《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》《幕間》勇者訓練の中で 2
エイジたちが窟にったちょうどその頃、王國から同じ窟に向かっていく一団がいた。
勇者団第一部隊。勇者たちの中でも、日々の訓練で優秀な績を収めたものが抜擢された、15人の舞臺だ。
第一部隊筆頭剣士の小泉健太郎は、これから向かう窟にいるというダンジョンボスの報を確認していた。
「巨大なスケルトン、ねぇ……いかにもRPGの初期の初期に戦いそうなボスだな」
今回、第一部隊は窟のダンジョンで最後の基礎訓練を行うところらしい。
即戦力に投できると判斷された15人を徹底的に鍛え上げることによって、一時的な魔族による侵攻ラインの押し返しを図っているようだ。
「今まで一度も功したことないって、自分たちで言ってんのにおかしいってことに気づかねぇのかな……俺よく分からないところに投されて死にたくないんだけど」
そう言いながらも、健太郎の初めてのダンジョンに向かうという期待は、健全な十代男子そのものであり、彼自、今回のダンジョンで結果を出して更にいいポジションにろうという思がないでもなかった。
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「もし、エイジが遅れてくるんだったら、俺がちゃんと居場所を作ってやらないとな」
委員長という職務を的確にこなしすぎたが故に人に嫌われやすくなった健太郎にとって、エイジほど気楽に接してくれる人間は他にいなかった。
菜はやたらと寄ってくるが、話したいことをキーキーと話してはいつも勝手にどこかへ去っていく。健太郎個人の考えとしては、害悪でしかなかった。
「それにしても、王國がペガサスを育ててたとか初耳なんだけど」
座學では殲滅すべき魔の一種として數えられていたペガサス。それを、王國は獨自に飼育し、人に害を加えないように調教し、更には繁をさせていたようだ。
「おかげで本來は一週間かかるはずの窟に半日で著くとか。馬鹿みたいな早さだな……」
「おやおや、こんなところにいましたか。隊列を外れてもらっては困りますよ、ケンタロウ殿」
「あぁ、すみませんグフィリスさん」
王國騎士団団長であるサルバドーレ・グフィリスが、自の馬である黒いペガサスを連れてこちらに走ってくる。
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「空を走しているのですから、ちゃんと我々について來ていただかないと。行方不明になられては困るのですよ」
空なのだから見渡せばみんなの姿くらい見えると思うんだけどなぁ、と言いたいのをぐっとこらえてグフィリスの言うことに従ってついていく。
「さぁ、窟まであと2時間ほどでしょうか。あの方にこちらの現狀を中途報告できるといいのですが、追いつけますかな……」
「あの方?」
「ええ。我々よりも先に魔王の元に向かい、偵察の命をけて下さった勇者様がいるのです。期間的にちょうどベースキャンプ地を出たところなので、鉢合わせするくらいかと」
その人にペガサスを貸してあげれば良かったのに、と思ったが何も言わないことにしておいた。グフィリスを不機嫌に指せると面倒だ。
それにしても誰がその偵察なんて任されたんだろうか?
気になったので聞こうとしたのだが、グフィリスはすぐに隊列の先頭に戻ってしまったために諦めざるを得なかった。
「まぁ、どうでもいいか。とにかくあいつが來るまでに魔王の一人二人くらい倒しとけば、「仕事を減らしてくれてありがとう」とか屁理屈言って喜ぶだろ」
呑気なことを考えながら、健太郎はゆっくりと窟に近づいていくのだった。
◇◇◇
「窟につきましたぞ! さあ皆様、野営の準備を始めてくだされ!」
窟の裏にある森の中に降り、口側に近づかないようにしてテントを張る。森に到著したのはもう夜中で、これから夜食をとってみんなで睡眠をとるための準備を始める。
「それにしても、あの方とは會えませんでしたな、隊長殿」
グフィリスの側近の兵士が、グフィリスに話しかける。
「ベースキャンプがあの有様でしたからな、寄らずにそのまま魔王の元へと向かった可能もありますな」
「隊長! 窟の口方向に馬車を発見しました! そして人が數人寢ております!」
別の兵士からの報告をけ、隊長が焦った様子で窟の口の方へ走っていく。
あとを兵士二人が焦ってついていくので、様子を見ようと健太郎も三人のあとをつけて行った。
『ねぇ、ご主人! 何作ってるの?』
『お前の剣だよ。お前、魔法より剣の方が得意なんだろ?』
『あれ、そんなこと言ったっけ?』
『お前が閃帝に『一閃』を教えたって言ったんだろうが』
『ちっちっち、それだけで判斷するのは総計ですよ、ご主人っ!』
いと疲れたような男の聲が聞こえてくるので、健太郎は會話の容をしっかりと聞くために耳を澄ます。
『えっ、エイジ殿!?』
『あぁ、騎士団長さんじゃん、ちょうど良かった。ベースキャンプの件について話したかったんだよ』
ん!? エイジどの!?
殘念ながら、王國で勇者訓練をした勇者たちの中にエイジという名前の勇者はいない。過去の勇者は、コウジとカスカという二人を殘して全滅したというので、ここで言うエイジというのは……
「エイジっ!?」
健太郎は急ぎ足で窟の口の方へと駆け出す。
「お前っ、もうこっちに來てたのか!」
「おお、委員長ちゃんじゃないの、どうしたのこんなところに。あとこんな時間に」
「俺は訓練だよ。この窟でな」
そう健太郎がいうと、エイジの橫にいたとエイジがし申し訳なさそうな顔でいう。
「……団長、健太郎、すごい言いにくいんだけどさ。この窟の魔達、俺とこいつで借り盡くしてしばらく湧かないようにしちゃったんだよね……」
「「「「……は?」」」」
呆気に取られた健太郎とグフィリスの聲に、橫にいた兵士二人の聲も合わさる。
「私とご主人様で、ボスまで殲滅しちゃったわ……訓練容にもよるけど、さすがにダンジョン來て迷路攻略して帰るーなんて訓練はしないわよね?」
「……」
あまりに現実離れしたその話に、その場にいた全員が口を開いたままエイジたちの話を聞く。
「魔王のダンジョンの攻略を想定して、事前に自分たちで攻略の訓練するかってことになってさ」
「そこの二人がこの場所を教えてくれたから、私たちで晝頃に窟に潛って、ボスまで狩って帰ってきたの。ついでに雑魚狩りもしまくって、帰り道は魔が出てこなかったから……」
「「「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」
攻略に最低一週間かかると言われるダンジョンに晝に潛り、中にいる魔を全て殲滅した挙句にダンジョンのスポーン能力すら低下させたという。
「あ、あまりに突拍子もなく信じられません! 隊長、私確認してくるであります!」
「あ、俺も!」
「セリフィくん、ナインくん、待ちなさいっ!」
走り出す兵士二人を慌てておっていく騎士団長。
「エイジ、お前、どうして」
「え? そりゃ早く帰りたいからに決まってるだろ?」
「……いったい、一いつから王國にいたんだ……俺が気づかなかっただなんて……常に寮やそれ以外の俺達が出りできるところも確認し続けていたっていうのに……」
「ご主人、なんか雰囲気的にこの人気持ち悪いこと言ってない?」
思わぬ形で親友と再開した健太郎は、頭の中での整理がつかずにその場で考え込んでしまった。
「まさか、最初から……ちっ……」
健太郎は靜かに舌打ちすると、俺の計畫ミスだ、と言いながら膝から崩れ落ちる。
「俺が、俺が弟の後を進んでどうする……」
「は?」
「弟エイジに先を越されていたなんて、兄失格だァ!」
「「はぁ!?」」
健太郎の意味のわからないびに理解不能の聲を上げ、赤面した健太郎が森へ向かって走っていくのをただただ見守るエイジとシルティス。
「やっちまったァァァ!」
人生最大の恥を犯した健太郎は、顔面を抑えながら自のキャンプへと走っていくのだった。
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