「ん?こうか?」

ーーポチ。

ボタンを押した瞬間、ガコンッと何かが外れるような音が聞こえ、扉が回転しながら開いた。

「うわっ!わあぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」

そして、ボタンを押した本人であるタクルスは、扉の上に立っていた為、落ちた。

以前。ずっと昔にだが、この迷宮でアイアン・トータスを全滅させた際に手にれたリモコンだ。

まだ使えると言う確信は無かったが、使えて何よりだ。

タクルスは落ちて行ったがな。

「ふむ。では、オレも行くか」

扉の先は暗闇に覆われており、何も見通す事が出來ない。

そこへ進んで飛び降りる。

「ふげっ!?」

降りた先にはタクルスが寢ていたようで、踏んづけて著地してしまった。

これから戦う者に対して酷い事をしたな。

「ふむ。すまない」

取り敢えず、謝っておいた。

まぁ、タクルスなので問題はないだろうがな。

「謝るくらいなら、早く退けよっ!」

「ふむ」

やはり問題はなかったようだ。

タクルスの背から飛び退いてやると、足元から「グフッ」とき聲が聞こえたが、気にする程でもないだろう。

    人が読んでいる<努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください